2度目。ーー久々に皆様のお顔を拝見しました。・4
きりよがよかったので短めです。
笑い声を上げていたのは、その笑い声とは真逆の容姿をした方でした。いえ、笑い声だけ聞くと大人の男性が快活に笑い飛ばすときの感じなんですけどね。だから笑い声だけ聞いていたら、なんていうか、ポニーテールで剣道着姿の強気な少女イメージだったので、振り返ったら、儚げで今にも消えてしまいそうな楚々としたご令嬢だったんですよ。そのギャップに意識が真っ白になりかけました。
「……ええと、どちら様でしょう?」
私もそのギャップで思考回路が働いていなかったのでしょうね。名乗りもせずにそんな事を聞いていました。これは失礼です。
「失礼致しました。私、隣国・タータントから留学して参りました、ケイトリン・セイスルートと申します。あなた様は?」
慌てて名乗りを上げてカーテシーを決めれば、彼女は「そんなに畏まらなくていいよ」と言いながら、名乗りを上げた。
「去年は全く関わらなかったけれど、今年はあなたと話してみたいと思っていたんだ。私はラピスリア。ラピスリア・コッネリだよ」
家名を聞いて、硬直した私は悪くない。コッネリってコッネリ公爵の娘って事でしょう⁉︎
「あ、コッネリ公爵家ではなくてね。私のお父様は公爵の弟なんだ。子爵位を賜っている」
「では、コッネリ公爵の姪御さんという事でしょうか?」
「うん。セイスルート嬢の事は伯父が時々口にしていてね。興味は有ったんだ。あの伯父が憎々しげに名を口にするご令嬢。という事は、少なくとも伯父に憎まれるくらいの実力を持っているとは思ってた。確か、伯父が学園に来た時に、追い払ったのだろう?」
うーん。コッネリ公爵の姪と言われて、追い払った云々について尋ねられても、素直に「そうです」とは認めにくいわね。それにこの方の立ち位置が分からない。
あの伯父、という表現をする以上は、コッネリ公爵がどういった思考でどういった言動を取っているのか、それなりに理解しているはず。コッネリ公爵を後ろ盾と考えているならば、私に敵対するだろうし、逆にコッネリ公爵を嫌悪しているならば、もう少し私に好意を示してくるだろう。でも、彼女はどちらでもない。それは先程の発言からでも良く分かる。私の言動を笑う程に受け入れておきながら、コッネリ公爵が憎んでいる、とあっさり告げる。そうか。
「あなたは、コッネリ公爵と敵対するでも擦り寄るでもなく、中立の立場を守っていらっしゃるんですね」
私が言えば、彼女は笑顔を消して、無表情になった。……どうやらこの顔が本来の彼女らしい、と解って、今度は私が笑顔になった。




