2度目。ーー婚約者候補者達とのバトル・1(ヴィジェスト編)
「えっ。嫌です」
あ。いくら本音でももう少し、もう少し言葉を修飾する必要があったでしょう、私!
ヴィジェスト殿下の顔は悲しそうに……ってなんで悲しそうなんです? 此処は喜ぶべきところでは? ロズベル様と相思相愛でしょうに。あら。そういえば、何故私に筆頭婚約者候補者の話を出されたのかしら?
私に仰ったように愛する人がいるから、とでも言えば御令嬢方は去って行くかと……ああいえ、そんなことも有りませんでしたわね。ヴィジェスト殿下の愛が欲しいのではなく、第二王子妃の座が欲しい方ならば、ロズベル様の存在を匂わせても関係ないですものね。
というか、そういえば、今回のロズベル様ってどういうことなのでしょう?
何しろ、隣国にいらっしゃるらしいし、年齢も何故かヴィジェスト殿下より4歳上……つまり私よりも2歳上ですし……。前回と全く違うのが不思議ですわ。でも私は結局、1年目ではロズベル様にお会いしなかったので、前回のロズベル様と今回のロズベル様が同じ人かどうかも分からないですし。
あら、そういえば、ロズベル様とヴィジェスト殿下は相思相愛の間柄だったのに、今回は早々に何故かヴィジェスト殿下がロズベル様を避けてしまわれたのでしたっけ? でも、そうだわ。ヴィジェスト殿下にロズベル様の年齢くらいは聞いてもいいですわよね?
もし本当に隣国にいらっしゃるらしいロズベル様が、前回ヴィジェスト殿下と相思相愛だったロズベル様ならば、少なくともヴィジェスト殿下が5歳くらいまではご一緒だったはずですもの。でも前回のロズベル様も謎多き方でしたわね。
そもそも我が国の子爵家の方のはずなのに、隣国と関わりがあるっておかしな話ですし。ロズベル様が持っていらしたロケットペンダントのあの紋章って、結局どなたのものだったのかしら。お父様に確認頂く前に私は死んだ……死んだと言うべきよね、多分……死んだから、私は分からず仕舞いだったわ、そういえば。
「……ト? ケイト? ケイトリン・セイスルート?」
「あ、はい」
「私とのお茶会はつまらぬか?」
あら、いけない。ヴィジェスト殿下の存在を忘れて思考に没頭しましたわ。なんでしたっけ?
「ええと」
「聞いていなかったのだろう? 私がケイトを筆頭婚約者候補者にする理由を説明したのに」
そういえばそんな話でしたね。ええ聞いておりませんでした。すみません。
「全く聞いておらずすみません。ええと、私を筆頭婚約者候補者にする理由とはなんでしょう? 私は巻き込まれたくないのですが」
「はっきり言うな。……前回もそうだった。いつだって君ははっきりと私に意見を言える令嬢だった。……巻き込まれたくないとは言うが、頼めるのはケイトだけなんだ」
そう言うヴィジェスト殿下。私は改めてその理由とやらを聞くために、ヴィジェスト殿下と視線を合わせた。




