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成る程。では、お互い不干渉といきましょう。  作者: 夏月 海桜
学園生活2年目は婚約者候補者とのガチバトル⁉︎
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2度目。ーー野外訓練2日目。番犬ならぬ番狼? となったらしい。・1

お母様を起こして見張り兼焚き火番を交代する。お姉様の分だけ長くて眠った時間は少ない。寝床ではお母様が隣に居た安心感からか、野外訓練だという意識がまるで無いお姉様が寝ている。……確かに眠れる時に寝ないと大変とは言ったけど、警戒心無くこれだけ寝られるって、ある意味神経が図太くないと出来ないよね。


狼の親子を見てパニックになっていたくせに、その事実を忘れているのかしら。こんな状況で良く寝ようとするわ! とか文句を言ってませんでしたかね。


あまりにも言っている事とやっている事が違い過ぎて、ここ数年“姉”として敬う気持ちがだだ下がりな私の中で、更に敬う気持ちが下がって行く。何を言われても……家族だから、血の繋がりがあるから、と自分自身を納得させてきたけど。


何とも言えない感情が私の心を駆け巡る。


溜め息を一つついて、この人の隣では寝たくないな、という気持ちを優先するように少しだけ離れた木の幹に寄りかかって仮眠を取る事にした。もう日付が変わったけれど、今日一日何もなく過ごせるよう願いながら。ウトウトとしていると、お母様が朝食を作ったのだろう、いい匂いがしてきた。その匂いに釣られてお姉様も起きたらしい。私はさっさと動き出したが、お姉様はグズグズとしているようだ。野外訓練って本当に理解しているのだろうか。


朝食を食べ終えて私は、本日の日程を伝える。一応行う事が有りますよ。午前中は昼食用の食糧集め。昼食はお姉様が作る。当然のように「なんで私が!」と叫ぶお姉様に「一生修道院」と言っておく。午後は夕食の食糧集めと、此方は野外訓練の中で絶対経験する必要がある獣の狩り。凶暴性のある獣を探して仕留める。野外訓練はコレを経験するために有る。だから3日とか期限は区切るものではない。本来は出て仕留めるまで続けられる野外訓練。


私達の時は6日目で出たから7日目で終了出来た。今回は3日と私が区切ったのは、長期休暇の関係だ。だからわざと奥に入っていって凶暴性のある獣を誘き寄せる作戦を立てて、行ってもらう。お姉様はやっぱり「なんで私が獣を殺さなくちゃいけないの!」と叫んだから「嫌なら一生修道院行きに変えますか」と言っておいた。黙った所で昼食の食糧集めをしながら、奥へ向かい始めた私達だが、あの狼親子が何故か側には来ないまでも離れようとはしない。


……朝までには縄張りに帰ると思っていたんだけどな。まぁ着いてくるのは構わない。人語が理解出来るか分からないが、駄目でも良いから少し頼みたい事があった。午前の訓練は滞りなく済んだし、昼食も滞りなく済んだ。狼の親子は昼食時に何処か消えたが、食べ終わる頃にはまた戻ってきた。本当に不思議ではある。


午前の訓練は食糧確保がメイン。何が食べられて何が食べられないか、それを覚えるものなのだが……お姉様はどうやら歩き回るだけで苛ついているらしい。足が痛いだの、木の根が多くて歩き辛いだの、疲れただのと文句ばかりだ。でもいい加減お姉様の言う事は聞き流す事に決めていたので、「修道院」も言わずに無言でいる。無視するな! と叫ばれたが、それだけ元気なら全然問題ない。


隙あらば、お母様に甘やかしてもらおうとお母様に声をかけようとしているお姉様。だが、お母様は私が言わなくなった代わりのように「ならば修道院に行きましょうか」と言い出した。……代わりじゃないか。元々「一生を修道院で過ごす」と、突拍子もない発言をしたのは、お母様だった。お姉様もそこを思い出したのか、文句は言いつつもお母様に甘やかしてもらおうとはしなくなった。


そうして過ごした午前から昼食後。戻って来た狼親子に近づいて、私は静かに話しかけた。


「頼みがある。聞いてもらえるなら礼はしよう。この奥に、もし凶暴性のある……つまりあなた達親子よりも理性が無く凶暴性が強い獣がいたら1匹で良い、此方へ追い立ててもらえないか。倒す訓練をする」


賢いとは思うが、やはり人語は解さないだろうか、と話し終えた後も動かない親子を見て、考える。まぁ駄目でもいいから、と話しかけただけだ。ここまで、どういう意図が親子に合ったにせよ、番犬ならぬ番狼であってくれた。それに感謝して、干し肉をくれた。


ちなみに干し肉は狩った獣を捌いて作る、まぁ野外訓練時や緊急時にしか食べない、あまり美味しくない肉だ。これ、なんとかならないかな。どうやれば改良出来るだろう。そんな事をぼんやり考えていると、干し肉を食べ終えた親子の狼が、ザッと駆け出して奥へ向かって行った。


縄張りに帰って行ったか。

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