2度目。ーー婚約者候補者達とのバトル・11(ヴィジェスト編)
うーん。まぁこの前の話通り、ヴィジェスト殿下の隣に私は座っているので、聡い令嬢は私が一歩先んじてる事に気付いたみたいだけど。メーブ子爵令嬢の目がヴィジェスト殿下より私に固定されているな。私に興味があるらしい。私の位置に気付いた所で私に固定する、という事はヴィジェスト殿下の婚約者争いには参戦しない、ということか。寧ろ侯爵令嬢さんと法に詳しい伯爵令嬢さんの方がよっぽども視線が痛い。
それにしてもヴィジェスト殿下のこの疲れ具合が気になるな。なんだろう? なんていうか精細に欠ける。たった3週間でこんなに疲労が溜まる程この方は何をやった? 前回の人生ではそんなに関わらなかった所為か、こんなヴィジェスト殿下は見なかったけれど……。精細に欠けるもののヴィジェスト殿下が「始めよう」と仰るので茶会は始まった。前回の茶会のようにそれぞれ候補者の女性との時間を持つらしい。でもこの疲れ具合でそれが出来るものなのか?
チラリと隣に座る殿下を失礼が無い程度に眺めて訝る。頬に吹出物が出来ている。そんなまさか。王族はこう言ってはなんだが、前世で言うマスコット的存在でもある。或いはモデルとか。要するに顔の美しさを保つのも王族の務めだ。だから、というのも変だが、王族が選ぶ相手はそれなりに見目が整っている人物を選ぶ事もまま有る。
人は見た目ではない。心だ。
というのは所詮綺麗事で、やはり第一印象というものはそれなりに必要になる。もちろん見た目が普通であってもそれをカバー出来る何かが有れば縁談が結ばれる事もある。前回のケイトリンの人生のように。自己評価が低いとは思わないけれど客観的に見て、ケイトリンよりも侯爵令嬢さんやロズベル様の方が見た目は良い。ただロズベル様は爵位が少し低く侯爵令嬢さんと婚姻を結ぶより、セイスルート家と婚姻を結ぶ方が、王家にとっては利益があった。それは確かだった。
話がズレた。つまり見た目を気にするのも王族のある程度の義務であるのに、王子の顔に吹出物。そんなものが作られたというのは、使用人達の怠慢とも言える。ーーそれとも作られてしまうくらい、つまり生活環境が変わるくらいの事がヴィジェスト殿下に起こった? たった3週間で?
確かに王族は忙しいだろう。正直遊び呆けている時間がある、と豪語する王族がいたら、その人物は国王から見捨てられていると言っても過言ではない。何の仕事も充てられていないのと同じ。仕事が充てられていないから暇になり、遊び呆けていられるのだから。精々時間が有るのはデビュー前の幼少期くらいだろう。そういう事を考えれば、ヴィジェスト殿下の疲れ具合も納得は行くけれど……果たして、それだけなのだろうか。




