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リガル=アルフレッド

読んでいただきありがとうございます

「皆、私語を一旦止めて欲しい!!」


 教会上空にて、力強く凛として。同時に民衆にとっては、親しみ安く、頼もしい声音が轟いた(この街には城がない為、皆が見れるように浮遊している)。その声を聞き届けたであろう住民達は、一斉に顔を仰ぎ空を見つめた。


 家の窓から顔をのぞかせる者や。また、屋根の上に乗り見てる者も居れば、当然地上から見上げている者も居る。数は正確に分からないが一〇〇〇人は、くだらない。しかし、これはエーテラやファルルの人口のごく一部だ(見に来れない住民にも分かるように、サラウンドと言う菱形の魔具を使用しているので、この場に居なくてもリガルの声は届く)。


 皆が静まり返るとリガルに視線が集まった。


 ふう、と短い息を吐き捨てた後に上空に浮遊するジャンヌ・ミネルバ・イザク・ラウンズ達と一度目を合わせて頷く。


 そして──


「皆、聞いて欲しい!! 俺は……ッ」


 心拍数は跳ね上がり、今にも口から飛び出そうな勢いだ。息もつまり苦しく、そして怖い。手は震え、地上に立っていたのなら膝も笑って居ただろう。それ程までに張り詰めた緊張感の中で、リガルが着る服の裾が優しく引っ張られた。


 リガルはこの感覚を知っているし、よく覚えている。何度も何度も救われ、和まされ、心を包み込んでくれた。


 ──アルル、ありがとう。


 胸の中でお礼を言うなり、リガルは拳を強く握り。瞳には、決意が宿る。


「俺は──違うな。本当の自分で話さなきゃダメなんだ。僕は、リガル。リガル=アルフレッド!! この国に戦火を齎した張本人だ。そんなやつの話なんか聞きたくはないかもしれない。けれど、無理は承知でお願いしたいんだ──」


 覚悟をしても若干声は上擦る。情けなく恥ずかしい声だ。リガルには、魅了し夢を見させ、諸人を惹き付ける力はないのかもしれない。カリスマ的、あるいは英雄的素質なんてものは、微塵としてないのかもしれない。いいや、ないのだろう。


 なにせ、皆の上に浮かぶリガルと言う男の本質は、心が弱く仲間に裏切られるのを恐れている臆病者だ。臆病者であるが故に強くあろうとしてきた。


 それを他の誰でもない、リガルが知っている。解っている。だが、それでも。そうだとしても、そんなリガルだからこそ、仲間に裏切られ、大切な家族を奪われた弱者だからこそ、守りたいものがあるのだ。


「僕は──仲間が大切だ!! 仲間が大切に思う者が大事だ!」


「仲間?」


「何を言ってんで? あのお方は」


「不思議な人ね」


「何を言い出すかと思えば、宣戦布告をしておいて──」


「元はと言えば、奴が──」


 素直であり、容赦のない民衆の不満を乗せた声が風が凪、澄んだ空気を震わせる。


「皆が言いたい事も分かる。僕が国に敵対視をしなければ、あなた達は今も平然と悠然と過ごしてきたのでしょう」


「けれど、それは偽りの平和での事だ!! あなた達が何も知らない。いや、知らされていない現実は、真実は、平和とは掛け離れた闇だった!!」


 リガルの手は自然と左胸に位置する服をギュッと掴み、眉をしかめた。自然と感情は高鳴りをみせ、耳鳴りがリガルを襲う。今脳裏に浮かんでいるのは、走馬灯のよう掛けているのは、辛く苦しい中にある優しい思い出達だった。


「皆が笑顔を浮かべられていたのは、確かに努力も実績ゆえの信頼もあったと思う!! けれど、そのきっかけすら与えられずに、死んで行った者達を思い出して欲しい」


「確かに赤の他人であり、関わりもなければ関係のない者達のはなしだろう。だからと言って、彼等が愉悦や欲望の為に命を奪われるなんてあってはならない! 確かに、権利等の優劣は生まれるだろう。けれど、命の重さに優劣があってはならない。皆が平等でなくてはならないんだ!!」


 リガルの言葉は本物だった。紙に書き、暗記をしていた羅列なんかは、大衆を目の前にした時、既に消しどんでいたからだ。故に熱が篭もり、我武者羅になり、ただそれでも仲間を思いやる気持ちだけは尊重し、演説を続けた。


 初めは、隣同士で顔色を伺う様子を浮かべていた者や。罵り混じりの嫌味を叫んでいた者も、いつの間にか静寂を作りリガルを見つめている。


 それだけではない。微かではあるが、リガルの気持ちに賛同し始めるものもい始めた。皆の変化が訪れたのは、リガルが丁度、元領主であり今は亡きイグムット及び奴隷制度の話をし始めた頃。


「熱狂する大衆のみが操縦可能とは、よく言ったものね」と、ジャンヌが言葉を漏らした時には既に、大半の民が拳を天に突き上げていた。


「だから、僕はこの世界を。弱き者が居場所を奪われ、権利を与えられない世界を変えたい。大切な仲間を見棄てなければならない現実がただ当たり前のようにある今の世を壊したい。その為に僕は剣を取る!! 真の平和を掴み取るために、偽りで塗りつぶされた外観を。かたられ続けた平和を消し去る時だ!」

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