助言者
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ここは、死を可視化した大地だ。野は枯れ果て、生物は朽ち果て、水は消え果てた終わりだ。色は空も大地さえも禍津に染まり。崩落し大きく空いた穴では、今でもおさまることの無く聞こえる、奇々怪々な呻き声。
リラーラがここに来た理由は一つだ。助言者であり預言者である悪魔に会う為。
とは言え、預言者と言っても明白なものが見えるわけではない。断片的に薄ぼんやりと浮かぶ程度だと、彼──マーリン=エスペダは言っていた。
確かに百発百中、全てが的中した訳ではないが。まるで──そう、まるで正夢を見た様な感覚に陥る事は多々あった。つまり、彼の能力、先見の明は信用に足りうるものである。
故にリラーラは、マーリンのすきな肉を片手にたった一件しかない古びた家屋の前に立っていた。
立て付けの悪い扉が軋み、甲高い音と共に開かれ、リラーラはメシッと床を鳴らしながら薄暗い部屋の中へと足を踏み入れる。
隙間から砂がはいりこみ、床はザラっとしているし隙間風が止むことなく部屋を忙しなくさせる。
到底、落ち着く事の出来ない室内で、彼は寝ていた。それも、ベットやソファーではなく机の上で蹲るように、ゆっくりと肺を膨らませスヤスヤと穏やかに。
「本当、相変わらず、色々な所で寝れるな」
彼を畏れる者は多いい。異形の種だとか。神に見捨てられた者だとか。様々な噂は巷を徘徊する。だが確かに──彼は人でもなければエルフとも言い難い容姿をしているのも確かだ。見下ろし見つめる先に居る眠ったままの彼は、背丈は一五〇センチと小さいが。
頭のてっぺんから、分かれるように黒と銀の髪色。おカッパ頭が幼さを演出しているが、実年齢はまったく謎だ。
耳も片側が長く、片側は短い。目も、黒と緑色をしている。
服装は、巫女服と呼ばれるものを纏い、手首には数珠を身につけていた。マーリン曰く“妾は人間とエルフとのかけあわせ。つまり失敗作”だと言っていたが、実の所は不明である。
リラーラはマーリンの事を起こそうとせず、ヤレヤレとため息を吐き通り過ぎた。
向かった先は、使った形跡のない(リラーラが以前来てから)台所に立つと慣れたようにフライパンを手に取り熱し始める。
「マーリンは俺が来ていない間、飯をちゃんと食べているのか?」
見た目は細いし、なにより、水も使った気配がない。付き合って日が浅い訳じゃないってのもあり、些か心配ではある。
香辛料を振り撒き。肉に程よい焼き目がついた頃──
「なんぞな、この懐かしい匂いは」
「長い眠りから覚めたか?マーリン」
机を見れば、寝癖が爆発しているマーリンが体を起こし鼻を突き出していた。まだ微睡みの中に居るのか、多少ポアポアしている様子ではあるが──
「最初から目覚めていたわ。たわけ」
全くの嘘である。なので、話を聞き流しつつリラーラは皿に肉を盛り付けながら口を開く。
「まあ、目覚めていた。のではなく、見ていた。なら、信憑性があったんじゃないか?」
「あ……やっちまったじゃないか。妾とした事が……」
「はは。相変わらず詰めが甘いな。──ほら、お前が好きな肉だ……って、涎を拭け涎を」
「失敬失敬。では改めて──頂きます!!」




