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出来ること

読んでいただきありがとうございます

「に、しても……これは何が起きたんだろうかね」


「突然変異? いやいや、そんな甘っちょろいもんじゃないさね。これは」


「だねぇ。無知だったのか、無謀だったのか。魔族に使ったって事だね~」と、ヤナクを置き去りに三人が腑に落ちた様子を見せたのは、シーカーが二体を相手にしてから数分が過ぎてからだった。


 目の前には触手を至る所から生やし、蠢かせている獣類の魔族が涎を地面に垂らしている。数にして二〇体は、くだらない。


「全く。お前等、魔族相手に出方を伺ってどうする」


 背後から聞こえた力強く凛とした声に、ヤナクが振り返ると銀髪を靡かせたシーカーが立っていた。


「それは?」


 ヒースが問い掛け、皆の視線が一点に集まる。彼の問いを聞いたシーカーは、紫紺の瞳に一度ソレを写し口を開く。


「これか? これは、ヤツらの体内から出てきた魔石だ」


 紫色に染まった魔石を二つ握るシーカーを見て、ミロクは大して驚きもせず──


「なんだ。余裕そ~だね?」


「ああ。どうやら、量産させる為に新葉を砕き溶かし使ったのだろうな。ともあれ、魔族が相手なら俺達が負ける事はない。赤の竜の力を取り入れた我々なら、な」


 そう言うと、シーカーは魔石を空に投げ粉微塵に切り刻み粉砕した。煌びやかに舞う破片は、シーカーの内から溢れ出る覇気により吹き飛ぶ。


「コイツらの魔石は特定の箇所にない。切り刻むか破壊するしか倒す方法がないようだ」


 闘争本能と呼ぶにふさわしい威圧感をヤナクがヒシヒシと感じている中、シーカーは静水の如く滑らかな声音を発した。


「では、やるぞ」


 言葉を置き去りに、付与魔法すら受けていないシーカーは駆ける。目にも止まらぬ速さは、ヤナクの視界に一本の線を残し──


「こりゃあ、俺達の出番ないんじゃない??」


 ミロクのそんな現実味もない言葉が鼓膜を掠めた矢先、激しい地鳴りと共に空気が震えた。と、思えば火山が噴火したかの如く、魔族の群れは上空高くに吹き飛んだ。


「お~お~こりゃまた、盛大に」


 見上げるミロクの肩をヒースは叩く。


「ほらほら。やるよ?」


 シャナクにより付与された浮遊魔法ヴィチロークで、ヒースは宙に浮かび。リザは杖を地に刺し、魔力を高め。ミロクは、いやいやと弓を引き矢を放った。


 皆が皆、抜群のチームワークを以て敵を駆逐している中、後衛且つ回復担当のシャナクとは別に。ヤナクは、完璧に取り残されていた。


「何をしてるんさね」


「え、っと。いや、僕に何が出来るのだろうか、と」


「何を今更言ってるんさね。こんな所で迷っているようじゃ、お前さんの“友”なんざ救えるはずないさ。浮き足立たず、己の力量を弁え先を見据えればいいさね」


 ──浮き足立たず、己の力量を弁え先を見据える。


 リザの言葉を心の中で繰り返し唱え、柄を握る手に力を込めた。ヤナクは、他者に比べれば圧倒的に弱い。そんな自分に出来ること。激闘を繰り広げる三人のように、纏めて相手にする事は到底不可能だ。


 ならば──


「シャナクさん、僕に加速魔法アクセレレイションをお願いします」


加速魔法アクセレレイションを付与してどうするんだい?単騎でどうこう出来る問題じゃ……」


 憂いるシャナクを横目にヤナクは、首を振るった。


「僕にはコレがありますから」


 徐に自分の目を指さした。


「目?」


 シャナクが問う横で、リザが成程、と頷く。その表情は納得のいった様子を浮かべており、それをみたヤナクも気持ち的に安心を覚えた。


 ふう、と短い息を吐き捨て──


「はい。僕の固有スキル【心眼しんがん】ですよ」


「心眼で何を?」


「剣技が劣るなら、一撃で急所を突けばいいんです。相手が魔石なら、僕は何処にあろうが見つけ出すことができるのだから」


「なるほど。その手があったんだね」


「はい。だからこそ、敵が構える前に懐に入る必要があるんです」


 ヤナクの決意と覚悟のやどった信念のある声は、轟く音を捩じ伏せ鼓膜を震わせた。


「分かった。でも、無理はしないでおくれよ。出来る限りのサポートはするから」


「はい。ありがとうございます」


神魔装テオロギア・アムス超腕力向上ハイ・アウダース加速魔法アクセレレイション超持続治癒魔法ハイ・リジェネ


 色彩鮮やかなエフェクトがヤナクの体を纏う。と、同時に漲る力を感じ、ヤナクの緊張した表情は綻んだ。


「これなら、僕でも──ッ!!」


 心眼を使い、敵内部にある魔石を見つけ出し、剣を水平に構えヤナクは脱兎する。けたましい音が甲高く鳴る中で一瞬のうちに間合いに辿り着いた。


「ここだぁぁあ!!」


 気合いを乗せた咆哮を上げた時、禍々しくも淀んだ真っ黒い瞳と視線が交わる。近寄って分かる、今までの物とは程遠い強さを持った怪物であり化け物だ。


 覚悟がなければ当然、臆し背を向け逃げていただろう。それ程までに、数百センチと迫る魔族は驚異的だ。けれど、ヤナク以上の敵を相手にしているワールドトリガーが居るのだ。自分だけが、逃げ腰でいいはずがない。


「くらいやがれぇ!!」


 魔族よりも先に戦闘態勢であったヤナクが、魔族が牙をむき出す前に、正義を宿した鋭い突きを以て狼型魔族の横腹を貫いた。


「ギャッ……ッ!?」


「よし、まずは一匹!!」


 次の狙いを定め、ヤナクが駆けている頃──新帝国では今正にリガルが民衆へ演説をする所であった。


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