2度目。ーー婚約解消を今度こそ避ける予定で動いたのですが。・4
「デボラ」
「はい」
「いいわね?」
「私は、お嬢様に心から仕える事に決めましたから!」
デボラに覚悟を問う。デボラは強く肯定した。私もそれなら頷き返し、私はお父様を真っ直ぐ見つめます。
「自分も腹を括らねばなるまいな」
お父様が少しだけ寂しそうな顔をした後で、“辺境伯の顔”で宣言された。
「これより辺境の地を騒がす者達に処罰を下す! テッド!」
「はっ、ここに」
お父様が我が辺境伯家の影を纏めるリーダーを呼ぶ。お父様の声に応じてテッドが静かに現れた。
「これより辺境の地を騒がす者達に処罰を下す。アウドラ男爵家を速やかに制圧せよ」
「はっ」
「アウドラ男爵夫妻・嫡男バートン・双子の妹であるシュゼットとミュゼットも捕らえよ」
「双子達も、ですか」
テッドが迷う。幼い2人なのに……という気持ちが有るのかもしれないが、10歳にも満たないような子達とは違う。彼女達は分別のつく淑女に差し掛かっているのだから。たとえ兄のバートンがキャスお姉様の婚約者であり、シュゼットとミュゼットのどちらかが弟・ロイスの婚約者になる予定であり、私も幼馴染みとして親しくしている相手だったとしても。
ーー辺境の地を騒がせた罪は重い。
「辺境の地は……我等セイスルート家が長きに渡り治めてきた。現王家が国を守る前からだ。元々は隣国の脅威からではなく、隣国が出来るよりも前に居た通常よりも力の強い獣達から民と国を守るために。やがてそれに加えて隣国から守るためにもなったが……。その月日の中でアウドラ男爵家が興り我等セイスルート家を主として共に辺境の地を守る事になった。此処辺境は、国の防衛の要。何人たりとも騒がす者は処罰に値する」
お父様の低く然りとて決して大きくは無い声が、重く室内を満たす。その声に押し潰される事なくテッドが頭を下げた。
「臣下の身で余計なことを申し上げました」
「いや、いい。間違いを正す事は臣下の務め。其方の正義感から出た言葉だろう。だが今回は其方の意見は受け入れぬ。いいな」
「はっ」
テッドが影達にお父様の命を伝えるのだろう。ならば私も。
「クルス」
「はっ」
「お前も共に」
「……はっ」
デボラは残しておく事にします。アウドラ家にデボラが行っても思い出したくない記憶を思い起こさせるだけでしょう。
「お嬢様、私も」
そう思っているところにこの侍女はっ!
「なりません。あの家はあなたにとって良いことなど無かった家でしょう。いくらアウドラ男爵があなたの父であっても、いいえ、だからこそ、あなたに対する仕打ちは許されるものじゃありません。会いたいのなら、何か言いたいことがあるのなら、必ずその機会はあげます。それは、今ではありません」
私はデボラの申し出をぶった切って待つように命じました。……いくら専属侍女で私に忠誠を誓ったからといっても、命令はしたくないんですけど、今回は仕方ないです。




