仲間たるなら
更新遅れてすいません。Twitterに居るフォロワー(ライバル達)に追い越されすぎてモチベが落ちてましたw w
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リガルが村に辿り着いてみれば、ミューレの発狂が鼓膜を刺激した。
それは、怒りを色濃く宿した殺意の篭った叫び。
「巫山戯やがって巫山戯やがって巫山戯やがってぇ!! 絶対に絶対にぃい! はぁはぁッッ……ッ!」
机を力強く叩き目は血走り、ミューレの表情は今まで見た事もない程に感情的になっている。今の彼女の前では、ラウンズの制止もジャンヌの諭しも意味をなさない。大好きであろう子供達に目をくれず、呼吸荒く罵声を猛けている。結果子供達は、ヒュンズやイザクに抱きつき怯えている。
「どうしたんだこりゃあ」
荒れに荒れているミューレを目の当たりにし、リガルが問うと、ディグが小さい声で耳打ちをした。
「先ほど連れてこられた子供が、あちらの部屋に」
「そうか」
今は話をかけるタイミングではないとリガルは思った。故にイザク達にアイコンタクトをとり、頷くとディグか教えてくれた部屋へと向かう。
数匹の昆虫種がドアの前で待機しており、リガルが来るなり道を開く。静かにドアを開けば二人の少女が苦悶に満ちた表情を浮かべながら、呻き声を漏らしていた。
脚や腕には緑色の液体がかけられていたが、これは昆虫種が吐き出した感染などを防いだり止血や回復を促進させる液体だろう。つまり、彼等が苦しそうな表情を浮かべている原因は液体を拭った先にある。
リガルは、横に置いてあった綺麗な布でまず腕を拭うと何かに布が引っかかる感覚を手のひらを通して感じた。
恐る恐る布をどかしてみれば、細くも丈夫そうな腕の骨が飛び出している。
「なんだよこれ……」
ミューレとは真逆の感情に陥ったリガルが、言葉を漏らすと一人だけ近くにいた昆虫種が腕を振り上げたり鳴いたりと何かを伝えようとする。だが、リガルにそれを知る術がない。一生懸命何かを伝えようとしてくれてる姿を見て、口の端を噛み締めた。
「あやつは見たんだそうじゃ」
部屋の隅から声が聞こえ、リガルがみるとそこにはエヴァが尻尾に顔を乗せていた。
「みたって、何をだ?」
「でかい建物の庭で鎧を着た人達いる中で大人達にになぶられている子供の姿を」
「騎士が見てる前で……子供を?」
「シャァジャァアジュァァア!!」
昆虫種の訴えを聞き届けたエヴァは「うむ」と、相槌を打ってから口を開いた。
「こやつ等はジャンヌの言う通り、中央領地を偵察していたらしいのじゃ」
「ジュアァア !ジャアア!!」
「でかい建物に人影を確認した私は、すぐ様異変に気が付きました。と言っておる」
「ジュァアギャァアギュア!!」
「鎧を着た者達は、大人達が子供をなぶる姿をみて笑ってました」
「つまり、騎士が大人とグルになってッて事か??」
「それは分からぬが、その屋敷に何かがあるのは間違いがないじゃろうな」
「そうか」と、子供に視線を戻して骨の周りを丁寧に拭った。
治癒魔法も今の状態では意味をなさない。飛び出た骨をまずは、限りなく元の状態に戻さなくてはならないのだ。
骨を挟むように右手と左手で細い腕を掴む。だが、リガルの手は震えていた。
いくら高度な治癒魔法を扱えたとしても、医学の知識がない。上手くおさめることが出来る自信がなかった。
「大丈夫か?」
そこへやってきたのは、一番の年長者であるヒュンズだった。彼はギシギシと、床を軋ませて近づき「こりゃまた派手にいったな」と、大して驚く様子もなく。
つまりは、見慣れている様子で口にした。何故だかヒュンズの反応に、緊張を少し解したリガルは、ゆっくり腕を置いて口を開く。
「えっと、ヒュンズさん。骨を腕の中に戻せますか?」
見上げて頼むと、必然的にヒュンズと目が合う。笑顔でもなく、焦った様子もない真顔を見てリガルは生唾を飲み込んだ。
──ゴクリ。
そんな音が鼓膜を掠った刹那、ヒュンズの口元は綻び、優しい笑顔が生まれた。
「まっかしとけ。何十年、冒険者やってると思ってんだよっ」
「では、お願いします。俺が用意できる材料ってありますか?」
「んだな。ちと待てよ?」
腕の裾をたくし上げて、ヒュンズは傷口を布で拭う。手際の良さに圧巻されつつも、吸収できる所はしようと瞬きをなるべく抑えて真剣に見つめた。
「この程度なら、リガルの治癒魔法があれば余裕だな」
額の汗を拭いながらヒュンズは、平坦に言葉を漏らした。きっとこれは独り言なのだろう。だからこそ、感情を込めることなく吐露したに違いない。
リガルは、そんなヒュンズの言動に安堵を覚え始めて強ばった肩が撫でられた。
「確か、コイツらには特性があったよな?」
横で座り見ていたリガルに、ヒュンズは問う。
「昆虫種、ですか?」
「ああ」
「あります。彼等には主に鱗粉を使った幻覚や睡眠。分泌液を使った麻痺や止血があるようです」
「よし。じゃあ、まずはこの子供達を無理やり寝かしつけてくれ」
エヴァが仲介に入り、ヒュンズの指示通りに作業が進む。眠らせ。次は、麻痺の濃度と止血効果を強くした緑色の分泌液を薄く腕や傷口に塗る。最後に指示で連れてきた、ファイヤースライムの炎でナイフを熱し。傷口を広げ、粘着質な音を出しながらも骨をおさめた。
「ふう。後はリガルの出番だな」
「ありがとうございます、ヒュンズさん」
「なあに。俺達は仲間であり家族みたいなもんだろ? 困った時はお互い様さ」
頼りある激が飛び、頷いたリガルは杖を掴み魔法を唱えた。
「超治癒魔法」
淡く暖かい光が子供達を包み、傷口は徐々に塞がり始めた。
「いつ見てもすげぇな、この治癒魔法はよ」
ヒュンズが感動する中で、子供達が癒えていくのを肌身離さず見ている中で、リガルの頭では違う事を考えていた。
それは──
なんも考えずに言ったであろう、ヒュンズの“仲間・家族”という言葉。リガルは彼等に限界突破を使う事を拒んでいた。
もしもの事を想定して。だが、そもそもそれが間違いであり裏切り行為ではないのかと。仲間とは互いに支え信じるものじゃないのかと──
答えを出すのには不思議と思い苦しむこともなかった。リガルは魔法を発動させつつ口を開く。
「俺達は仲間デスよね」
「おう、当たり前だ」
「わかりました。ヒュンズさん、俺は貴方達にも限界突破を使います」




