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 翌日、アンリは昼休みにひとりで教員室へと向かった。自分の魔法力のことともうひとつ、トウリに相談することがあったためだ。


 魔法力についてはウィルと相談し、戦闘魔法が使えることはまだ隠しつつ、生活魔法だけは熟練レベルであるということにして説明をした。一年生での体験カリキュラムの参加審査くらいであればそれで通るというのがウィルの意見だ。


 驚かれるかと思ったら、トウリの反応は意外にあっさりしたものだった。曰く、アンリがそれなりに魔法を使えることは、予想していたらしい。


「魔法の理論がちゃんと頭に入っている奴は、魔法を覚えてからできるようになるまでが早いんだ。ほかの奴らと同じように水魔法でまごついている方が嘘っぽい」


 そう言って、とにかく次の部活動のときに実践してみるようにとの指示をもらった。ついでにもう一件にも許可をもらい、教員室を出る。


 皆に遅れて食堂へ入ると、遠く窓際の席に、いつもの三人で集まっているのが見えた。マリアがアンリに気付き、手を振ってくる。そちらに向かって歩き出すが、すぐに邪魔が入った。アイラ・マグネシオンが、アンリの前に立ちふさがったのだ。今日は周りに取り巻きがいる。


「……ええと、なにか用?」


「そうね。ちょっと話をしたいと思っていたのよ。時間をいただけるかしら?」


「今? 急いで昼飯食わないと、授業に間に合わないんだけど」


 アンリの言葉に、アイラの取り巻きたちが気色ばんだ。その口調は何だ、とか、アイラ様の誘いを断るなんて、とか。口々に文句を言うが、重なってしまって、逆にアンリには伝わらなかった。アンリの答えに少し考える素振りを見せていたアイラは、ややあって、手を挙げて取り巻きの文句を抑えた。


「いいわ。……授業後に中庭で。それでどう?」


「いいけど、皆で来るの? 俺も皆連れて行った方がいい?」


「私だけよ。だから貴方もひとりでいらっしゃい。約束よ」


 一方的に約束を取り付けて、アイラはそのままアンリの脇を抜けて、食堂を出て行った。取り巻きたちはアンリにあかんべえをして去って行く。


 無事にやり過ごしてマリア、エリック、ハーツの待つテーブルにたどり着くと、マリアは既にご立腹という顔をしていた。


「アンリ君、アイラになにか言われたんじゃない? 大丈夫?」


「え、うん。大丈夫。ちょっと話がしたいって言われただけだよ」


「ホントに!? アンリ君、鈍いから心配だよ」


 実はアイラよりもマリアの方が失礼なのではないだろうかとアンリはときどき思うが、火に油を注ぎたくないのでそれには触れずに、ただ「大丈夫だよ」と繰り返した。


「ならいいんだけど。なにかあったらちゃんと言ってね」


「はいはい」


「マリア、いい加減にアンリに飯食わせてやれよ」


 ハーツの助け船に感謝して、アンリは急いで食事に手を付けた。昼休みも終わりに近い。


 アンリが食べ終わるのを待って四人で教室に駆け戻ることになったため、アイラの話がそのまま続くことはなかった。アンリは授業後の約束を気取られずに済み、安堵した。

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