秩序
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ミネルバから様々な話を聞いてから、三日が過ぎた。その間、ミネルバの翼には不可視化魔法を付与し街を歩けるようにした。
同様にミネルバの右腕である、ガラックや他数十名にも付与をしている(彼らも転生済み)。この翼は、以前の触手同様に形状を変化出来ることから見えざる手と名付けた。
ミネルバ達が街に行ける事により、恐怖や不安の色が濃かった街の住民達にも心にゆとりが出来たのか、若干てはあるが。疲労の合間に笑顔が生まれているように見える。
「今日は歴史が動く大事な日──じゃのっ?」と、白い椅子に腰掛けたガラックは、顎髭を撫で付けながら口にした。
外に儲けた会談の場。ここには今、一〇〇名ほどの人間が集まっている。円卓が置かれ、囲うように中央領地の代表格である人物。リガル側の代表格が椅子に座っていた(服装は、皆が鎧を纏うのではなく、支給された白を基調とした正装できている)。
ミネルバ側──
・ミネルバ=アイル。
・ガラック=ディス。
・アディル=ファズ。
・ガルーダ=シュタイン。
リガル側──
・リガル=アルフレッド。
・ジャンヌ。
・ラウンズ。
・ディグ=ルッデアーサー。
・イザク=シュタイン。
・ミューレ=ミレッタ。
進行役として。
ヒュンズとビーズ。
書記にアルルでギルドの受付をしていた女性を二名。
計一五名。このメンバーで、帝国の法を決めていく。周りの騎士や魔族は警護にあたり、上空での守りも完璧だ。
「では、まず初めに」と、ビーズは皆に紙を渡していく。
そこには、各々が必要だと思うことが纏められ記されていた。これらを今から一つ一つ議題として話し合うのだ。
「それでは、質疑応答を始めてくれ」
ビーズが言うなり、すぐさまに動きがあった。
「一つ良いかね?」
手を挙げたのは、気品溢れる白いスーツ姿に身を包んだ貴族代表のガルーダ=シュタインだった。彼は目の前に座るイザクを、蔑視するような視線で穿ちながら立ち上がる。
育ちがとてもいいのか、茶髪は綺麗に整えられ、スーツもシワもホコリ一つない。
「ここに、奴隷廃止とあるが……それは何故かね? 国には奴隷が必要だと思うが。それに、貴族等の立場を無くすとは……まぁ、これに関しちゃ誰が書いたか──検討はつくがね」
「じゃあ、この案を出した二名はその理由を述べてくれ」
ヒュンズの言葉に反応し立ち上がったのは、ミューレとイザクだ。
「じゃあ、まずはオレからいいかな?」
ガルーダを目を細めて睨み付けるミューレの横に立つイザクは、非常に落ち着いた面持ちと声音で問う。
「ああ、構わない」
「じゃあ、言わせてもらいますね。オレは貴族と言う家系に意味を見いだせない。と、言うのも、産まれた時に地位が決まっている、そんな事をしていちゃ発展なんか挑めないし望めない」
「何を言うかと思えば。我々が居るからこそ、国が安泰しているのではないか?」
「安泰? ならば、貴方は今まで何をしてきましたか?ガルーダ=シュタイン。いや、我が父よ」
「フン」と、鼻を鳴らし──
「騎士として戦場に出て居るではないか」
「確かに出ていますが、そこに貴方は居ない。良いですか?確かに、ミネルバ卿達のように、領地の為、身を削ってる者もいます。だが、どうですか?エーテラでの事を思い出してください」
その問い掛けに、皆が視線を伏せる。
「分かっているはずです。武力を持たない貴族達が何をしたか。我が身可愛さに、騎士達を多く利用し、安全圏である教会の地下へ逃げていた事を。産まれた時、予め決まっていた権力を振るうのがどれほどまでに怠惰で傲慢な事か。オレはそれが許せない」
「はん。何を言うかと思えばそんな事か」
「そんな事? ちょっと、何を言ってやがるんスか? こいつは。ぶち殺──」
「ミューレ。今はオレの質疑応答だよ。感情的になっては駄目」と、声を震わし怒りを露呈させるミューレをイザクは宥め落ち着かせた。
「そ~ッスよね。申し訳なかッたッス」
ミューレの反省も大して感じれない、棘のある謝罪に頷いたイザクは、間髪入れずに口を開いた。
「土地を持った貴族は、土地を商人などに貸し与え、必要以上の金貨を渡されているんだ」
「故に、オレは冒険者や貴族を必要としない新しい機関が必要だと考えていた」
「そんな事が認められると?我々が居なくて困るのはお前達だぞ。誰が財政を回してると思っている? 私達が金貨を多く取得し、それをまた国へ使うからこそ何不自由なく回るのではないか」
「回っているのは、貴方の身の回りだけですよね。それに、何か勘違いしていませんか?」
「何をだ?」
「中央領地はもはや、ガリウスが治める土地ではない。つまり、キュース金貨は意味を成さない。全てがゼロから始まるんですよ」




