2度目。ーーどうやら会わせてはいけない人同士だったようです。・3
強い視線で意を汲み取れとばかりに、ボレノー様は私に視線を固定しますが、いやいやいや。言葉というものが有るでしょうよ。まぁ視線の意味は解るけれども。……仕方ない。授業が終わったら先ずはボレノー様と殿下方との間を取り持って話し合いをしましょうか。ちょっと自棄になりつつようやくやって来た殿下方に「放課後、ボレノー様を交えて話したいのですが」とお伺いを立てると、頷いてもらえたのでボレノー様にも打診する。こちらもオッケーが出たので学園の喫茶室で話し合う事に決まった。
……殿下方のサロンは、『友人』である私以外は立ち入り禁止なんだそうな。まぁ確かにいくらヴィジェスト殿下の側近とはいえ、知人(クラスメイトとしかお互い思っていないから、挨拶レベルの会話程度である以上、知人)がサロンに入るのは、警備上の問題やらその他色々非常に面倒くさい。
だったら学園内の生徒・教師の誰もが利用出来る喫茶室の方が楽。という事で喫茶室に決まった。一応名目上は殿下方と留学生の交流会なので、ボレノー様が居てもおかしくないのだけど。……ドミーが仮に同級生だったとして。男3人とお茶している私を見たら、もしかして嫌われる案件でしょうか。
私、気付くの遅くない?
ドミーが同級生だったら……って考えないと、いくら殿下方の友人兼筆頭婚約者候補者でも毎日殿下方と(侍女や護衛がいるとはいえ)3人で昼食とか、マズイ状況ってなんで気付かないのよ!
自分の阿呆さ加減に泣きたくなるわ!!!
とはいえ、乗り掛かった船だし。コッネリ公爵問題もロズベル様問題も何とかしないと、いつまで経っても筆頭婚約者候補者の座から降りられないし。……ええい! 覚悟を決めてとっとと問題解決して、筆頭婚約者候補者どころか婚約者候補者も辞退して、ドミトラル様とラブいちゃになってやる! ドミーがどこにいるのか知らないけどね! あと、ドミーに会ったら全部話して後ろめたい事は何も無いよって教えなくちゃね。
さぁ、そうと決まったらチャッチャと殿下方とボレノー様を引き合わせて、問題解決に動き出すわよ!
「では、殿下方。こちらがジュスト・ボレノー様にございます。ボレノー様、ドナンテル殿下とノクシオ殿下でございます」
放課後、3人を引き合わせて紹介した後、それぞれが挨拶をしたのですが……何故か空気に殺意が籠もっているのですが。どういう事ですか。我が国とこの国で戦争でも起こしたいんですか。ギスギスしていますけど。殿下方もそうですが、なんでボレノー様までそんなに殺意を込めているんですかね。
「殿下方、ボレノー様、何をギスギスしていらっしゃるんですかね。あなた方を引き合わせたのは、戦争回避の為なんですよ? 解ってます?」
「「「戦争回避?」」」
おいっ! 異口同音でとんでもない事を聞いたって顔をするな! コッネリ公爵の問題とロズベル様の問題を解決すれば、お互い変なしこりを残さなくて済むでしょうが! 戦争回避になるでしょう! という私の力説に、殿下方は「ロズベル様っていうのは、我が国に居るという女性のことか? ヴィジェスト殿下が探しているという」と首を捻りながら言うし、ボレノー様は「コッネリ公爵は、こちらの国の敏腕でしょう? 後ろ暗い事もまぁ無いとは言えないみたいですけど、それが関係有るんですか?」と心底不思議そうな顔で私を見て来た。
あんたら、情報収集が偏っていませんか。
私は大きく溜め息を吐き出すと、殿下方に逆行転生の話をするかどうか考えて……面倒くさくなったので、そこから話をする事に決めた。
「これはボレノー様はご存知のことですが」
切り出した私は、信じられないでしょうが、事実だと告げた上で1度目からの私とコッネリ公爵・ヴィジェスト殿下・ロズベル様の関係のみを話した。前世やドミーの話はしません。関係ない事なので。
「故に、コッネリ公爵とロズベル様が繋がっているかどうかは分かりませんが、どちらも解決しないとこの国と我が国の関係が悪化します」
私の話に殿下方も、詳しくは知らなかったのかボレノー様も、呆然としていました。




