2度目。ーーどうやら会わせてはいけない人同士だったようです。・6
本編に戻ります。
「ケイトリン・セイスルート様!」
あー、この前も突っかかって来た方ですね。名前……この前も田舎者とかナントカ言いながら、名乗られた記憶がないので知りませんね。取り敢えず「なんでしょう」と答えるだけはしておきましょう。
「あなた、今日はもう1人の留学生の方と4人でいらっしゃったわね! いくら留学生とはいえ、殿方を侍らせるなんて淑女としてはしたないのではなくて?」
大勢で囲む事は淑女としてはしたなくはないのですかね。
「侍らせるとは随分失礼な物言いですね。前回にも言わせてもらいましたが、名乗りもしない礼儀知らずなご令嬢と、自分で喧伝するのは恥ずかしくないですか? 尤もそのように礼儀知らずでは、殿下方の婚約者候補者にも選ばれないのでしょうけれど。選ばれない自分の礼儀知らずを直そうともせずに、殿下方の『友人』で、留学生の私を大人数で囲むというのは、どちらが淑女としてはしたない行動なのでしょうね」
大きく溜め息をつこうかとも思いましたが、それだと淑女らしくないんですよねー。前回の王子妃教育の記憶がこんな時に邪魔します。私の言っている事の正しさが解る人は、抑こうして突っかかる事は無いのでしょうが言うべきことをきちんと言わないと、相手が正しく思われる。理不尽です。
まぁ貴族世界なんて足の引っ張り合いですからねー。
だからこそ、紳士教育・淑女教育が大切なんですが。表情は微笑みか無で崩してはならない。崩した瞬間、攻撃される。常に冷静さを欠いてはならない。感情に振り回されて物を言う事は不利になる。普通に考えて冷静に物を言う人と感情に振り回されてその時その時で言う事が違う人のどちらを信用しやすいか、ということです。
溜め息一つだって感情を表す事になりますからね。だから私は無表情で冷静に諭しているわけです。この状況を第三者から見たら、どちらの発言が信用しやすいかってことですよ。そこら辺解ってますかね。淑女教育を受けているんでしょう? あらあらまぁまぁ。顔色が真っ青ですわよ、皆さま。
「で、殿下方の威光を頼みにしてワタクシたちを黙らせられると思いましたら、大間違いですわよ!」
あらあら。この前みたいに尻尾巻いて逃げ帰らないだけマシになりましたかねぇ。でも、別に殿下方の威光を笠に着てるつもりはないですよ。単に簡単に追い払えるから口にしていただけで。それにしても、尻尾巻いて逃げ帰った方が良かったと思いますよ。平穏だった生活とオサラバしちゃいますよ? ねぇ。
「殿下方の威光を頼みにしたつもりは毛頭有りませんよ。事実を述べたまでです。……この前も思いましたが、本当にこの国の令嬢方はきちんと教育を受けていらっしゃるんですか? 名乗り合ってもいない私に対して、無礼な物言いばかりで。留学生だと解っているにも関わらず、礼儀知らずなご令嬢ばかりに囲まれている事、タータントに帰国次第、国王陛下以下重鎮方にご報告させて頂きますね」
「別に報告をされても痛くも痒くも無いですわ。ねぇ皆さま?」
私が帰国して報告する、と言えば、その程度の仕返ししか出来ないと思ったのか、縦ロール令嬢は嘲笑し、周囲にも同意を求める。あら。気付いた方が数人いらっしゃるみたいですね。聡い方は嫌いじゃありません。
「「「セイスルート様、私達は無礼を働きましたわ。このお詫びは後ほど」」」
悟った令嬢方数名がスススッと近寄って、サササッと頭を下げて逃げて行かれました。ふむ。そそくさって表現は正しくコレですかね。まぁご理解頂いた聡いご令嬢方については不問に処しましょうか。
あらぁ?
縦ロール令嬢含め残った方達は、何故謝ったのか分からないみたいで呆けていらっしゃいますね。それどころか、たかが留学生が帰国して報告する程度の事に何を怯えて……って声が密やかに聴こえてきました。
説明しないと解らないのでしょうが、説明しても理解出来ますかね。物凄い失態を犯しているのにね。
「皆さま、怖気付いたあの方達の事は後で話し合うとして、先ずはセイスルート様のことよ!」
縦ロール令嬢。あなた、本当に高位貴族ですか? 淑女教育どころか貴族教育をどこに置き忘れて来たんです? 拾って来た方がいいのでは? ……ああ、皆さん置き忘れですね。縦ロール令嬢に追従してばかりで、自分達の立場を解ってないみたいですからね。
「国に報告の意味をご理解していないようで残念でならないですわ。良くそれで各家を代表とした令嬢でいられますわね。私が帰国して報告するということは、それすなわち、この国の令嬢方は礼儀も知らない程度の低さを表すんですよ? つまり、この国は礼儀知らずなご令嬢方が大きな顔をしていても、国が認めている……それだけ無能な国、礼儀知らずな国だと他国に触れ回るのと同じですが。我が国……タータント国は、この国とだけ交流しているわけでは有りませんよ? タータントから他国にこの国の礼儀知らずな無能さを知られたら……あなた方の所為でこの国が不利になったら責任が取れるんですの?」
尤も、タータントから他国にこんな話を触れ回るかどうかは分かりません。抑、私が帰国して報告するかも分かりませんけどね。だからこの国に不利になるかどうかも分かりませんけれど、責任が取れるかどうか。このくらいの脅しはしておかないと、ご令嬢方はご理解出来ないでしょうからね。
さて。ここまで説明したのです。ご理解出来たかしら。
きりがいい所まで、と思ったら少し長めになりました。
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