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 昼休みの学食で、アンリはクラスメイトのマリア、エリック、ハーツとともにテーブルを囲んでいた。入学からしばらく経って、このメンバーで行動することが増えている。


「さっきのアンリ君はさすがだったね。魔法のこと詳しくって、尊敬しちゃう」


「やめてくれ、恥ずかしい」


 マリアが言うのは昼間の授業におけるアンリの発言のことだ。アンリとしては失敗としか思えないので、褒められても嬉しくはない。


「でも、アンリみたいに詳しくても、魔法って使えないもんなのか?」


「魔法の知識と、魔法を使うための技術って、違うものだから……」


 素朴な疑問をぶつけたハーツに対し、アンリに代わってエリックが控えめに答えた。このメンバーの中でアンリの次に魔法に詳しいのがエリックだということは、全員の共通認識になっている。生活魔法と戦闘魔法の区別のことも、エリックならおそらくアンリが説明したくらいの内容まで知っていただろう。


「そういえば、マリアやエリックは魔法を使えないのか? 貴族には入学前から使える人も多いって聞いたけど」


 昨夜のウィルの話を思い出してアンリが尋ねると、マリアは笑いながら肩をすくめた。


「一応教わったけど、私は全然だめなの。適性ないんじゃないかって疑うくらい! 卒業までに、ちょっとでも使えるようになるといいなあ」


「僕も、同じようなもので……」


「ふうん、そうなのか」


 魔法への適性の有無は、魔法使用に必要な魔力を体内に蓄えることができるかどうかで決まる。これは生まれつきのもので、ほとんどの場合は幼少期に適性検査を受ける。


 さらに蓄えることのできる魔力量を入学検査の際に調べたうえで、魔法士科の中等科学園に入学するのだ。無事に入学検査を通った二人に、魔法への適性がないわけがない。


 ただし、ごくまれに、魔力の蓄積はできるが放出ができないという人がいる。そういう人は、いくら訓練を積んだところで、魔法を使うことはできない。つまり、魔法に適性がないのとほとんど同じになってしまうのだ。


(マリアは魔力の放出に難があるタイプかもしれない。でも、エリックは違うな……)


 二人の体内の魔力の流れを感じ取ったアンリはそう推察したが、もちろん言葉には出さない。代わりに三人に笑顔を向けた。


「ま、俺たちまだ誰も魔法を使えないんだし。一緒にがんばろう」


 そうして四人で穏やかな昼休みを過ごしていたところに、上からぼんっと五人分の昼食のトレイが降ってきた。アンリたち四人の食事のトレイの上で、ぴたりと止まる。


「ちょっとそこの方々。邪魔よ、退いてくださる?」


 アンリたち四人が振り向いた先にいたのは、ブロンドの髪をたなびかせた一組のアイラ・マグネシオンと、その取り巻きと見える四人の生徒たちだった。


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