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限界突破とビーストテイマー

読んでいただきありがとうございます。この最新話まで読んでいただいてるとなれば、ブクマ等をしてくれてる方々だと思います。話に入る前に、感謝を述べさせて頂きます。

ブクマがもうそろ150に到達し、評価も有難いことに少しづつではありますが増え続けています。

皆様あっての自分だと思いますので、これからも先が読みたくなるような作品を心がけます!

長々とすいませんでした。

「今日も行くですか?」


 ファイヤースライムを両手に抱え、エヴァを頭に乗せ、アルルは少し寂しげな声を発した。


「大丈夫だよ。遅くならないうちに帰るさ」


 しゃがんで、切ない表情をしたアルルの両肩を優しく掴むと口を縫ってうなずいた。


「いい子だ」


 アルルの反応に、笑顔を送り立ち上がると、頭の上で寝ていた筈のエヴァが長い首をクイと持ち上げた。


「ならば、今日は生魚を儂は所望したい」


「ファルファル!」


 スライムの反応に、エヴァは長い首を枝垂しだれさせ、上からスライムを見る。


「私も食べたい。と、言っておるぞ」


「え! そいつ女だったの!?」と、思わず目を見開き、声を張り上げる。すると、スライムはアルルの腕の中での伸び縮みをして、何かを訴える様子をリガルに見せた。


「ファルル!!」


「失礼な! と、言っておる。これは、お詫びが必須じゃな」と、長い首を持ち上げてエヴァはリガルを見た。物凄い熱い眼差しだ。余程食べたいらしい。まあ、湖に住んでいたぐらいだし当たり前だろうと、投げやり気味に言った。


「分かった分かった。とりあえず、アルルを守ってやってくれ」


「ファル!」


「任せておれ」


 スライムとエヴァの承諾を確認し振り返る。リガルは目の前で隊列を組むソレに向かって言った。


「お前達も頼むぞ?」


 リガルの声に、鎧が幾つも軋む音が忙しなく鳴り響く。


「ハッ! 任せてください、我があるじよ。このラウンズ! 命に代えても、アルル様を御守り致します!」と真新しい白銀の鎧を身にまとった骸骨──ナイトリッチは、左胸に右手を翳し、規律正しく口にする。


 本来、ナイトリッチは言葉を発する事が出来ない。


 ──だが。


 リガルがアルルから、ビーストテイマーを授かってからというもの。転生させ次第、限界突破レボルシオンを付与し続け、三日がすぎた今日までに分かった事がある。


 それは、転生させた事により断片的ではあるが、生前の記憶が蘇ったと言う事だ。名前だったり、好きな食べ物だったりと──故に“ラウンズ”とは、生前の名前。


 魂を浄化され、新たな器へと入り込む転生とはまた違うらしい。


 リガルが理解出来る範囲ではあるが──


 つまり、魔石には人の感情そのもの(強い悪感情)、記憶が宿っている。ビーストテイマーがそれを浄化させるので、人格が再び元に戻るといった仕組みだろうか。


 白魔道士っぽく言うのならば、精神汚染を取り除く治癒魔法みたいなものだろう。そして、限界突破レボルシオンを付与した事により、最初から知能が高いリッチは、再び人の言葉を話せるようになった。ファイヤースライムの反応を見るに、人の言葉などは最初から理解出来ていたようだが。


 それを知ると、なお心苦しいモノを感じる。


 これらが、今までに分かった内容だった。


 リガルは、ナイトリッチの厚き忠誠心に対して「いいや」と口走る。


「せっかく手に入れた第二の人生なんだ。護ってくれるのは有難いが、死ぬ気で護るだなんて思わなくていい。何か予期せぬ出来事が起きたなら、無理せず後退をしてくれ」


 本音を伝えると、ナイトリッチ全員が(三〇人程)がその場に膝をつき始めた。物凄い統率力で、ふいに王宮の騎士達を思い出す。


「第二の人生……我が主は、このような成れの果てとなった我々をまだ『人』と、お呼びになって下さるのか……ッ!!」


「なんて器の大きいお方だ……! このハクヤ、貴方様に一生ついてまいりますぞ!」


「リガル様に出会えてよかった……!」


「お、おい。落ち着こ。一回、落ち着こ。ね?」と、しゃがみ、膝をつくナイトリッチに目線を合わせ、タジタジになりながらも言う。


 感極まった雰囲気にリガルは、困惑した。忠誠心があるのは嬉しいが、ここまで来ると逆に接し方が分からない。というか、苦手すぎる。


「何をおっしゃいますか、我が主よ! このラウンズ。命を前にして気が踊っているなど断じてありません!」


 力強く言い切るラウンズを見て、リガルは言葉が浮かばないまま苦笑いをうかべた。


「そ、そりゃあ、頼りがいがある……な?」


 もしかすると、ナイトリッチやマジックリッチ等は生前の能力に関係しているのかもしれない。


「ハッ! もっと、頼っていただいて構いません!」


「わ、分かったから! 頼るから! じゃあ、行ってくるよ」


 ヤレヤレと立ち上がるリガルを、ラウンズは引き止めた。


「待ってください。流石に主、一人で行かせる訳には参りません。この中から一人、誰かを連れて行ってください」


「え、いや。いいよ本当」


 ──一人がいいと切に願う。


「なりませぬ。頼ってください! 主よ!」


「お……おう」


 とは、言われても皆が同じ骸骨だし、名前だって覚えようがない。皆が黒い眼窩がんかをリガルに向ける中、前から三番目にいるナイトリッチを指さした。


「じゃ、じゃあ君で」


 リガルの指名する指を辿り、ラウンズが後ろへ目線を送ると再び前を見て口を開いた。


「ディグ!!」


 力強く、使命感に満ちた声が名前を呼ぶと、三番目のナイトリッチは、もう一度頭を下げた。


「はっ!!」


「これよりお前に、主様を護衛する任を与える」


「有り難き幸せ! このディグ、必ずやリガル様を御守りいたします!」


 このナイトリッチは、少し声が若い。逆に、ラウンズは成人した男性のような低さを持っている。


「で、では、宜しくお願いするよ。ディグ」


 膝をつくナイトリッチの脇を歩き、立ち止まり手を差し伸べる。


 こうなれば、もう声で覚えるしかない。流石に、ナイトリッチって固有名詞で呼ぶのは可哀想な感じがする。


「手を差し伸べて下さるなど……なんて寵愛……有り難き幸せにございます」


 ディグはもう一度、頭を下げる。


「い、いや、もういいからさ。日が沈む前にちゃっちゃと行っちゃおうか」


「はっ!!」


 だが、立ち上がりもしないし、手を掴んでもくれない。もしかして自分が駄目なのでは──と、伸ばした手を引っ込めると、ディグは立ち上がった。


 中々に複雑な気分だが──


「よし、行くとしようか」


 原生林を杖で示すと、ディグは頷く。


「はい!」


 こうして、リガルとナイトリッチのディグは皆に見送られながら深い緑の中へと姿を消していった。



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