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上級魔法戦闘職員が今さら中等科学園に通う意味  作者: 南波なな
第2章 体験カリキュラム
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ここから第2章です。

 どさどさっと派手な音を立てて、ノートや教本が数冊床に落ちた。やらかしたのはそれを手に持っていたマリアだが、見ていたアンリの方が驚いた。まさかこんな簡単な話に、物を取り落とすほど驚かれるとは。


「うそ……アンリ君たち、来週から部活動来ないの?」


 目にうるうると涙までため始めるので、アンリは思わず視線を逸らせた。なぜこんな当たり前のことで責められなければならないのか。逸らした視線の先にエリックを探すが、なぜかこういう肝心なときに見つからない。


 というか、ウィルはともかくアイラまで、これまでマリアに何も言っていなかったのか。つい、頭の中でほかに責めるべき相手を探してしまう。


「……そっか。仕方ないよね……体験カリキュラム、行かないといけないもんね」


「うん。えっと、決まったときからわかっていたと思うんだけど」


 アンリは舌打ちしそうになるのを抑えながら、床に散らばったノートと教本を拾い集めてマリアに渡す。素直にそれを受け取ったマリアは、俯いたまま小さくため息をついた。ため息をつきたいのはこっちだよ、とアンリは心の中でだけ毒づく。


 国家防衛局での泊まり込みの体験カリキュラムに参加するため、来週からアンリ、ウィル、アイラの三人は学園を離れて首都へ行くことになる。部活動にも参加ができなくなるため、その間のことについて少しマリアに伝えておこうと思って声をかけただけだ。


 それなのに、なぜそもそも、アンリが来週から部活動に参加しないことにこれほど傷ついた顔をするのか。


「そうだよね……あんまり考えてなかった」


「ええっと。アイラとも話してないの?」


「アイラ? そっか、アイラも、ウィル君も……」


 マリアの目に、再び涙が溜まり始める。焦ったアンリは当初の話の目的など脇に置いて、話題を変えることにした。


「そ、そういえばマリア、腕輪の調子はどう? 家でも魔法の練習はしているんだろ?」


「ああ、うん。今まで何もできなかったのが嘘みたいに、ちゃんと魔法が使えるよ。でも、腕輪を外すと、やっぱり何もできないの。こればっかりはもう仕方ないね」


 一生この腕輪を着けていたいと晴れやかな顔で笑うマリアの表情に、アンリはほっと息をつく。魔法が使えるようになったことがよほど嬉しいらしいマリアは、どんなに機嫌を損ねていても、魔法の話をすればたいてい笑ってくれる。


(不在の間の腕輪の扱いを伝えておこうと思ったけど、もういいや……)


 腕輪に不調があったときの対処のために、腕輪の出所がウィルではなくアンリであることを伝え、なにかのときの連絡先を教えておこうと思っていたのだが。その前提として不在であることを話に挙げただけで先ほどの反応だ。


 何かあったときの連絡は先生に頼んでおけばいいかと、アンリはマリアに詳細を伝えるのを諦めた。彼女の機嫌を損ねないよう、魔法の使い方の話ばかり続ける。


(これ、俺たちがいない間、エリックたち大変だよな……)


 アンリは心の底から、体験カリキュラムに参加しない部活動の仲間たちに同情した。

更新再開します。

しばらくは2〜3日おきに更新したいと思っています。

どうぞよろしくお願いします。

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