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 中央領地ダース及びグローリーにて、様々な動きがある中で、王都アヴァロンでもリガルの噂は静かに広まっていた。


「ふ~ん。コレにねぇ~。本当に、国へ対して刃向かってくるなんて。プククク」と、円卓の上に置かれたブラックキューブを指先で転がし、飽き飽きした様子を浮かべるミクロは平坦に口走る。


「なにやら、ミネルバは自分の騎士団をもって迎え撃つつもりらしいけれど」


「本当に、大戦になっちゃってるじゃん。と言うか、万体位の騎士を動かしての迎撃って、どれだけ危険視してるのさ?」


「相手の数も分からないんじゃ、恐れるのも無理はないさね。仮にもワールドトリガーに勝った男なんだから。──で、どうするさね。わっち達も向かうかえ? ダースに」


 リザが淫靡な声音を乗せた虚ろな瞳でシーカーを見ると、椅子に座るシーカーは目を瞑ったまま口を開いた。


「いんや。我々が本来、危険視する相手はリガルではない。お前達も分かっているだろ?」


「そうだね。本来、俺達の相手は竜と契約を結んでいる他国の連中だもの」


「ヒースの言う通りだ。何のためにエルフや獣人達が身を潜めていた島を占領したと思っている」


 嘗て、タナス(赤竜の疑似人格)の情報でシーカー達はエルフや獣人達が孤島に身を潜めている事を知った。彼等が狙っているのは、間違いなくエインフェやアヴァロンの資源。それは、エルフが住んでいた島、リバーバルで見つけた資料で分かっている。


「世界の覇権を巡った大戦ラグナロク……ねぇ。過去のいくさが再び起こるだなんて、にわかに信じられないさね」


 頬杖をついてリザは不満げに口にした。それをみたヒースが諭すような優しい口ぶりで言う。


「でも実際過去には他種族同士の争いは行われていた」


「ぁあ、それなら読んだことあるな~。人類史最古の英雄譚だっけかな?凄かったなあ。実話だったのなら、ラウンズって女性は間違いなく最強だよね」


 ブラックキューブを器用に指先の上で転がすミクロの緊張感が微塵と無い声。シーカーは、軽く目を細めて睨みつけた。


「おっ、こわっ」と、ブラックキューブを軽く真上に投げ、キャッチしたミクロは半笑い気味に言う。彼はいつもそうだ。ミクロと言う人物は、緊張感がなくお調子者で、話の重要さを考えない。独断専行が目立つ言わば棘だ。


「とりあえず俺達は、外に目を向けなくてはならない。他国に呑み込まれては、人類が絶滅する可能性だってあるのだから」


「でも厄介さね」


「エルフと獣人の竜が持つ力──かい?」


 ヒースの問いにリザは一呼吸置いて頷いた。


「魔石から転生させる力とか、わっち達が守っている竜なんかよりも、よっぽど」


「だが、それは獣人やエルフ達に託されているものだ。託された者を殺してしまえば意味がない」


「つまり、他の竜達はどうなってるってこと?」


「竜の力は人から人に引き継がれる」


「一家相伝ってやつ?」


「そうだ。まあ、攻め落とした感じを見ると、先遣隊には力を扱えるものがいなかったがな」


 シーカーの話を腕を組み、腰掛けに寄りかかりミクロは言う。


「なるほどねぇ~。つまり、その血を絶せば力は一気に衰退するってことか」


「だね。でも確か、リガルの所にも獣人がいたのでしょ?」


「あ! そ~だよね?」


「居たが、タナスが言うにはなんの力もないとのことだ。脅威にはなりえないだろ」


「ならいいのだけれど。ダースの方は大丈夫かね?」


 ヒースの心配にシーカーは、鼻で笑う。


「なんの為にリガルへ注目を浴びせたと思っている。リガル単体ごときに対処出来ぬ騎士など、役に立つはずがない」


 シーカーの眼中には、リガルよりも他国が写っている。なんの為にありとあらゆる者を犠牲にしてきたと思っているのだ、と。ロストの住民と言う恐怖心を植え込んだり、秘密を知った冒険者を捕らえたり貴族や冒険者を見せしめに処刑したり。


 全てはこの国を守る為だ。綺麗事だけでは救えぬ事実を知ってるからこそ、大勢を救う為に少数は切り取ってきた。


 ──必要な者は、国に楯突くものではなく国に騙されるものだ。


 偽りの平和を真実だと思い込む民衆ほど、熱狂させやすい者はいない。


 シーカーは一呼吸置いて口を開く。


「もし、リガルの叛逆が他国に知れ渡っていたとしたら、機に乗じる可能性も──」


 刹那、扉が一人の騎士によって開け放された。


「なんだ? ヤナク。今は会議中だぞ」


 シーカーは膝に手を付き、息を荒らげたヤナクを見て冷淡に口を開いた。


「申し訳ございません。伝令です。謎の船が数隻海上に!」


「噂をすればなんとやら、さね」


「ふあ~。久々の殺しかあ! 腕がなるってやつだ!」


「殺しを楽しもうとするなよな、ミクロ」


 椅子を引き立ち上がる仲間を目で追った後にシーカーは立ち上がる。


「奴らの好きにはさせたりしない。全てはこの国を守る為に」


「「守る為に」」


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