2度目。ーー婚約者候補者達とのバトル・13(ヴィジェスト編)
さて。仕切り直して席へ戻れば、案の定侯爵令嬢さんが突っ掛かって来ました。
「あらあら、王族のお茶会に集中出来ないようなマナー違反のご令嬢が戻っていらしたわ」
直訳すると、第二王子の前で第二王子のことを忘れるような頭の悪い方が、空気を読まずに戻ってきたよ? である。
「先程は失礼致しました。殿下の麗しさに言葉を失くしていただけですわ」
いや全然麗しいとは思っていないけどね。前世のマコトの記憶を思い出す前はカッコいいって惚れていたんだけどねぇ。マコトの記憶が戻ってからは、客観的に見れば美しいのかもしれないけれど、心惹かれるわけじゃない。まぁ嘘も方便って言うよね。
そして然りげ無く殿下に原因を押し付けてみました。誰だって殿下の麗しさに見惚れた……なんて言われて否定出来難いよね。肯定すれば、私の失態を詰れないし、かと言って否定すれば、それはつまり殿下の顔が美しくないって言っているようなもの。さて、何て言い返してくるかしら。
「論点をずらしましたね?」
エルネン伯爵令嬢が割り込んで来た。論点、ねぇ……。私はエルネン伯爵令嬢に視線をチラリと向ける。彼女ははっきりと私を見ていた。……ふぅん? 私を敵認定したのかしらね。
「話の論点? 誰が? どんなふうに?」
全く解らないと首を傾げて彼女に微笑む。あらあら。挑発されたと思ったのかしら。眦が吊り上がっていますわよ。ちっとも怖くないですけど。でも怯える振りをしてあげた方が良いのかしらね。
「そうやって無邪気を装っていられるのも今のうちですわよ!」
えええ! 淑女らしからぬ……いいえ、言葉を大切にしているエルネン伯爵家の令嬢の一言とは思えない発言ですね。無邪気を装って、ねぇ……。まぁ確かに装っていますけどね。確たる根拠も無いのに決め付ける発言。ちょっと揺さぶってみましょうか。
「まぁ無邪気を装っているだなんて人聞きの悪い。どうしてそのような酷いことが仰れますの?」
涙目で訴える、なんて可愛げは無いし、演技なら尚更涙目にはなれない。ということで優雅に微笑んでおきました。殊更に意味が分かりませんわ、と首を横に振りながら。
「あら。実の姉を貶めて苛めるような方ですもの。無邪気を装っている、と考えても可笑しくないのではないかしら?」
えー。ちょっと揺さぶったらもうコレ? 恋は盲目なのか、先程自分で私に関する噂に対して否定的な発言したのに。法の番人の名前に傷をつけるような発言しても良いのかしらね……。曖昧な事では発言はしない、というのがエルネン家の家訓ではなかったのかしら。
「先程あなた自身が私に関する噂を否定されたのに、ね」
私がクスリと更に微笑めば、彼女はハッとした表情になる。自分で自分の発言を否定するというなんとも情けなさを露呈させましたね。お粗末ですわ。本当にこの方が、あの前回のケイトリンで、あのような大それた事を考えたのかしら? ……うーん。多分、だけど。協力者がいたのよね? そうでないなら、前回と今回の彼女があまりにも性格が違い過ぎる、とか。やはり圧倒的に情報不足ですわ……。




