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1度目。ーー巻き込みたくなかった……でも謝らない。

私はドミトラル様といつも落ち合う所へ行く。初めて出会ったこの場所。ここは逢引をしているという勘繰りもされない都合の良い場所。だって人目を引くもの。何にも隠されていない。だからこそ絵を描くドミトラル様に近づいても遠くから見れば分かるからわざわざ誰も近寄って来ない。


「ドミトラル様」


「どうかした? ケイティ」


この方が私をケイティと呼んでくれるだけで私は幸せになれる。でも今はその幸せを甘受している場合じゃないわ。


「お願いがあるのです」


「お願い、ね。今度は何の絵を描いて欲しいんだい?」


相変わらず屈託なく笑うドミトラル様に私も笑い返す。


「これを預かって欲しいのです」


私はハンカチごとドミトラル様に渡す。その中にあのペンダントを入れて。ドミトラル様はハンカチの中に何かある事に気付いたようで驚いたけれど何も言わずにそのまま絵を描く道具(パレットや筆や絵の具等)を仕舞うバッグに入れてくれた。


「いつまで?」


「私が返して下さい。と言うまで。若しくは私が返して欲しい時に私が王都に居ない時」


「ケイティが王都に居ない時に返すの?」


「その時は私の父の部下が取りに来ます。彼の名前を教えておきます。クルス。クルスの名を呼べば彼が現れますわ。彼には私が書いた紙を持たせてあります。日本語で書いてありますから私以外はドミトラル様しか読めないでしょう? 彼にはなんて書いてあるのか教えてありますからその紙を見せられたら読んで下さい。彼にあなたを信用するように話してあります。そうしたら彼に返して下さいますか?」


「分かった。ケイティが王都に居ない時に返す場合はそうするよ。……で。何が起こっているんだい? こういう遠回しな面倒な事を行う以上何か起きているんだろう?」


彼の頭の回転の速さに助かるが話さない方がドミトラル様のためだろう。


「……知らない方がいい事もありますわ。ただ一つだけ。隣国の使者が滞在しているのはご存知?」


「コッネリ公爵だっけ?」


「ええ。近寄らない方がいいですわ。いえ、近寄らないで」


「分かった。ケイティの言う通りにする」


「では」


私はそれ以上の会話をやめて頭を下げた。これ以上話したら知った秘密の重みに耐えかねて全てを打ち明けてしまいそうで怖かった。出来る事ならドミトラル様を巻き込みたくない。けれど現実的に考えてあのペンダントを預けられるような信じられる相手は、私の中では彼しかいなかった。


巻き込みたくなかったけれど巻き込んでしまった現実に申し訳なくなる。でも私は謝らない。謝るのは私の自己満足にしかならない。何も知らないドミトラル様を巻き込んでおいて説明もしないのに引き受けてくれた。それは彼が私を何も聞かなくても信用してくれているから。


だったらその信用を裏切る事は出来ない。今、私が出来る事は全てを上手く終わらせる事。だから全てが終わるまでは謝らない。全てが終わったらその時は許してもらえなくても説明して謝ろう。巻き込んでごめんなさい、と。

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