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決戦の日はけして遠くはなく

更新遅れてすいません。というか、評価や感想ありがとうございます!まじで嬉しかったです。書いててよかったと思える一瞬でした。

 

「彼等が漸く動き出したわね」と、地図に小石を並べながら、別段苦悩する素振り見せずジャンヌが口走ったのは、子供達を治癒してから二週間が過ぎた頃だ(今は太陽がてっぺんをさし、昼時)。


 このかん、リガルは一切の魔力発動を禁じられ、基礎鍛錬のみをディグやラウンズ達の元で行っていた(持久走・構え・組手等々)。お陰様で全身は、筋肉痛だし痣だらけ。それでも不思議と覚えたのは達成感だった。


 確かに、内頬が奥歯で切れて血反吐が出たこともある。木から落ちて打撲した事も。ディグとの組手で気絶した事も何度もあったのが事実だ。


 しかし、痛みや苦しみ以上にアルル達の支えが優しさが胸を満たしてくれていた。

 故に頑張った──頑張らなきゃダメだという使命感が達成感へと変貌を遂げたのかもしれない。一つ間違いないのは、鍛え続けた肉体は、引き締まって来ていること。


 そんな薄汚れた姿でいるリガルは、机を囲む様に立つ皆(ジャンヌ・イザク・ヒュンズ・ラウンズ・昆虫種)を前に口を開いた。


「もしかして。その石が向こう側の連中か?」


 リガルの問に、小石を細長い骨の指で摘み、地図の上を滑らせ動かしつつジャンヌは頷いた。


「そうよっ」


「これでどれぐらいの人数なの?」


「そうね〜。正確には分からないけれど、一つの小石で──ざっと一〇〇〇人かしら?」


「へ!? 一〇〇人とかじゃなくてか?」


 リガルは、虚を衝かれて声が上擦る。


 ジャンヌが配置した石の量は一個や二個じゃない。五〇個はゆうに超えてそうな数がある。こればかりは驚かずにはいられない。方やリガル側は、この島に置いていく者を除けば一七〇人程度。


 小石一個にすら及ばない少数だ。


「相手は国家よ? そんなちゃっちい数なわけないじゃないッ」と、驚かずにはいられないリガルを真正面に、ジャンヌは声を踊らせた。


「じゃあなんか手があるんだな?」


 島と子供を護る役を担っているヒュンズが、腕を組みながら問う。


「そうね。彼等の話によれば」


「昆虫種、だね?」


 イザクが、ジャンヌの隣に居る一匹の昆虫種をみて答える。


「そう。どうやら、空戦にも備えているようね。これは間違いなく魔道士対策ね」


「魔道士対策?」


 リガルが問うと、ジャンヌは間髪開けずに話を続けた。


「ええ、そうよ。貴方の居場所はバレずも身バレはしているも当然よね?」


「うん」


「なら、一筋縄じゃいかないことぐらい理解するはずよ。なぜなら」


「なぜなら?」


 リガルを見つめるジャンヌをみて、生唾を飲み込む。


「貴方の力は、能力向上をさせたり追加能力を与える事に特化した支援職。少し考えれば分かる話しよっ」



 重厚な鎧を軋ませ、厳しい態度でラウンズは言う。


「ふむ。ならば、ジャンヌはそれ等も見越しているのだな?」


「当たり前よ。加えて言うならば」


 ジャンヌは配置された小石の前に指を置いてゆっくりなぞる。すると、先程まで気難しい表情をしていたイザクが「なるほど」と言葉を漏らした。


「このエーテラの中心に置かれている五個の小石や囲うように置かれた小石の背後に位置どっているのが空戦部隊だね?」


「あら、やっぱり貴方は勘がいいわね」


「ならば──森の前や東と西の領地境等に配置されているのは、歩兵隊や騎兵隊。きっと彼等は勘違いをしてくれてるのだろうね」


「勘違い?」


 リガルは自分が機転の利かない無能だと言うことを心で咎めながらも。それでも、皆に迷惑をかけまいと、恥だと知りながらも問う。


「うん。“君が森等に身を潜めている”と彼等は解をだしたのだろう」


 そう言われもう一度地図を見れば、ああなるほど。と、思わず頷く。リガル達が攻めるのは海上からだ。しかし、素人のリガルが見てもわかるように海沿いの守りはかなり手薄。


 イザクとジャンヌはこの事を言いたいのだろう。


「それに。彼等の言葉によると、空戦部隊は結成されて間もないみたい。これは、地上部隊と比べ動きの遅さで分かる事ね」


「──つまり。堕とすのは容易、だと?」


「ええ。でも、空戦部隊全員を堕とす必要はないわ。優先する必要があるのは──」


 ジャンヌはエーテラに置かれた小石を除外した。


「なるほど。敵本拠地の空戦部隊か」


「ええ。だからリガちゃんは彼等より先に付与魔法解除デスペルを使用する必要があるわ」


「任せてくれ」


「頼もしいわね、私達の主君はッ」


「当たり前だ。何を今更。このラウンズが今から主の話を」


「私たち部隊は──」


「貴様!! それは主に対しての愚弄とみなすぞ!」


「落ち着いて落ち着いて」


 イザクが剣の柄に手を添えたラウンズを宥め、ジャンヌは悪びれた様子なく小石を動かし会話を続けた。

 徐々に今わかる段階での、第一手段として陣形や策が練られてゆく。


 それは数時間にわたり行われ、だが苦ではなく楽しくもあった。そんな中でリガルは地図を見て違和感を覚える。


「この、中央領地ダースから離れた場所にある小石は?」


「ん~。それ?」


 ジャンヌはダースの小石を動かしつつ興味なさげに答える。


不可視化魔法レグルドを付与して移動してる小隊ね。まあ、お偉いさんがリガちゃんを警戒して身を隠しながら移動してるのでしょうね」


「そっか。暗視能力か」


 昆虫種やリッチ系に備わっている能力。


「正解っ。まさか空から監視されてるだなんて思わないでしょうね」


「いいのか?」


「何がかしら?」


「放っといて」


「寧ろ、放っておかなきゃダメ。“約束を破るは義勇に成らず”よ。私達がなきゃいけないのは、民からの信用や熱望なの。ここで殺してしまえば、一気に一生拭えない悪役となってしまうわ」


「なるほど……」


「だから、大丈夫よ。その為に監視を付けているのだから」


「用意周到なんだな」


「策を講じる以上は、やり過ぎってことはないのよ。緻密に正確に的確に──ね」


「ではジャンヌ」


「あら、もうそんな時間かしら?」


「うむ。我々と主は夕暮れの鍛錬に向かわねばならない。後のまとめを頼んでもよいか?」


「構わないわよ。まだ期間はあるもの。今考えた陣形がその日に使われる可能性自体低いわ。気にしないで、リガちゃんの為になってちょうだい」


「そうだね。後はオレ達で考えておくさっ」


 爽やかな声音と共にイザクは微笑みを向けた。


「ありがとう。じゃあラウンズ、宜しく頼む」


「ええ!任せてください!」

読んで頂きありがとうございます

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