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「もしかして、戦闘魔法じゃねえか?」


「すごい。アイラちゃん戦闘魔法できるって本当だったんだ……」


「アイラのくせにぃ」


 見学の生徒たちのざわめきに気を留めることなく、アイラは掲げた右手に魔力を集めて練り上げていく。速さはないが、基本に則った正しく丁寧な動きだ。


 ざわつくほかの生徒たちと同様に、アンリもわくわくしながら実践に見入っていた。むろん、アンリほどの魔法は期待していない。しかし、どの程度の戦闘魔法が使えれば学年一位の座につくことができるのか、それに興味があった。


 手から放出された魔力は、空気中で空気と結合する。風魔法を実践するようだ。風は基本五系統に近く、最も初心者向けとも言われる戦闘魔法だ。場合によっては、生活魔法に分類されることもある。


 ごおっと、訓練室の中に低く唸るような音が響いた。


「え、なに、この音」


「アイラさん、いったい何をしようとしているの……?」


 アイラの手を中心に発生した小さな竜巻がたてた音だ。しかし、吹かれるもののない訓練室の中、風は目に見えないので、大半の生徒たちには音の原因がわからない。


 手の上に発生した竜巻は高い訓練室の天井に届くほど大きく成長しており、十五歳が扱う風魔法の規模としては、なかなかのものだと言えた。しかし、一般生徒に見せる実演としては、このままではやや物足りないだろう。どうするのかと思っていると、アイラは空いていた左手を、おもむろに持ち上げた。


「え、なに、浮いてる?」


 生徒たちのざわめきが、再び大きくなる。


 先ほどの実演で床に散っていた土が、アイラの左手の動きに呼応するように宙に浮かびはじめた。宙高く浮かんだ土は、そのままゆっくりとアイラの頭上へ移動していく。


「わっ。すごい!」


「なにあれっ!」


 竜巻に巻き込まれた土が、瞬く間に天井まで巻き上げられた。土の流れで竜巻が可視化される。すごいすごいと騒ぐ生徒たちを前に、アイラが小さく微笑んだ。まだまだ、これからよ。その口元がそんな風に言ったように見えた。


 アイラが掲げた腕を、内向きにやや捻る。その動きを見て、アンリはおやと目を瞠った。


 風魔法を生み出していた魔力が、手の中の一点、人差し指の先に集まっていく。それとは別に、中指にも魔力が集まり始める。重魔法の準備段階と、よく似ている。


 中指に集まった魔力が放出されると、それは炎となって竜巻に巻き付いた。炎は竜巻に呑まれるでもなく、別れるでもなく、互いに沿うように天井に向かう。炎が天井に届くと、轟音とともに部屋が揺れた。悲鳴とも歓声ともとれる声が、生徒たちから漏れる。


「いや、それは、まずいだろ」


 振動と轟音、熱と風の余波に室内が騒然とする中、アンリは炎をまとった竜巻の上部を見つめて、やや眉をしかめた。

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