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上級魔法戦闘職員が今さら中等科学園に通う意味  作者: 南波なな
第2章 体験カリキュラム
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(5)

 黒深林の中を、アンリたちの班はミルナを先頭に、北へ向けて歩く。歩き始める前にミルナが会話を許可していたため、薄暗い森の中ではあったが、話には明るい花が咲いていた。


「アンリ君って三組だよね。カリキュラムに参加できるのもすごいけど、まさかこの班に入っちゃうなんて」


 サニアが感心した調子で言う。意味がわからずアンリが首を傾げると、サニアは困ったように付け足した。


「私とスグルは、自慢じゃないけど二年の成績トップだから。アイラさんだって、あの有名なマグネシオン家の娘さんでしょう? 試験の成績順ってことなら、この班はトップに違いないの。そこに入ったもう一人が、一年生の、しかも三組の子っていうのが驚きで」


「先輩、侮ってはいけませんわ。私は彼と模擬戦闘をしたのですけれど、完敗でした」


 サニアの言葉に返したのは、なぜかアンリではなく、近くを歩くアイラだった。その言葉に、サニアは目をまん丸に見開く。悪目立ちするものの言い方はやめてほしいとアンリはアイラを睨んだが、アイラはどこ吹く風と優雅に微笑むばかりだった。


 どのみち、どんなに睨んだところで後の祭りだ。サニアはすでに、驚きに好奇心を混ぜた輝くばかりの瞳でアンリを見つめている。


「アイラさんと言えば、入学前から魔法戦闘の訓練を本格的にやっていたことで有名じゃない。アンリ君は、その彼女に勝っちゃったの?」


「誤解です。勝ってません、無効になったんです」


「無効とは言え、あの模擬戦を見て貴方の勝ちだとわからない人はいないでしょ」


 せっかく話をおさめようとしているのに、アイラはよほどアンリを困らせたいらしい。それでいて、口止めされているあの事件のことや、アンリの身分のことには触れもしない。律儀であるがゆえに、なんとも止めようがなく厄介だ。


「すごい。ねえ、私にもアンリ君の魔法を見せてくれない?」


「見せびらかすものじゃありませんよ」


「あら、見せびらかしてもらう機会があるかもしれないわよ」


 先頭を歩いていたミルナが、突然振り返って会話に加わった。なんの冗談を、とアンリは思ったが、意外にもミルナの表情は真剣そのものだった。


「これから私たちが向かうのは、成績上位者に相応しい危険地帯よ。私でさえ滅多に行ける場所じゃないのだけれど、特別に許可してもらったの。護衛についてくれたグライツくんも優秀だけれど、貴方たちにも働いてもらうかもしれないから、覚悟しておいてね」


 ミルナはにっこりと微笑むと、元のとおりに前を向いて歩き始めた。人好きのする笑みと言うよりも、悪戯に成功した子供のような笑顔だった。


 その言葉の重みに、これまで会話に花を咲かせていた女子たちが急に黙り込む。アンリは一緒になって黙りながら、心中では苦笑いした。目的地を明らかにせず、ただついてくるようにとだけ言って歩き始めたミルナに続いて歩いていたが、その行き先にようやく思い当たったのだ。


「行き先は危険な場所なんですか? 比較的安全って、さっき……」


 声を落として不安げに尋ねるサニアに、ミルナは歩きながら肩越しに軽く振り返る。


「そうね、何事もなければ安全よ。大丈夫、あとでちゃんと話すわ。目的地までは少し遠いから、今日は夕方まで歩くだけよ。今晩の宿で、明日以降の話をしましょう」


 それ以上この場で話を続ける気は無いようで、ミルナは再び前を向く。十分な答えを得られずにサニアは不満げだったが、さりとて立ち止まるわけにもいかず、結局は素直にミルナの後ろについて歩いた。


 口数が減り、静かになった一行の中、アンリは周りに悟られないように気を付けながら深いため息をつく。


(……この人、あの場所に行きたくて俺をこのカリキュラムに誘ったんだな)


 面倒だという思いと、嵌められたという苛立ちと、万が一を考えたときの不安。いくつかの気持ちが心の中に浮かんだが、すぐにどうでもよくなった。ここまで来て、敢えて引き返したいと思うほどのことではない。


 せめて何も起こりませんようにと心の中で祈りつつ、アンリも周りに合わせて黙々と歩いた。

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― 新着の感想 ―
[一言] あいらくそめんどくせぇ女だな!現実にいたら普通にしばきまわすわ
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