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 ようやく訓練室の天井が直り、新しい訓練室での初めての部活動の日を迎えた。


「防護壁二枚にしたんですね」


「さすがにあの強さの魔法を使われるとな。というか、よく見ただけで枚数がわかるな」


「えっ。……ええと、なんとなく」


 普通は見ただけでは枚数がわからないものらしい、とアンリはまた新たな常識を学んだ。


 もしかするとアイラは、防護壁が一枚しかないことに気付いていなかったから、あれほどの勢いで魔法を発現させたのかもしれない。アイラの家の訓練室は、おそらくもっと防護壁を多く張ってあるのだろう。三枚とか。


「ところで先生、今度の体験カリキュラムの審査って、どのくらいの実力で通ります?」


「唐突だな。なんだアンリ、興味がでてきたのか」


 魔法研究部の皆が防衛局での体験カリキュラムへの参加を希望して訓練への意欲を見せるなか、アンリは一人だけ、まだ参加希望の申し込みをしていなかった。早く出してと急かすマリアを、締切まで日があるからと言ってかわし続けている。


 体験カリキュラムに参加したいなどとは少しも思っていなかったアンリは、そのままうっかり締切を過ぎてしまったことにしようと考えていた。その思惑は、トウリにも見透かされていたらしい。


「ちょっと事情があって迷っていたんですけど、やっぱり参加したいと思って」


「そうか。まあ、目標を持つのはいいことだが」


 言葉に反してトウリの表情はやや暗かった。アンリとの話をいったん切り上げて、全員を呼び集める。


「お前らが体験カリキュラムの審査のために頑張ってることは知ってる。だがな、前にも言ったが審査では実技が一番重視されるんだ。昨日今日魔法を使い始めたばかりのお前らが簡単に通れるとは思わないことだ」


「どのくらいの魔法が使えたら、審査に通れるのですか?」


 トウリの辛い評価にもめげず、イルマークは真面目で意欲的な質問をぶつける。それに対するトウリの答えは、単純明快だった。


「参加者は三人と決まっているから、学年で上位三位に入れば通るさ。こないだ実演をした三人を越えなきゃいけないってことだ。あの三人が現時点で一年生のトップだからな」


「ええっ!?」


 思わず大きな声をあげたアンリに、全員が振り向いた。アンリは慌てて口を噤む。


「どうしたアンリ。怖じ気づいたのか」


「あ。いえ、別に……」


「先生! アンリ君はきっとレベルの低さにびっくりしたんです! 大丈夫!」


 マリアの冗談に、全体が笑いに包まれた。アンリも誤魔化して一緒に笑うが、実のところマリアの言ったとおりのことを考えての驚きだった。まさかその考えが冗談としてしか受け入れられないとは。そのことにも驚いたが、口には出さない。


「アイラ・マグネシオンのやったような難度の高い魔法はできると思うな。ほかの二人のように、基本五系統魔法の威力と精度を上げることを心がけるといい。ひとつ、ふたつあのレベルまで頑張れば、ほかの知識や態度の面で合格できる、という可能性もある」


 だから魔法の精度を上げる訓練とともに、魔法知識の習得や普段の授業態度の改善を心がけるように、との話だった。特に授業態度の話はアンリにしっかりと目を合わせていたので、アンリが授業中にいつも欠伸をかみ殺しているのはばれているらしい。


 その日の訓練の内容は、中庭でやっていたものとほとんど変わらなかった。簡単に水を操って、バケツの中の水を柱のように立たせる。


 訓練を始めたばかりのハーツとイルマークは、なかなか柱を作ることができず、ただ水を跳ねさせるだけだった。エリックは不安定ながら水を立たせることに成功するが、長続きせず数秒で壊れてしまう。ウィルが一番上手に長く柱を保ってみせたので、アンリもそのレベルを参考にした。


 しかし、折角訓練室を使っているのに、的当てもできないとは。残念に思ったアンリはどちらが高い柱を作れるか競争しようとウィルを誘ったが、アンリに勝てるわけがないだろうと、引きつった顔で断られた。俺だって手加減くらいはするのにと、アンリは唇を尖らせる。仕方なくアンリもほかの面々と一緒に、真面目に訓練に勤しんだ。


「ああ、もうっ! だから、なんで私はいまだに最初の一歩もできないのお!」


 もはや恒例となったマリアの残念な嘆きで、その日の訓練は終わりとなった。

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― 新着の感想 ―
[一言] アンリ、学校と軍と重なって大変そう。
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