2度目。ーー婚約解消を今度こそ避ける予定で動いたのですが。・3
46.47話目辺りで1度目の時は、キャスベルが婚約を白紙撤回された……と表現したのに、破棄という言葉を使っていた部分が有りました。すみません、白紙撤回という表現で訂正しました。1度目は白紙撤回。2度目は解消の話を持ち込まれています。
「では、私から話す事は全て話しました。ですので、お姉様の婚約解消の一件について話し合いましょう」
お父様とデボラ・クルスが話を飲み込んだだろうと思えるまで沈黙していた私は、そう切り出した。……お父様は正直なところ話を理解出来たのか不安ですが、デボラとクルスは理解してくれたようなので(強く頷いている所を見れば一目瞭然)話を進める事にした。
「確かにそうだな」
お父様、話を飲み込むのを止めましたね? まぁ良いです。
「お嬢様のお話ですと、キャスベル様は前回も婚約解消をされたとか……」
恐る恐るデボラが言う。好きに発言して良いとは言ったけれど、使用人が主人の話に割り込むのは……と思っているらしい。うん、でも、大事な話だし、多くの意見って必要だよね。
「正確に言えば、1度白紙撤回されかけて、それを何とか取り成したのだけど。結婚2ヶ月程前にお母様に甘やかされまくって我儘度合いが増した結果、バートンがお姉様の事を疎んじて白紙撤回にされたのよ。本当はバートンは、こちらの有責で破棄をしたかったらしいって前回のお父様からの手紙に書いてありました。それがダメなら解消。でも破棄や解消だと理由が必要でしょう? それでお父様は多分お母様に泣きつかれたのだと思うけれど、白紙撤回にしたの。これならバートンもお姉様も傷が付かないでしょう? だって婚約そのものが無かった事にされたから」
お父様は、お母様に泣きつかれて……と私に言われてグッと唸った。きっとお母様に泣きつかれたら、そうしてしまうだろうと自分で思っているはず。そしてお姉様の性格の件も。
「まさか、ケイトがキャスやシュシュに以前言っていたのは……」
「前回の記憶が有ったので」
お父様がハッとされる。だいぶ前の話なのによく思い出しましたね、お父様。
「ではキャスが我儘を発揮していたら……というのは」
「前回はそれが原因で婚約の白紙撤回騒動が起きましたから」
「そして今回はキャスの勉強不足か」
「正直、バートンにそう言われる程勉強が出来ない事にビックリですが、それを病弱だから仕方ないと思うお姉様に尚ビックリです」
こう言ってはなんですが、努力を放棄してますよね。努力しても出来ない事は有ります。でも努力を放棄するのは違うでしょう。バートンに愛想を尽かされますよ、と。……だから解消の話になったのでしょうが。
「病弱だからと甘やかしたから、だな」
「全く持ってその通りです。もう一つ言わせてもらえば、病弱だからと泣くお母様に甘いから、余計にお姉様がつけあがったんです」
お父様が私から目を逸らした。……お父様、自分が不利になったからって“辺境伯の顔”から“父親の顔”になっても、私は言うべきことは言わせてもらいますよ?
まぁ前回の釘が功を奏したのか、お母様も前回よりはお姉様に厳しくなりましたし(それでも甘いのはもう仕方ないですが)お父様もお母様に甘いだけではダメだと気付いてくれたので、これ以上言うのは止めておきますけども。
寧ろ私にこれだけ言われているのに、それでも自分は“病弱だから悪くない”と言い切るお姉様の方が、大問題ですね。その上、私はバートンに会っていないのに関わらず、バートンに何やら吹き込んだと考えるその危険な思考に溜め息が止まりません。
……まぁバートンは、どれだけ回避をしようとしても、お姉様との婚約を破棄・解消・白紙のどれかにしようと企むでしょうけど。
「お父様。そろそろ獅子身中の虫を退治する必要が有りますわ」
「しし……?」
「あ、すみません。日本人だった時に習った言葉で、獅子という動物……こちらではそうですね、熊にでも例えましょうか。熊にくっついている小さな虫が熊の恩恵で生きていられるのに、熊に病気をもたらして死なせてしまう……みたいな感じで、そこから恩人や恩がある組織の敵となるような者の事を指します」
「そう、か。そうだな。恩を返さず敵として刃向かう者は罰する必要が有るな」
お父様が決意を固くするように強く頷きました。それにしてもまた諺が……。四字熟語や諺がつい出てしまうのは、私の前世が時代劇大好きな女子高生だったから、でしょうねぇ。日本人だった頃の記憶はだいぶ朧気になりましたけど、時代劇大好きだったのは覚えてます。
お読み頂きまして、ありがとうございました。




