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上級魔法戦闘職員が今さら中等科学園に通う意味  作者: 南波なな
第2章 体験カリキュラム
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(21)

 防衛局の正規の執務時間が終わると、学園生たちはすぐに解散となった。職員たちは残業するそうだが、体験カリキュラムに参加しているだけのアンリたちにそこまで強いるつもりはないようだ。


 やや残念そうに、それでも引き留めるでもなく見送ってくれた研究室の職員に挨拶しつつ研究棟を後にしたアンリたちは、そのままそれぞれ、あてがわれた部屋へと戻ることにした。夕食にはまだ早い。


「それにしても、まさかアンリが開発者だったなんてね」


 部屋に入るなり、ウィルが呆れた様子で言った。廊下ですれ違う誰かに聞かれないように、部屋に入るまで我慢してくれていたのだろう。その気遣いを、アンリは有難く噛みしめる。ハーミルには爪の垢を煎じて飲ませてやりたい。


「戦闘職員のツテで手に入れたんだろうと思っていた。まさか自分のだったとはね」


「自分のではないよ。俺は素材についてのアイディアを出しただけで、あそこまで作り上げたのはミルナさんだからね。今日の研究室で見たやつなんて、もうほとんど別物だし」


 その日の研究室で、三人は魔法器具の仕組みを知るため、設計図をいくつか見せられた。更にミリーは奮発して、実物をひとつ、三人の前で解体して見せたのだった。


 結果としてアンリはその魔法器具が、アンリの知っているときの造りとまったく違っていることを理解した。基幹となる素材は同じだが、魔力を変換させる仕組みや出力するための機構が、アンリが作った初期の試作品に比べて随分と改良されていたのだ。


 驚くアンリの顔を見て、ミリーはとても気分が良さそうだった。少し悔しいと思ってしまったのは内緒だ。


「魔力を魔法に変換するときの効率がずっとよくなっていたね。使う本人にも、負担は少ないと思う。マリアにも良くなった方を使ってもらいたいけど、さすがに試作品なんてもらえないかな」


 ミルナから試作品を借りることができているのは、相手がミルナだったからということもあるが、やはりアンリ自身が開発者の一人であるという点が大きかった。


 まったく別物と言っても差し支えないほどに改良の進んだ魔法器具を貸し出してくれと言ったところで、簡単に許可してもらえるものではないだろう。


「体験の間になんとか改良に貢献して、最後におねだりできるくらいの成果を出せればいいんだけれど」


 期間が短いから難しいかなと、アンリは腕を組んで悩み始めた。その様子を見たウィルは苦笑する。


「……やっぱり、さすがはアンリだね」


「ん? どういうこと?」


「体験カリキュラムで研究に貢献しようなんて、普通は思わないよ。少しでも自分の経験にできれば良いと思うくらいで。普通は学園生が研究に参加したところで、貢献するどころか足手まといになるだけだから」


 あ、と言ったきりアンリは黙った。研究に貢献しなければならないとつい意気込んでしまったアンリだが、今は『体験』であって仕事ではない。一介の学園生が国家防衛局の研究に貢献しようなど、おこがましい。


 会話の相手がウィルで良かった。アンリが何者かを知らない人との話で今の態度をとったなら、怒られるか笑われるかのどちらかだろう。


「……ありがと、ウィル。気を付けるよ」


「別に構わないとは思うけどね。実際、それだけの実力があるんだし。……それより夕飯までまだ時間があるから、勉強しようよ。カリキュラム明けのテストが心配なんだ」


 嫌なことを思い出したと苦い顔をしながら、アンリもウィルに倣って机に向かうことにした。

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