2度目。ーー久々に皆様のお顔を拝見しました。・1
「「ケイトリン、お帰り」」
何故この人達がいるんでしょうね。私は荷解きをデボラに任せて寮内にあるサロンでお茶を飲もうと1階に降りて来た所なのですが。悠然とした姿でドナンテル殿下とノクシオ殿下がソファーに腰を下ろしてます。男女共有スペースでしたっけ? ここ。いえ、違いますよね。女子寮ですよね? 面倒くさい手続きを踏んで此処に居るんですか?
「何故此処に……」
いきなりこの2人の顔を見て心底疲れました。というか、目立ってるの解っててやってますよね。帰省から戻って来たご令嬢方が見てますよ、貴方方を。そして声をかけられた私は、視線で傷つけられています。ザクザク刺さってますよ。まぁ無視ですけども。
「つれないなぁ。折角友人が戻って来たから出迎えたのに」
ニコニコとしながら仰るノクシオ殿下ですが、その笑顔がどうにも黒く見えるのは私の視力が悪いんですかね?
「それはどうもありがとうございます」
棒読みで返してやりましたよ。要らぬ世話って言葉知ってます? でもまぁどうせ、私の出迎え以外に話があるのでしょう。こんな人目がある所で話はしないでしょうけどね。デボラに話をしてからこの方達について行きますか。お茶はどうせ出てきますから、今はいいですね。さっさと寮の部屋に戻ってデボラに言えば、デボラは心得たように頷いた。そのまま寮の玄関へ向かえば、当然のように殿下方はそこで待っていた。この辺、私の行動を良く分かっていらっしゃいますよね。
「隣国の第二王子とのお茶会は随分愉快なものになったみたいだね」
場所は当然殿下方専用サロンです。以前お世話になった殿下2人についた侍女さんに引き続きお会いします。お久しぶりです、美味しいお茶をありがとう。一口飲んだ所でノクシオ殿下にそう切り出されました。
「その件ですか。そうですね。かなり愉快なお茶会になりました」
相変わらず情報収集が素晴らしいですね。ウチも負けてないですけど。
「それで、ケイトリンは筆頭婚約者候補者になったみたいだが、俺たちの筆頭婚約者候補者でもあるのを忘れてはいないだろうな?」
ドナンテル殿下、一体何の確認ですか。忘れたいけど忘れてませんよ。忘れさせてくれないでしょうが。
「覚えてます」
「じゃあこちらでも婚約者候補者達とのお茶会があるから出席よろしく〜」
本当に腹黒を隠さなくなりましたね、ノクシオ殿下!
「かしこまりました」
嫌ですけど。嫌ですけど断れませんからね! 仕方なく参加しますよ! 美味しいお菓子を目当てに、ね!
「それから辺境領も少し騒がしかったみたいだね」
私の返事を気に入ったのか機嫌良く話を進めるノクシオ殿下。やっぱりそれも耳に入ってますよねー。知ってました。
「ええ、まぁ」
これはもしかしたらウチのゴタゴタも耳に入ってますよね!
「あと、キャスベルだったか? お前の姉。随分、面白い言動で引っ掻き回したらしいな」
やっぱりご存知でしたか。そしてその話をぶっ込んで来るのが、ドナンテル殿下なんですね。ノクシオ殿下が主導権を握っているから、反応が鈍くなりましたよ。
「そうですね。……まぁ身内だから、と甘やかす気は無かったので、アレでもどうにもならないようなら、お父様やお母様には悪いですが、私は切り捨てていましたね」
どうせ、その辺が聞きたいのだろう、と私は本音を溢した。……そう。野外訓練をしても、お姉様が全く現状を理解しないのであれば、私はお姉様を切り捨てていました。冷たいようですが、身内だから、家族だから、と情に引きずられて甘やかしていたら、後々、お姉様が……もしくは別の誰かが何かをやらかした時に、私がその後始末をするようになります。
下手に情をかけて挙げ句に私が貧乏くじを引くのは、家族や友人等としては美談でしょうが、辺境伯の当主の座を見据える私としては、愚かです。当主として時に家族を友人を切り捨てられる冷酷さがなければ、守れるものも守れないのです。
殿下方は、そこを確認したかったのでしょう。私の発言に満足したように、特にノクシオ殿下が笑みを深くされていました。




