家系
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ワルターが統べる領地にて、作戦が成功し。暗中模索が始まっている頃──
もう一つの勢力。即ち、ワールドトリガー達が新たな動きを見せ始めていた。
「ある程度、此処も持ち直したっぽいね~」
「そうだね。下級の冒険者達や、知識の少ない騎士達は数多く亡くなってしまったけれど……それでも──まあ、よく持ち堪えたと言っておこうか」
シーカー達は、あの日以来ひたすらにひたすらに連戦を繰り返していた。しかし、情報網は少なく、得られた東領地の情勢の全把握まではいかず。たった一言、甚大な被害だと言う事だけが明白だった。敵の数も未だ知れず、ただ出来る限りで敵を誘き出し駆逐を繰り返していたのだ。
数にして、凡そ──三〇〇体。
どうにか得た情報を合わせると合計四〇〇体以上の怪物であり化け物を倒した事になるが──
「持ち堪えた?何を言ってる。この領地はこれからが本番だろ」と、柄に手を添えたシーカーが、剣呑な瞳で先を(中央領地の方角)見つめ言った。
今、この領地には守るべき人材が少ない。攻め込まれれば間違いなく陥落するだろう。そして、その先に在るのは王都アヴァロンだ。
リガル=アルフレッドは、最短で最悪な、最も危険視すべき男へと成り果てていた。失敗した。後悔が頭を過ぎる中で、シーカーはいま、二つの選択を強いられている。
・このまま攻め込み、中央を落とすか。
・リガルには、ありのままを話し、連合を持ち掛けるか。
「いや、違うな」
「ん? どったの? シーカー」
「王都から、騎士を引き入れしだい中央を落とす」
力を借りるのではなく、力を利用すればいい。もし脅威になりうるなら。飼い主である自分達に牙をむくのなら殺せばいい。一つの勢力として、力を借りるのは民の不安すら煽る事になる。
「それはちょっと、急ぎすぎじゃないかえ?」
「俺もそう思うよ。せっかく、生き残った民達が安堵しているのに。また慌ただしくなんかしたら」
「オイラは、どっちでも構わないけどね~。やるなら殺るし」
慎重を選ぶリザやヒースを横に、ミロクの声は軽い。三者の意見を聞き届けたシーカーは、とある異変に気がついた。
「そうや、アイツはどうした?」
辺りを見渡しながら訊ねると、ミロクは適当な口調で答える。
「アイツ? ぁあ~ヤナク?」
「そうだ」
「知らないなあ~。どっかそこいらの人達でも助けてるんじゃ?一応、騎士様だしさ。と言うかさ? いつ見ても不思議だよね」
しゃがむと興味津々な眼差しを二本の剣に向けた。
「何がだ?」と、少し冷めた視線をミロクに向けると、彼は気にもせず頬杖をついて小首を傾げる。
「ほらほら? シーカーは、二本の剣で二種類の技を使うじゃん? 本来、武技は一種類しか使えない筈なのに」
「何を今更」
「ん~?」
立ち上がり、ミロクはあざとくほくそ笑む。
「いやさ。今回の戦いでは、それが際立ってたからさ。ちょいーと気になってね」
「そうか。俺もよく分からないが──家系だろうな」
「家系? なら、親も」
「いいや」と、シーカーは首を横に振るい、続けて口を開く。
「確かに使えてはいたが微々たるものだった。その中、俺は秀でていたんだ」
「ほ~。んで、どんな家系なの?」
「アーサーだよ。お前も聞いた事があるだろ?」
「アーサーって……もしかして、大蛇を倒した英雄──」
若干声が上擦り、おちゃらけた声に緊張感が宿ったのをシーカーは感じた。だが、驚いた様子を浮かべていたのは、他二名も一緒のようだ。
「ああ。ディグ=ルッデアーサーだよ」
──ディグ=ルッデアーサー。
未だ、魔族に対して人間が戦う力をさほど有してなかった時。神の子とし称えられ、戦神と謳われた英雄だ。二本の剣を扱い、皆を導いた人物である。だが、シーカーにとっては誇りに足る人物ではなかった。それは、あまりにも呆気ない──忠実たる従順たる死だったからだ。故に、話す価値もなく必要もなかった。
シーカーの想いを梅雨と知らないミロクは、尚気楽な声音を発する。
「すっげ~。つーか、羨ましいなあ。オイラも、そんな特質的な力があればな~」と、ミロクが後頭部で手を編み空を見上げている時、ヤナクは中央領地へと足を踏み込んでいた。
「君はそこに居るんだね? リガル」




