フィーラ
読んでいただきありがとうございます。ただいま1週間に1度の更新なってしまい申し訳ないです。まだ、話は続きますのでどうか、見捨てずお願いします
扉の先は薄暗く。そして無機質な空間が広がっている。空気は冷たく。時折響くのは歯車が回るような機械音。
慣れたように進み、先にある扉の前に辿り着くなりボタンを押した。
──チンッ。
少し高い音が響くのと同時に扉が開く。すると小さい部屋が姿を現し、リラーラは中へと足を運んだ。
これも知恵と知識の元で作ったエレベーターと呼ばれるものだ。リラーラはエレベーターに乗り、フィーラが待つ 一五階へと向かう。
「この足音は、リラーラね!?」と、あどけなさが残った声音が踊ったのは、リラーラがフィーラの待つ部屋の扉を開けて数歩歩いた瞬間だった。
だが、嬉しそうな声を聞き彼女を見たリラーラの感情は、きっと彼女とは正反対のものだ。
──ここは地獄だ。そう思わずには居られない。
白髪をした細身のフィーラは、時が止まったかのような幼い容姿をしている。リラーラと同じく七〇年は生きているはずなのに。リラーラに比べ、身長も顔立ちも全てが子供じみている。かのようなは、真っ白なドレスを着。頭には黄金と宝玉出できた冠を被り。指や首には様々な装飾が施されている。だが決して着こなしているわけでわない。
着せ替え人形と言う喩えが正しいだろうか。彼女は、王という威厳や立場を民に知らしめる為の物となっている。者ではなく物に。それでも笑顔を絶やさないのは、根からフィーラは優しいのだろう。
だからこそ──
「フィーラ様。お目が見えないのに、無理に立ち上がらないでください」
リラーラは、立膝をつき頭を下げてそう言った。
民達を幸せにさせる為、身を犠牲にしたのだろう。世界の発展を約束した知恵を授ける代わりに、失った視力。
それはさながら呪いだ。発展を約束しながら、その未来を見ることすら叶わないのだから。
しかし、リラーラの忠告を受けても尚──
一番辛いであろうフィーラはにこやかな表情を浮かべるのだ。ここにいる誰よりも明るく優しく、陽向のように暖かく。
「そうです!お召し物が汚れたらどうするのですか。貴女は、国の王。気品がなくては」
玉座の脇に立つ白装飾を身に纏った老爺──グリプス=クラルファは焦った様子を浮かべる。だがリラーラはコイツら賢人達(王の側近とされるもの達。王に助言をしたり、導いたりする役目とされる)が憎くて仕方がなかった。
「お召し物……ねえ?」
膝に添えた手を握り力を込め、小さく囁いた。それは凪いだ風のように弱く小さいものだ。
「何か言ったか?小童」
長い顎髭を撫で付けながら、長い耳をピクリと動かしたグリプスは威圧感を込めた声を発する。
「恐れながら、一つ」
「ほう。言ってみろ、リラーラ」
「フィーラ様を物扱いするのは」
「もう!二人とも、喧嘩はやめてください!泣いちゃいますからね!!」
「何をおっしゃいますか。彼がワタクシと喧嘩なんて出来る立場じゃないですよ。単なる気まぐれ。意見を聞きたかっただけの事です」
「それでも今の言い方は、険がありました!!」
困った表情をしたフィーラは、すかさず間に入って仲裁をし。ヤレヤレとため息をはくグリプスの傍ら、リラーラは自分の身分の違いをかみ締めていた。
賢人と違い、リラーラの立場と言うのは。そう──単なるフィーラのわがままだ。幼馴染のリラーラをそばに置いて欲しいと。
故に、賢人達からは白い目で見られるし。失敗や悪さは=としてフィーラに影響を与えてしまう。
それだけは何としても避けなくてはならない。大切な彼女を心から支えてやる為にも、何としてでもそばに居なくてはならないのだ。
「すみません」
「謝る事なんかないですよ!!所で、我が国の発展はどうですか?リラーラ。皆さん、楽しくにこやかに暮らしていますか?私は、見回りから帰ってきた貴方のお話を聞くのが一番の楽しみなんです!」
椅子に座り膝に肘をつけ、今か今かとフィーラはリラーラを白眼に写す。
「はい。リラーラ様、大陸シュプナの繁栄は今だ衰えを知らず、皆もまた笑顔を絶やさないでおります」
──リラーラは今日もまた、嘘をつく。彼女を守る為、彼女を幸せにする為に。




