2度目。ーー闇に紛れて己を隠そうとする愚か者。・4
お知らせが後書きに有ります。
まぁ何にせよ、お兄様に目的を暴かれた今となっては、本性を偽る事を止めたことで、この後がやりやすくなりそうです。ちなみにお姉様は、バートンのこの姿にショックを受けたのか真っ青な顔色で「そんな、顎で使うなんて……」とか「バカだって思われていたの?」とか言ってます。でもね、お姉様。この状況で自分の事しか考えられないのは、やっぱり甘やかされた弊害ですよ? 自己中です。
取り敢えずお姉様の事は慰めているお母様にお任せして、私は少しだけバカだったら良かったのに……と憎々しげに私を見ているバートンと視線を合わせてにっこり笑ってあげる事にします。
「私を賢いと評価してくれてありがとう、バートン。では私もバートンを評価してあげるわ。思った程賢くなくて残念ね」
「……なっ! なんだと! 俺を! アウドラ家歴代の中で一番優秀な俺を! 賢くない、だと⁉︎」
……あら。バートンってもしかして、コレが一番プライドを傷つけられるのかしら? それならポキッと折っちゃっていいかな。その鼻っ柱。
「ええ。バカよね」
ふふん、と前回と今回のケイトリンの人生でちょっとだけご令嬢方との嫌味の応酬で培った嘲笑を披露します。するとどうでしょう。バートンの顔色が真っ赤に染まりました。相当怒っているようです。成る程、バートンが刺激されるのは、自分が見下される事だったんですね。今までこんな目で見られた事がなかったから、屈辱なんでしょうねぇ。
「貴様! 今すぐ殺してやる!」
息巻いて動こうとしていますが、バートン、本当にバカですか? あなた、拘束されているんですよ? 物理で。ウチの騎士達……つまり人に抑えられているのもそうですけど、あなた手足に鎖も付けられているんですよ? ジャラジャラ音を立てて煩いですよ。
「本当にバカなんですね、バートン。そんな姿のあなたに殺されるような柔な私ではありません」
呆れたように目を向ければ益々真っ赤な顔に。うん。湯気でも出るんじゃないですかね?
「この、俺の、どこが、バカだって、言うんだ!」
怒りからなのか、言葉が随分途切れ途切れですが、まぁ問いかけには答えましょう。私、優しいですから。
「だって、そうでしょう? ウチの当主を狙っていたのなら、正々堂々と当主候補になりたい、とお父様に宣言すれば良かったのですもの」
「………………は?」
あ、バートンがポカンとしてます。怒りで形相が凄かっただけに、その落差たるや……笑えますね。そして本当にそれに思い至らなかったのかしら?
「は? では、有りませんわ。もしかして本当に考えませんでしたの? ああ、アウドラ家は、他の貴族方と同じで長男が跡取りという考え方なんでしたっけ? でも、ウチは違うのはご存知でしょう? セイスルート家の当主になるために必要なのは、強い心ですもの。何が有っても辺境の地と国と民を守る、という強い意思だけ。誰がなっても構いませんの。だからお兄様だけでなく、お姉様も私もロイスも跡取り候補では有りませんか。そんなにウチの当主を狙っていたのなら、お父様に宣言して、堂々と跡取り候補争いに入ってくれば良かったのに。その際は、シュゼットとミュゼットにアウドラ家の跡取りを譲るも良し、アウドラ家とセイスルート家と両方の跡取りを狙うも良し。先々を考えて下さいなって話でしたけど。お父様は、バートンが跡取り候補争いに入ることを止めなかったと思いますわ」
私の説明に、バートンは目をこれでもか、と見開いて呆然としています。そうしてそれを理解出来たのか、急に表情を失って威勢を無くし、その場で頽れたようにへたり込みました。……あらあら。本当にその思考には至らなかったのですわね。
まぁ究極誰が当主になっても良いとはいえ、きちんと辺境の地と国と民を守る意思がある者かどうか、見極めなくてはならないですから、基本的には当主の子ども達が跡取り候補ですけど。バートンは、アウドラ家の嫡男ですし、お姉様の婚約者だったのですから、お父様が見極めるのに必要な時間くらいは有りましたのにね。
残念でしたわね、バートン。
気付いたら12月でしたね。
いつもお読み頂きまして、ありがとうございます。完結まで程遠い本作ですので、飽きずに読んで下さっている読者様へ、クリスマス用に小話を考えています。そんなわけで、24日と25日は1日2話の更新で本編とifストーリーを本作に組み込んで書きたいと思います。
活動報告にてアンケートを集計し、1番多かった話を書きますので、投票してみたい方はよろしくお願いします。詳しくは、活動報告の【アンケート】にて。




