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宣戦布告

これにて宣戦布告編は終わります。切りもいいので告知します。最新作を連載しました。もし良ければ読んでみてください。

『俺達はこれより先、半年後に大陸エインフェへ王国制圧を目的とした行動へ移る。手始めに中央領地ダースを落とす! だが、安心して欲しい敵意の無いものへ害を与えるつもりは毛頭とない。俺達が敵とするのは、ガリウスに与する騎士及び冒険者。民に関しては、危害を加えるならば容赦しない。彼等が善者であろうがなんだろうが、容赦なく命を奪わせてもらう。大陸にばらまいたブラックキューブは、皆に広め、来る日に備えて頂きたい。俺は──この腐りきった国に今ここに宣戦布告をする!』


「リガル……アルフレッドッ!!」


 ブラックキューブを握った手は震え、込み上げたものは、驚きよりも先に義憤ぎふんだった。同時に、円卓会議を行った時、シーカー達が言っていた事を思い出す。“俺達”。これは、正しく個人ではなく団隊だと言うことを表していた。


 金等級──しかも、国のトップクラスに鎮座するワールドトリガーと同等の力を持つ者による宣戦布告。国を脅かすだけの力があると言うことだろう。


 ミネルバは、ブラックキューブを睨みつけた。


 これで明確なものとなったのだ。リガルが国に敵対する害悪だと言うことが。

 ワイズが気にかける様な男ではなかったと言う事が。


 だが、今ここで冷静さを失う訳にはいかない。半年もの猶予があれば、こちらも色々と準備もできるし捜索も出来る。


 ミネルバは、馬に再び跨りながら考えた。半年と態々宣言するって事は、リガルも準備が万端ではないという事だろう。


 ならば、先に敵拠点を叩けば被害は最小限に抑えられるはずだ。拠点が分からなければ、大軍ではないという事。ならば、と準備のしようは幾らでもある。今は何より、ブラックキューブの内容を聞いたであろう民達が混乱をしている可能性があると言うこと。


「ミネルバ団長、顔色が怖いですよ?」


 馬車がミネルバの居る場所に辿り着くなり、騎士はミネルバを憂いた。


「すまない。領地に戻り次第──副団長達を至急集めてくれるか?」


 馬の轡を引いて、馬を歩かせつつ言うと唐突な申し出に、騎士は隣を歩き不思議そうな様子を浮かべた。


「何かあったんですか?」


「──なに。単なる抜き打ちテストさ。お前達が、隊列などを乱すことなく組めるか、陣形を把握しているか──な」


 おどけて表情を崩してみせる。


 こんな場所でいっても状況が良くなる訳でもない。逆に不安感を煽る事になりかねないだろう。それだけはあってはならない。危機感や緊迫感を持たせるのと、不安感を募らせるのでは士気への影響が天と地の差程にあるのだ。

 民を護ることの前に、民を護る騎士への配慮を欠かしてはならない。


「本当、ミネルバ団長は抜き打ちが好きですね」


 ミネルバは進行方向を見ながら、笑い声をあげた。


「ははっ。まあ、お前達を揶揄うのは楽しいからなっ?」


「酷いお方だっ」と、鼻で笑う騎士の表情は、けしてミネルバに対して反感を持っているものではなかった。


 どちらかと言えば、見守るような、そんな暖かいもの。


「そー言ってくれるな。まあ、今は無事に帰ることを考えておけばいい」と、ミネルバが領地を護る決意を固め、リガルを敵として再認識した一日前──


 リガル達は村の広場(地図を広げていた場所)に集まっていた。



「こんなにブラックキューブをどうしたんだ?」


 机の上には大量のブラックキューブが重なり山になっていた。イザクが何やら持ってきたのは知っていたが、まさかブラックキューブとは。


 イザクは一つを手に取るとリガルの顔の高さまで持ち上げて口を開く。


「宣戦布告を録音し、あちらこちらにばら撒くのさ。被害を最小限に抑える為や、一つの道理としてね」


「なるほど。で、いつばら撒くんだ?」


「それは、一週間前とかでいいんじゃないか?」


 腕を組んでいるヒュンズが思いついたかのように口にした。だが、ジャンヌは首を横に振る。


「イザちゃんの律儀さは素晴らしいわ。流石、騎士様ね。だけど、一週間前と言うのはいただけないわ」


「ジャンヌには考えがあるのか?」


 すると、マジックリッチであるジャンヌは骨だけの手のひらと手のひらを合わせて、声を踊らせた。


「ええ、勿論もちろんよ?」


 この短時間で策を練ったというのだから、尊敬せざるを得ない。状況判断に特化しているジャンヌは、やはり最高の策士なのだろう。

 心の中でリガルが尊敬をしていると、本人であるジャンヌは手のひらに人差し指を添え、皆にみせた。


「六?」


「リガちゃん正解っ。期間は半年」


「長くないか?」


 ヒュンズが問うと、ラウンズが「いや」と口走る。


「戦に於いて、大軍を動かそうとなればそれだけの時間がかかる。しかし、それは俺達ではなく相手方の話……。ジャンヌ、何か考えがあるのだな?」


 態々、相手の準備が整うまで待つってリガルからは考えられない。多勢に無勢と言っていた本人が、多勢をより強固にしようとしてるだ。それならば、準備が整う前に奇襲といった形で行えば被害は少ないはず。


「ええ。もちろん。いいかしら?」


 問いかけに皆が頷いた。


「私達の目的は、王族の力を衰退させ取る事であり、民からの反感を買うことをよしとしないわ。それこそ、イザちゃんが言っていたように筋を通さなくてわね。あともう一つ、未知なものが確かなものになるからよ」


「確かなもの?」


 リガルが問うと、ジャンヌは短く頷いた。


「そう。彼等は半年の期間を提示された事により『彼等はまだ準備が整っていない』『今のうちに準備を万全に』と考えるでしょう。そうなればどうなるかしら?」


「なるほど」


 イザクは腑に落ちた様子で頷いた。


「つまり、相手の戦力が明確になるわけだ」


「なんで明確に?」


 リガルが問うと、イザクは地図を指さした。


「相手は騎士だ。必ず陣形などの演習を行う。つまり、街の外で騎士の大軍は来る日にそなえるだろ?」


「なるほど……」


「加えて、リガちゃんの味方に私達がいるなんて知る由もないのよ。つまり、魔族を偵察に行かせれば怪しまれることなく、盗み見る事が出来るの。あとは簡単よ?それらを踏まえ、有利な陣形を考えればいいのだから」


「だが、そんな上手くいくの?」


「私達より、彼等は大きなものを護らなくてはならない。ならば、全力を投入するものよ。私達の戦力すら分からないのだから」


「そーいう事だね。じゃあリガル?」と、イザクはブラックキューブをリガルの手に載せた。


「始めてくれ、君の宣戦布告を」

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