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出逢い

 リガルがいた街、ファルルを出れば広大な平野が広がっている。吹き付ける微風は優しく、鼻腔を満たす自然の匂いは心地が良い。


 リガルは大きく深呼吸をすると、裾にしまいこんだ地図を広げた。方角を確認しつつ、体の向きを変えて風景を地図と照らし合わせる。


「んと、後ろの街道が商業街レクルトに繋がるものでそっちが、港町ヤクズに繋がるもんだから、やっぱりコッチであってるな」


 ぶつくさと独り言を垂れて、確信を得られたのでリガルは杖の先端を足元に翳す。


「ヴィチローク」


 浮遊魔法を唱えると、白いエフェクトがかかり、リガルの足は宙へと浮かぶ。高さが二十メートル程になり、見下ろした大地は美しかった。


 リガルは自然の神秘を噛み締めつつ、体制を大地と並行にして魔力を足の裏に込め一気に──飛んだ。


 初めのうちは、風を切る音のみが鼓膜いっぱいに広がり、全てが線に見える程の速さで飛んでいた。だが、よくよく考えて、通り過ぎたら話にならないと思い至り、今は情景じょうけいを楽しみながら飛んでいる。


「そこっぽいな」


 直立になり、杖を足元に翳すと白く輝きゆっくりと地上にリガルは降り始める。ものの数秒で、柔らかい芝生に足を着地させ目の前の湖に向けて歩き出した。


「ははは、今日の餌は威勢がいいなあ?」


「ははは、ちげぇねぇ!」


 男性達の声が、湖に近づくにつれて聞こえてきた。釣りでもしているのだろうか。云々考えながら、歩いていると、湖の中央で何かが激しく水しぶきをあげている。


「助けて! 誰かッ! 助けッ!」


 目を凝らすと、首に浮き輪を付けられた獣人が助けをこいながらジタバタと動き回っている。


 溺れているのかと思い、駆け足で浜辺に向かった。


「男たちは、溺れてるのに助けもしないのかよ」


 確かに、エルフや獣人、人間の間にはあまり交流はない。故に他人行儀なのは否めない。しかし、目の前で助けを求めているなら──


「は?」


 しかし、リガルの想いが無意味だと知ったのは、湖を指さし酒を飲みながら笑う男達(冒険者)を見た後の事だった。


 リガルは、拳を強く握ると男達に向かって平坦な声で言う。


「おっさん達、四人束になって何をやってんだよ」


 椅子に座り、竿を持った一人がリガルの声に反応を示した。


「あ? なんだ、ガキンチョか」


 握った竿を隣の大柄な男に渡すと、耳をほじりながら近寄る。


「見たら分かんだろ? 坊主」


 身長は二メートル程あるのか、百七十センチしかないリガルをゲップ混じりに見下している。

 リガルは、目を細め冷えきった眼光で穿ち口を開いた。


「見てわかんのは、お前が汚らしいってことぐらいだよ。おっさん」


「なんだ? 白魔道士が前衛職の俺らに喧嘩売ってんのかよ?」


 背負っていた片手斧掴むと、肩に載せる。しかし、リガルに職とかは興味がない。唯一目がいったのは、鎧の胸元で揺れているタグだ。


「銀等級か」


「そうだぜ、坊主みたいな白等級が喧嘩売ったら駄目な相手だ。分かったら、早く家に帰んな」


「ちょうどいいや。俺の力がどれぐらいか試したいし」


「は? 力? 何を意味わからねぇ」


「ヴィチローク」


 唱えて、リガルは湖中央へ飛ぶと獣人を引っ張り上げる。


 その際、竿へ繋がる長い紐は断ち切った。


「あ、ありがとうございます……」と、獣人は涙目で、小さく言葉を漏らした。リガルはあまり刺激しないように、ゆっくりと喋る。


「お礼はいいから。後で、何があったか聞かせてくれ」


「は、はい」


「じゃ、陸に着いたら茂みで身を隠してるんだ。いいね?」


「貴方様は、何を……」


「アイツらに罰を執行する」


 陸につくなり、獣人の女性は茂みに隠れた。


「おい、お前何考えてんだよ」


 目を血走らせて、怒りをあらわにした四人がリガルを囲う。


 目付きが悪い奴や、小太りや、でかいヤツら、全員が剣やら斧やら、凶器を手に携えていた。


 ──とてもお怒りのようだ。


「なにって、お前らをぶちのめす事しか考えてねぇよ」


「ははは! 寝言は寝ていえや!」


 矢先、一人の目付きが悪い男が剣を振りかざす。


 刹那──


「ハイプロテクション」


 リガルの体には、高純度な物理防御のオーラが纏う。


「安心しろ、峰打ちだ」


 嘲笑う男に、リガルはノーガードの姿勢を保ったまま見上げて、嘲笑い返す。


「安心しろよ、おっさん。峰打ちだろうがなんだろーが微塵もダメージは食らってねぇからよ」

読んでいただきありがとうございます。

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