2度目。ーー婚約者候補者達とのバトル・18(ヴィジェスト編)
「犯人探しとは……どうやって?」
私に叱責されたからか素直に解毒剤を飲んだヴィジェスト殿下。取り敢えず毒というより体力を低下させるだけの薬だったという判断になりました。……前回結果的に毒で死んだ私は、デボラとクルスに2度目のケイトリンの人生を送っているって告げて、毒に耐性を付けたいと話してから、毒に耐性を付けるより、タータント国内と隣国内を中心に近隣の裏ルートで流通している毒の解毒剤を持っている方がいい、という事でデボラが何種類もの解毒剤を持っているのが結果的に功を奏してホッとしてます。近隣諸国の裏ルートで流通している物じゃなかったら……私は一発アウト。前回より更に早くこの世を去ってました。殿下も衰弱していたのでゾッとします。
「どうやって? いや、候補者は既に目星を付けていらっしゃるんですよね? 見た事の無い侍従や侍女がいるんでしょう?」
「そうだが。彼奴ら全てを捕らえて吐かせるのか?」
ヴィジェスト殿下が面倒そうに仰っています。それなりに人数が居るんでしょうね。
「何人居るのか分からないのですが、まぁそれも一つの手ですね。でも今回は違う手を使います」
「違う手?」
「殿下……。少しは頭を働かせて下さいませ。良いですか? 侍女も侍従も護衛も殿下ご自身が登用の面談を行っていないのですから、当然?」
尋ねて来るばかりのヴィジェスト殿下に、アンタはバカですか? その頭は思考放棄しているんですか? と言外に言いながらヒントを出してやる。
「あ、侍女長や侍従長? 護衛と近衛を纏める近衛団長?」
「その辺の誰かが関わっていらっしゃると思いませんか? まぁさすがに国王及び王妃及び王太子殿下の各侍女長や侍従長達が関わっているとは思いませんので、自ずと第二王子殿下に関わってくる侍従長達の誰かが怪しいですわよね」
つまりそういうことである。まぁ殿下曰く護衛は変わっていないらしい。ただ侍女も侍従も知らない者が多いようなので、侍従長か侍女長が怪しいだろう。……っていうかさ。見知らぬ侍女や侍従が多いならもっと警戒心持てよ! いくらヴィジェスト殿下に近づく侍女や侍従は古参でも気付いたのなら警戒しとけ! どんだけ莫迦なの、阿呆なの、お人好しなの! そしてその先を考えて面談して採用する上の立場の者達を疑え! 危機感無さすぎ!
というわけで、私は侍従長と侍女長を睨みつけた。……そうなんだよ、居るんだよ、この場に。だって古参だよ? しかも“長”の立場を得られるような者達だよ? 殿下の『友人』で『筆頭婚約者候補者』の立場の私をもてなすのに“長”の立場の者がいないわけないよね。というか、良く堂々と居られるよね。私、アナタ達を犯人だと言っているんだよ? 普通もう少し暴れるとか、いや暴れなくてもいいけど、動揺するとか、そういう素振りしない? いくら厳しい使用人指導で自らを鍛えて、長年培ってきた使用人人生の賜物だとしても、犯人扱いされているんだから狼狽えるくらいは……
ん? ちょっと待て。
いや、確かにこれだけ目の前で犯人扱いされて、私に睨まれてまでいるのにも関わらず、冷静で居られるってどれだけ使用人の鑑なんだって思ったけど。
発想の転換すれば、この態度も納得いくよね。こんなことを仕出かした理由は解らないけど、そういう事なら全て説明がつく。
「ヴィジェスト殿下」
私は怒りを込めた低い声が出ている事が分かっていても、ついその声で呼びかけてしまう。
「な、なんだ」
「私を、騙して、いえ、試して、ですかね。試して、楽しかったですか?」
目が笑っていないだろうな……と自覚しつつ笑顔で一語一語区切って訊いて差し上げた。




