2度目。ーーどうやら会わせてはいけない人同士だったようです。・4
「ちょっと待て! いきなりそんな話を信じろと言われても!」
「ドナンテル殿下落ち着いて下さいませんか。信じられないのは承知の上です。ですが、何故ボレノー様がご存知かお解りになられますか? ボレノー様はどなたの側近だと思われます?」
我に返った途端に割と大きな声を上げたドナンテル殿下が、周りの視線を集めたので、ニコッと周りに笑いかけて牽制しながら宥めてボレノー様の事を尋ねる。
「まさか、ヴィジェスト殿下もその2度目とやらなのか?」
ノクシオ殿下がハッとしてボレノー様を窺う。ボレノー様は渋々ながら頷いた。
「これは信じられなくても信じるしか無さそうだな。ケイトリンだけなら夢物語で済ませられるが、ヴィジェスト殿下まで……念のために尋ねるが、ケイトリンとヴィジェスト殿下で口裏を合わせている、ということは」
ノクシオ殿下の質問を私は遮るように両手を振る。
「私は寧ろ黙っておくつもりでした。ヴィジェスト殿下はイルヴィル殿下や側近方に早いうちにお話されたようですけどね。ですから口裏合わせはあり得ません。ですから、私としてはこの国と我が国とで戦争をしたくないので、ギスギスしないで話し合いをしてもらいたいんですよね」
「その1度目は戦争になりそうだった、と?」
これはボレノー様の質問です。
「どうでしょうね。コッネリ公爵が秘密裏に武器を集めている事は確実で、我が国とこの国とで戦争させるつもりだったのか、と思ったのですが。私が殺された時も、刺客はヴィジェスト殿下を狙っていましたからね。アレはコッネリ公爵の視線で動いた刺客でしたから証拠は出なかったでしょう。偶々視線を向けた、と言えばそれで終わりですし。ただ、もしかしたらコッネリ公爵は戦争よりも内乱を起こしたかったかもしれません」
私の推察に、3人は黙る。
「内乱」
ノクシオ殿下が青褪めた顔で考え込みます。
「先程話したように、ドナンテル殿下は我が国にも聞こえて来る程悪評高い方でした。故に王太子に決定していたノクシオ殿下を暗殺し、国王陛下も暗殺し、ドナンテル殿下を傀儡にしてコッネリ公爵がこの国を乗っ取ろうとしていたのではないか、という考えも捨てられません」
ドナンテル殿下が口惜しそうに唇を噛む。それからハッとしたように私を見た。
「もしや、その時の俺はケイトリンに1度も会っていなかったか?」
「え、ええ。私は1度目の人生ではドナンテル殿下にもノクシオ殿下にもお会いした事は有りませんでしたよ? 先程話した通り、10歳でヴィジェスト殿下の婚約者としてタータント国の王城で王子妃教育を受けていましたから。表向きは婚約者候補者でしかなかったですが。だから殿下方がタータント国においでになられても、婚約者としてご挨拶もしなかったですし」
ドナンテル殿下の質問に私が答えれば、納得したように頻りに頷いています。
「ケイトリンと会っていないなら、俺が傀儡になるのも頷ける」
「はぁ、何故ですか」
「別にセイスルート嬢にお会いしなくても変わらなかったのでは?」
私がドナンテル殿下に疑問を持てば、その答えを聞くより早く隣に座るボレノー様が、そのような事を言った。いや、それは不敬でしょう。何故そんなにケンカ腰なんですかね。




