2度目。ーー久々に皆様のお顔を拝見しました。・3
取り敢えず、報告は終わりましたので殿下方専用サロンをさっさと後にしまして、自室へ戻ります。明日はのんびりと部屋で寛いで明後日の進級式を迎えましょう。……なーんて思っていた事も有りました。ええ、のんびりしたかったですよ。なのに、なんでしょうねぇこの状況。
私は10人以上からなるご令嬢達に囲まれています。さっき殿下方の出迎えの時に見かけたご令嬢もちらりほらり。という事は、殿下方に近づくな! という牽制でしょうかねぇ。女子寮に戻って来るなりコレですからね。皆様、暇なんですね。そして玄関で囲むと他の方達の邪魔になりますよ。
「ちょっとアナタ!」
10人以上からなる令嬢方の一歩前に出て来た令嬢は、今どき全然見ない縦ロールの方だった。なんだろう。ドミトラル様曰くこの世界はゲームの中と同じらしいから、日本人制作者の中に、高飛車令嬢は縦ロールという謎のイメージが出来上がっていたのだろうか。
私が黙っているのが気に入らないのか、その縦ロールのご令嬢がフンと鼻を鳴らす。それ、淑女教育を受けているご令嬢がやります?
「アナタ、留学生だかなんだか知らないけれど、随分と殿下方に親しげにされているじゃありませんの。調子に乗っていると大変な目に遭うかもしれなくてよ」
「それは大変な目に遭わせる、という宣戦布告ですか、ご丁寧にどうも」
「な、何ですって⁉︎ この私を貶める発言は許さなくってよ!」
「この私も何も、名乗りもしないで偉ぶられても何の感情も湧き上がりません。私が留学生かどうかもきちんと知らない程度が知れたお家なんでしょ?」
なんていうか。前世でもいたなぁ。1人じゃ声を上げる事も出来ないのに、2人以上になると、途端に自分が優勢になったと上から目線の人。こういう人ってトイレも1人じゃいけなくて、グループで「トイレ行こ」というトイレ友達作るタイプだよね。懐かしい。
「な、なんですって! あ、アナタこそ、この私を知らないなんて、何処の田舎者ですの⁉︎」
ご令嬢に追従するように嘲笑いがさざめくので、わざと大きく溜め息をついてやる。
「そもそも去年一年間、あなた方の誰も私と交流を持っていないのですから、顔と名前を覚えるわけないでしょう。私が留学生とご存知ならば、お茶会一つ出ていない事も解っていて、あなた方の誰一人知らない事を論うって、この国のご令嬢方は、随分と淑女教育が低下しているんですね」
「「「な、な、なんて無礼な!」」」
おお、10人以上でこんな綺麗にハモれるなんて、随分仲良しね。
「どちらが無礼なんです。留学生だと理解しているという事は、私がタータント国の代表だと理解しているのでしょうが。つまり国の代表として留学して来た私をこれだけ集まった挙げ句に言う事が程度の低い嫌味と、名乗りも挨拶も無い癖に物知らず、と嘲笑うだけの事。これの何処が無礼じゃないと? あなた方はタータント国にケンカ売ってるのと同じ事をしているって自覚有ります? ついでに言わせてもらえば、どれだけあなた方の爵位が高くても、公式で殿下方の『友人』の称号を貰っている私に対しての、この状況。殿下方の耳に入ったらお家に抗議がいっても仕方ないですよね」
私がタータント国の代表でケンカ売ってるのと同じと告げた時点で、令嬢方の顔色は青く変わり、ダメ押しで殿下方の『友人』と言ったところで青から白へ変わって倒れる寸前になったご令嬢方は、互いが互いを支え合って、謝罪も何もなく去って行った。ヤレヤレ。ここまで言わないと分からないって、どうなの?
「あっはっははは」
私が去って行った令嬢方に溜め息をついたところで、背後から笑い声が聞こえてきた。




