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私利私欲

読んで頂きありがとうございます。新章は、視点が動くんですが大丈夫ですかね。読みにくいとか、、

 円卓会議が終わり、ミネルバは出口に向かって歩いていた。領主であるイグムット=ヒュースは、先に戻りたいらしく護衛の騎士と共に外へと足早に向かった。


「ミネルバ様」


 聞き慣れてはいないが、聞き覚えのある嗄れた声が鎧の軋む音を掻き分け、ミネルバの鼓膜に届いた。


 立ち止まりふと横を見れば、ガリウスなの執事であるワイズが頭を下げる。


「ああ、ワイズか。どうした?」と、平坦な声音でミネルバは問いかける


「ええ。貴女様は、“アルフレッド”と言う名に聞き覚えがあるのではないのでしょうか」


 頭を上げると、ワイズが物腰の柔らかい口調で訊ねる。ミネルバは「ふむ」と、言葉を漏らした後に──


「私の友であるアルフレッド家か? それとも国家を危険に及ぼした犯罪人のアルフレッドの事か?」


 ダレスとフィリア。

 身分や立場は違えど、ミネルバにとっては戦友であり親友でもあった。故に、彼等が私利私欲の為に国を裏切ったとは俄に信じ難い。だが、それとこれとは関係がないのも事実だ。


 ミネルバが、単調に返答するとワイズは儚げな表情を一瞬見せてから、口を開いた。


「リガル=アルフレッドは、貴女様の知っている者達の子供に御座います」


「なら尚更、私としてはケジメをつけさせる必要があるな」


 剣の柄を掴み、ミネルバは決意をみせる。平和の為に戦っていた親に対する不孝ふこうは、冒涜と何ら変わらない。真正面にいるワイズは、焦る様子もなく穏やかな表情で口を開いた。


「左様でございますか。貴女様も、彼に会えば何かを感じるかもしれません」


「何か? それは、先代のワールドトリガーとしての勘か?」


「いえいえ。わたくしには、貴女様達のような力はございませぬ」


 ゆっくり首を振るうワイズを見て、短く溜息を吐いた。


「はあ、そうか。まあいい。もし私がその、リガルと言うやつに会うことが出来たのなら、この目で言葉で確かめてやる」


 凛とし力強い決意の声音を発するミネルバに対し、ワイズはもう一度ゆっくり頭を下げた。


「ありがとうございます」


「礼には及ばない。最近のワールドトリガーは鼻につく。信用に足らないのなら、自ら確かめるのが早いだけの事だ」


 こうして、ミネルバがワイズに自分の意思を伝えている少し前、中央の領地を治める領主・イグムットは騎士がミネルバから手渡された霊薬をぶんどっていた。


「しかし、団長にやはり」


 長い階段を降り、高級感のある馬車に乗り込もうとしていたイグムットに、臆面した様子で騎士は話をもちかけた。


「だあ、お前煩いな。問題ないったら問題ないんだよ。誰が雇ってると思ってる?」と、冷めきった声と共に騎士を睨みつけた。


 ガリウスに比べれば、このイグムット。体系的には細身であり身嗜みも整っている。民からの支持も取得しており、皆に愛された領主だ。


「すいません。ならば、何に使うかだけでも」


「お前等に、得体の知れないものを使わせるわけにはいかないからだよ」


「え?」


「だから、俺がつてを伝い成分などを調べて、安全なら渡すから」と、言い放ち背を向け、馬車に乗り込む時──

 同時に騎士が、躊躇う事もなく立膝をつき「申し訳ございませんでした」と、謝罪をした時──


 イグムットの表情は、歪んだ笑みを浮かべていた。


「ああ。分かればいい」


 これからの事を考えた時、イグムットは楽しみで仕方がなかったのだ。


 領地ダースには、数多くの奴隷商がある。無論、裏ルートではなく国家公認。と言うのも、項目上は職を失った者や家族を失った者達に生活する手段を与えるといったものだからだ。


 孤児院も、その一つである。


 ──表上は、だが。


 実際は、リバーバルへと奴隷を運び、魔族と戦わせ貴族達を楽しませる事や人体実験、つまりは、安い金額で人体と言う玩具を提供する為の機関でもある。


 これがまたいい商売になるのだ。若い女を買い付ける性異常者や、冒険をする際に逃げる手段として老人を買う冒険者。様々なもの達が私利私欲の為に、奴隷を買う。


 当然、好き好んで孤児院から子供を買い取る大馬鹿者もいるようだが──


 そんな事よりも、この薬を奴隷に使って遊びたい。もしかしたら、新しい金策になる可能性だってあるのだ。


 はやる気持ちを抑え、踊りそうな声を宥めてイグムットは冷淡に声を発する。


「いつまでそこにいる。早く宿へ運べ」


「はっ!!」


 イグムットにとっては、騎士団ビヨンドも玩具でしかない。というか、領地に住む人間は皆が手のひらで踊っている人形だ。


 民衆とは熱狂をさせれば、暗闇から目をそらす生き物。何が真実かを考える事もせずに、イグムットの発言を真に受け慕う。

 実に哀れで滑稽な生き物だ。


「まるでお前らは葡萄酒だ」


 ふかふかなソファーに座り、葡萄酒を舌で転がし喉を鳴らしてゆっくり飲み込む。


「何かおっしゃいましたか?」


 車輪と馬の蹄がリズミカルに音を鳴らす中、たずなを掴む騎士が問いかける。


「いいや、ただ、領地が心配でな」


 心痛し、喉からやっと出たような声音を演じる(・・・)。すると、数秒間が空いて、騎士は憂いる様子で口にした。


「そうですか。不安になるのもわかります」


「──うむ」


「ですが安心してください。我々が必ず領地やイグムット様はお護り致します」


「そうか、それは頼もしい限りだな。そう言えば、いつ戻るんだ?」


「あ、ええ。我々は二日後になります」


「二日後──か」


「ええ。どうしても、農業や商業が盛んな領地を持つ方々が優先になってしまいます」


 イグムットは、葡萄酒を再び口に含む。


「ならば、それまで久々の観光を楽しむとするか」

もし、楽しめたり続きを読みたいなあとか思っていただ居たのなら1-1でもなんでも構いません。評価などお願い致します!

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