2度目。ーーどうやら会わせてはいけない人同士だったようです。・7
ようやく自分達のやらかし具合に気付いたのか、縦ロール令嬢他全員が顔を真っ白に変えました。ここまで言わないと理解しない上に、そこまで後悔するなら少しは考える力を身につけて欲しいものです。さて。この後はどうするのかしら。
「これ以上は引き下がった方がいいのではないかな」
私の背後から聞こえて来た声は、ラスピリア様のもの。……このタイミングですか。ラスピリア様が現れた瞬間、縦ロール令嬢含めご令嬢方の顔色が回復しました。……成る程?
「君たち、もう行きなさい。彼女は私が説得しておく。但し、彼女に謝る必要は有るよ」
「「「は、はい。失礼します」」」
ラスピリア様が現れたら素直に逃げ帰りました。きっと後日謝ってくるのでしょうね。前回もアッサリと逃げたのは、殿下方の存在よりも、ラスピリア様の姿を視界に入れたからかもしれませんね。
となれば、まぁ嫌でも気付くというか。
「こんにちは、ラスピリア様」
「ラスピリアでいいって。こんにちは、ケイトリン」
「ふふ。申し訳ないのですが、そこまで親しくしたいとは思っていませんの」
呼び捨てにしてくるラスピリア様に私は笑顔で断った。途端に顔を強張らせるラスピリア様。コッネリ公爵の血筋なのに、そのように分かりやすいと足元を掬われてしまいますよ。
「助けてあげたのに」
「恩着せがましく言われても、ねぇ。いくら年上だろうとこのような小細工をしないと近寄って来られないというのなら、いっそのこと近寄って来ないで欲しかったですね。伯父であるコッネリ公爵との対決は身内だけでやってもらいたいですわ。いえ。私を巻き込んで殿下方を引っ張り出したい、というところですかね。身内だけではどうにもならないから、権力を手にしてどうにかしたい、というところですか」
さすがにこんなにタイミングが合えばオカシイ事に気付きますよ。殿下方を言い負かす程気が強いのは確かでしょうし、あの縦ロール令嬢含めたご令嬢方がラスピリア様を信頼しているのも確かでしょう。だからこそ、こんな事をしたのだと思います。信頼するラスピリア様の頼みだから。
その絆や、どうして信頼しているのか、私には分かりません。調べる気も有りません。ただ、自分達の立場や家の立場が不利になってまで頼みを引き受けたご令嬢方の気持ちは、無碍に出来ない。けれど、それを理解しながら頼んだラスピリア様ご自身を、私が信頼出来ない。
「そこまで解っていて私を手助けしてくれる気はないわけ」
あら。あっさりと本音を吐きましたね。あまり裏表は無いのでしょうね。
「私を巻き込むのに、わざわざご令嬢方を巻き込む必要もなかったでしょう。そういう小細工が私の信用を無くしているだけです」
「……彼女達を巻き込んだのは、後で彼女達に謝るよ。あなたがどういう人か分からなかったからね。助けを出せば信用してもらえるかと思ったけど」
「逆効果でしたわね」
「でも、殿下方を引っ張りたい私の本音には気付いた。だからあなたは断らない。違う?」
「そうですね。コッネリ公爵をどうにかしたいのは私も一緒ですし、殿下方の現状を変えたいのも事実です。だから共闘は致しましょう。そのための手助けもしますし、話し合いましょう。でも。ラスピリア様個人と親しく付き合う気はまるでないですわ。あなたの持つ情報を私達に流すこと。そして私達はコッネリ公爵を追い落とす方法を考えること。そしてコッネリ公爵を追い落とす。それだけの関係。それで宜しいですか」
私に近づくために、彼女達を悪者にしたラスピリア様を信頼出来るわけがない。たとえ、あのご令嬢方が納得済みでの演技だとしても。だからコッネリ公爵を追い落とすために共闘はします。でも個人的に親しく付き合う気は有りません。
最初からきちんと私に近づいてくれば、良い関係を築けたかもしれないのに。こんな小細工を弄するなんて残念でなりません。
尤もこういう小細工を弄することが出来る強かさも、王子妃・王妃には向いているでしょうけれどね。殿下方のどちらかと婚約してもいいんじゃないですか? あ、でも殿下方は却下してましたっけ。言い負かす程の気の強さ結構大切だと思うんですけどね。
私もさっさと筆頭婚約者候補者の座を降りたいですし。今度殿下方の好みの女性でも聞き出して探してみましょうか。……この件が落ち着いたらですけどね。




