決め事
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食事を終え、リガルはアヴァロンでの事や、自分の生い立ちなどを飾る事なく。虚飾で欺く事なく、全てを語った。
「なるほど、な。私が驚いたのは、仮面の悪魔と呼ばれる存在だ。てっきり人だと思っていたが……そうではないのか?」
椅子に座っているミネルバが、素朴に問いかけるとリガルは小首を傾げた。
「どう……なんでしょうか? 初めて見た時、彼? 彼女? からは、不思議な感じがしましたが」
「そうか。だが、ワールドトリガーの連中は、その、仮面の悪魔とやらに絶対的な信頼を置いている事だけは間違いないな。あいつは本当に人間か?」
リガルも、ミネルバから話を聞いていた為に、何となくではあるが腑には落ちていた。
──悪魔の仮面・タナス。
一体、彼は何を企んでいるのだろうか。何をさせようとしているのだろうか。
様々な事を考えていれば、自然と眉頭にシワがよる。
「はははっ。お前は、母と父によく似ているな。私と碁盤遊びをしていた時、お前の父・ダレスもそんな表情をしていたさ」
「……ッ!?」
ミネルバの明るい声に、リガルの目はまん丸と開き口はポカリと開いた。彼女の親しみが篭った声は、それほどまでにリガルの虚を衝いたのだ。
「ワイズ。お前の言った通りの子、みたいなようだよ。ならば、私が母の代わりになるのも悪くはない──か」
ボソッ、聞き取れない言葉を発した後に、ミネルバは飲み物を口に含み飲み込み口を開いた。
「ならば、聞かせよう。お前の父親と母親と過した日々を──」
ミネルバの語る話は、まるで独り言のように。思い出に浸るように。そんな、穏やかであり、優しいものであり、少し儚さを帯びたものだった。
「それで」と、一通りの話を終えた後に、ミネルバは落ち着いた面持ちで口を開く。
「この領地をどうするつもりなんだ?」
リガルは、教会に居る時や修行をしている時に色々と考えていた事がある。
「此処を帝国にしたい」
「帝国……か。王に反旗を翻し、仇なす勢力。そうなってしまえば、もう後には引けないぞ? より多くの血が流れ、死が待っている。綺麗事じゃ」
「分かっています。ですが、偽りの平和では幸せなんかやって来ない。それならば、俺は悪人になったって構わないですよ」
「大衆とは、真実なんかどうでも良く。より大きい権力を真実だと思いたがる弱いきいきものだ」
「確かに。だから俺が発信する言葉なんか届かないでしょうね」
「だけど、始めたいのです。ここから新たな秩序と法と共に、平等である平和を」
「そうか」と、リガルの真剣な眼差しにあてられたミネルバは、一度目を瞑り頷く。
「ええ」
相槌を打つのと同時に、ミネルバは再び口を開いた。
「ならば、我等は先程お前達が提示した撤退をすると言う事を辞退させてもらう」
「え?」
「だから、我等も一緒に戦おう。全員とは言えないかもしれないが、それでも戦力にはなるだろう?それにどの道、私はこんなナリだしな」
「いいのですね?」
「構わないさ。だか、ちゃんと手続きは踏んでもらいたい。私達が守っていた領地の民を守る為にも」
「手続き、ですか?」
「ああ」
ミネルバが長々と説明した事は、いくつかあった。
・宮廷に必ず信書を送る事。
・民達が安全に避難できる場所の確保。
・最後通牒は、必ず行う事。
・民達の幸せを第一に考える事。
等など、どれもが人徳に沿った道理あるものだった。故に、拒む必要もないリガルは、数秒と間を開けずに頷く。
「分かりました」
「あとは、ジャンヌとやら達を踏まえて話すのがいいのだろ?この領地の在り方を決める法を作る為にも」
「そう、ですね。今日はこの辺で。明日から、街の修繕など、忙しくなりますし」
「そうだな。そうしよう。ありがとう、リガル。こんな形でなければ、私は君と言葉ではなく刃を交えていたのだろうな」
立ち上がるなり、ローブを羽織ったミネルバは手を差し出した。
「気にしないでください。これからは、良き仲間として、僕を──俺を支えてください」
「ああ。あと、一ついいかな?」
「何ですか?」
「なぜ、お前は時々“僕”と言いかける?」
その問いに恥ずかしくなったリガルは、解いた手をそのまま鼻に持っていき頭をポリポリかいた。
「昔の弱かった自分と──決別したかったから……ですかね?」
「ははっ。そうか」と、ミネルバは吃るリガルの肩に手を添えて優しい眼差しを向けた。
「多分、お前は優しい皇帝になれるさ」




