2度目。ーー婚約者候補者達とのバトル・17(ヴィジェスト編)
あとがきにてご報告があります。
「ケイト、本当に大丈夫なのか?」
私以外の令嬢を城外まできちんと見送りしろ、と護衛に命じて私とヴィジェスト殿下は他の侍女や護衛と共にヴィジェスト殿下の執務室へ入る。侍女と侍従と護衛が私に謝罪をして来たので、受け入れた所でヴィジェスト殿下が切り出した。
ヴィジェスト殿下は真っ先に謝ろうとしたので、王族が簡単に頭を下げるな、と止めた所である。
「大丈夫ですわ。デボラが解毒剤をくれましたし」
「良くそんなものがあったな」
ヴィジェスト殿下の問いには少しだけ考えてから、誰に聞かれてもおかしくない答えを出した。
「いつ、何が有るか分からないため、数多くの解毒剤を侍女に持たせています。我が辺境伯家は狙われやすいですから」
「……成る程」
ヴィジェスト殿下は、いつ、何が有るかという部分で気付いたでしょうか。私が前回の最期に毒付きナイフで死んだことを。
まぁその経験があったので、デボラには解毒剤を持たせてました。
今回の痺れ薬然り。遅効性と速攻性の毒然り。此方は毒だと分かったら取り敢えず飲んでおくタイプですが。毒なんて様々に材料が有りますからね。きちんと解毒するなら材料に合った解毒剤を準備しなくてはいけません。でも直ぐには材料が分からないので、完全ではないものの、症状を軽くしたり進行を遅くしたりする取り敢えず飲んでおく解毒剤です。痺れ薬に対する解毒剤も、一応一般的なものです。有るんですよ、裏ルートでは一般的だと言われる痺れ薬が。それ対応の解毒剤でしたが、バッチリ効きました。
「ところでお伺いしますが、これは殿下だけでなく、貴方達にも確認したい事ですが」
私は侍女・侍従・護衛を見渡しながら、ヴィジェスト殿下に切り出した。
「聞こう」
「何故、あのような事が? というか、疲れているようにお見受けしましたが、まさか毒入りだと解ってて飲食をしていた、とか仰いませんよね?」
ヴィジェスト殿下が溜め息をついて、私に口止めを促した上で話を始めた。
「1週間前からやけに身体が疲れやすくなってな。調査したら第二王子の住まいである此処に見知らぬ侍女や侍従が増えていた。それは此処にいる信頼出来る侍女や侍従に確認済みだ。おそらく何らかの薬だとは思ったが、何の薬かも判らない。だから敢えて放って置いた。背後関係も分からないからな。今回の茶会にまさか紛れ込んで来るとは思わなかったが。そこは油断した。公式の場で仕掛けて来るとは思っていなかった。あの侍女は直ぐに尋問する」
「阿呆ですか! 侍女の尋問は当然ですが、油断する事も阿呆ですし、囮になるって何を考えているんです!」
「仕方ないだろう。誰が敵か炙り出したかったのだ!」
「貴方達は止めなかったのですか!」
侍女・侍従・護衛に問えば、ヴィジェスト殿下か庇う。
「いや、彼等は止めてきた。だが私が聞き入れなかった」
「阿呆の上に莫迦ですか……。彼等は処分される事を覚悟の上で、殿下の気持ちを優先させたんですよ。普通、殿下に馘を言い渡されても止めます。実際彼等はそのつもりでしょう。いえ、イルヴィル殿下や国王陛下に知られれば良くて処分。悪ければ処刑も覚悟していたはず。それでも殿下が犯人を油断させるため……という気持ちだったから、その気持ちを優先させたんですね。殿下、貴方は彼等の命をなんだと思っているんです?」
「それは……」
「そこまで考えていなかった。では済まされません。信頼しているならば、尚更聞き入れるべきでした。貴方達、この件はイルヴィル殿下に私から報告しておきます。宜しいですね?」
侍女・侍従・護衛が頭を下げた。全員処刑される事を覚悟の上で、ヴィジェスト殿下を止めなかったようだ。ヴィジェスト殿下が絶句している。……本当にこの方は、前回と変わらずに甘い考えをしています。ちょっとはマシになったかと思いましたのにねぇ……。
まぁでも、私も甘いのでしょう。彼等の覚悟が解ってしまったので、処刑されないようにイルヴィル殿下と取り引きをしようと思うくらいには、その心意気を気に入ってしまったのですから。
「では、貴方達のその覚悟と忠誠心を無駄にするわけにはいかないので、犯人探しをしましょうか。その前に、殿下の症状に対応した解毒剤をお渡ししますから、きちんと飲んで体調を回復して下さいね」
有無を言わせる気はない。私は殿下に詳しく聞いた症状に合った解毒剤を、デボラから受け取って殿下に飲むよう強く勧めた。
ご報告。活動報告にも書きましたが。
本作が、小説家になろうの『今日の一冊』に選ばれました。
何故選ばれたのかいまいち分かってないのですが……。素敵な紹介文で紹介されています。それに見合った作品なのかは別ですけども。
毎日更新を追いかけて下さる方。
まとめて更新を読んで下さる方。
『今日の一冊』で本作を知って下さった方。
様々な方がいらっしゃるとは思いますが、ひとえに皆様が読んで下さっていることが今回の件に繋がったのだと思います。
数有る作品の中から拙作が選ばれた事は、感謝しかありません。いつも皆様ありがとうございます。お礼は執筆を続ける以外有りませんが、完結まで頑張りますので、引き続き宜しくお願いします。
また、気付いたら本作が200万PVを超えてました。此方も有難い限りです。100万PVの時も気付いたら超えていたので……本当に有難いやら気付くのが遅くて申し訳ないやら。ですので、連載中に本作が500万PVを超えるような事が有りましたら、その際はお礼に記念話を書きたいと思います。(連載中に超えるかどうかは、分かりませんけども)
尚、11/24〜12/8まで『今日の一冊』に掲載されているそうです。お時間ある方は見て下さると嬉しいです。
感謝を込めて。
夏月 海桜 拝




