2度目。ーー婚約者候補者達とのバトル・8(ヴィジェスト編)
今回は庭園ではなく、城内の一画にあるサンルーム的な場所だった。別邸からだから前回のように遅れはしなかったけど、私の胸元を見て顔を顰めるお嬢様方が何人もいた。……やっぱりこのサファイア、あからさまだよねぇ。付けたくなかったよ。
「あら。素敵なネックレスですこと。ドレスより目立ってますわよ」
あ、来た。ヴィジェスト殿下が苦手な侯爵令嬢さん。
「ありがとうございます、少々不釣り合いだったかもしれませんが、贈り物でして」
誰から、とは言わない。だからドレスが劣っているという当て擦りもサラリと流す。まぁ実際に言ってる事は合ってるんだけどね。ほんと、ドレスとネックレスが合わないんだよ。贈られてしまったネックレスに合うドレスを急いで見繕ったんだけど、ネックレスの価値からすれば数段劣るドレスになってしまった。
元は違うドレスを着ようと思ったんだけどね、そのドレスに贈られたネックレスは色はおかしくないけどバランスが悪かったんだよね。お茶会だからさ、夜会用の大胆なデザインのドレスなんか着ないし。寧ろブローチを付けるくらいのドレスにするつもりでいたのに、急遽、ネックレスを付けてもおかしくない、それでいてデビューも迎えてない私が着られるお茶会用のドレスを見繕ったら見劣りしたんだよ。
「まぁ贈った方はセンスが無いんですのね。ドレスの見合う物が用意出来ないなんて」
贈った相手知らないからって、失礼な事を言ってるって分かってるのかな。このネックレス見れば、それなりの物だって分かるはずなのに。うーん。目が曇ってる? それとも思い込みかな、私に贈る人間なんて金は持ってない的な。どのみち失礼だけどね。
さて。
ヴィジェスト殿下が来るまでにどれくらい情報が得られるのか、煽てつつ引き出してみようかな。この侯爵令嬢さんだけじゃなくて、他の人にも聞いておく方が多分数多くの噂を耳に出来るだろうし。
今回はどうやら前回のお茶会で殿下の婚約者が決まらなかったことから、候補者の幅を男爵家まで広げたみたいだし。あまりお茶会には出ない私でも見た事がある子爵家の令嬢が居たからね。彼女の家、お父様に才覚があるらしくて桁違いのお金持ちだし。
寧ろそういう家のご令嬢の方がこれからの王家には必要かもしれないよね。だってウチは王家に忠誠を誓ってないから。誓わないと言うべきか。
今のところ予定は無いけど、いつウチが反旗を翻しても大丈夫だと言えるような後ろ盾が必要じゃない? あの子爵家だったら人脈も半端無いし、お金も有るから、ウチが万が一反旗を翻しても、動じることが無いと思うよ。……なんて、余計な心配をしてみながら、目の前の侯爵令嬢さんにどう仕掛けるか、考えた。




