大事な事
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ミューレにこと細かく説明をし、子供達はリガルが元居た部屋に布団を買い床にも敷いて寝かせた。
──夜は明けて。
ヒュンズには、家にいてもらい護衛を頼んだ。多分マルカが独断で行った行為ではあるだろうが、一応何があるか分からない。そしてリガルとイザクは、ギルドの小部屋へと来ていた。
狭い密室で「じゃあ」と、机に置かれた水を一口のみ、イザクは地図を広げる。
「アルフレッド君は──」
「リガルでいいよ。俺もイザクと呼んでいるんだし」
机に手をつくイザクの目を見て言うと、頷いて「分かった。じゃあ、リガル。キミは世界の情勢を知っているかい?」と、地図を眺めて言う。
正直、世界の情勢だとかに興味はなく、自分の目に入るものしか考えてはなかったし、覚えてもいなかった。
何も知らない自分が、どれだけ浅はかな考えだったのかをリガルは思い知る。
アルルの辛い表情や自分が奪われてきたもの。また、弱者から奪い取ってきた邦。自分自身の考えは間違えではないと今でも信じている。ただ、考えに対しての密度の問題だ。
「慢心して驕るは、愚直か」
ヤナクを思い出し、言葉を漏らす。するとイザクは少し顔を持ち上げた。
「どうしたの?」
「いいやごめん。俺、何も知らないんだ。教えて欲しい」
イザクの目を見て言うと、何も言わずに頷く。そして大陸に指をさした。
「此処がオレ達のいる大陸・エインフェってのは分かるよね?」
「うん。分かる」
「そして、此処が俺達が住んでいる街、ファルルなわけだね」
大陸の中央よりにある街を指さしてイザクは、優しく穏やかに言う。リガルはそれをただただ目で追っていた。
「こんな場所にあったのか」
てっきり、もっと端の方だとか勝手に思っていたのもあり少し感動を覚えていると、唖然とした表情のイザクがリガルを見た。
「え……リガル?」
「なんだよ?」
「自分のいる領地の領主の名前とか」
──全くわからん。
考えたこともないし、興味もなかった。言葉に出さずも小首を傾げて水を一口飲む。イザクはリガルの反応をみた途端、頭を抱えた。
「本当に、興味がないんだねリガルは」
呆れ混じりの声に、罪悪感もないまま頷いた。
「エインフェは、三つの領地に分けられているんだ。とは言っても、領主は王族の人達なんだけれど」
イザクは、長々と説明を続けた。
西の領地マーニャを治める領主・ワルター=ヒュース公爵。
マーニャは農畜の大半を占めており、ダースとの境界には高く頑丈な壁が隔たっている。周りは高い岩山に囲まれており、守りにも適しているらしい。とは言え、魔族と結託しているのだから、民を騙す為の口実ではあるだろう。
中央の領地ダースを治める領主・イグムット=ヒュース公爵。
ここは、大陸の中央と言うこともあり様々な人々が往来する。他の領地とは違い、街が多いのはその為だろう。奴隷商や孤児院大量にある事でも有名らしい。
リガルがは初見で、それを聞いた時、ミューレが貧民街で男と会ったことを思い出し『なるほど』と大きく頷いていた。
東の領地ナハブを治める領主・ガガド=ヒュース《公爵》。
唯一、港がある領地だ。他には商業も盛んで武具や魔具なども此処で造られているとの事らしい。
嘗ては、侯爵と呼ばれる大貴族に領地を治めさせていたらしいのだが、廃止になり今となっては王族が治めているとの事だ。
ヒュンズは、一通り話終えると席に座り水を口に含み喉を鳴らした。
「──で、リガル? 君なら何処から攻める?」
「何処から?」
「そう」
リガルは、顎に指を添えて眉を顰めた。狭まった瞳には地図が写り、頭には各領地の特徴が、浮かんでゆく。
「西の領地……マーニャか?」
「それはどうして、かな?」
「西の領地は、食料が大量にある。つまり、そこを攻め落とせば多大な被害が及ぶ」
「そうだね」
イザクの反応に、リガルはホッと肩を撫で下ろした。
「なら、攻めるば──」
「しかし」
ドヤ顔になりかけた瞬間、イザクの声が割って入り口はポカリと開いたまま彼を見た。
「惜しいな」
「え?」
「確かに、敵の士気を削ぐには食料を断つのが正攻法であり、成功法だよ」
「ならなぜ惜しい?」
リガルが問いかけると、イザクは壁を指さした。
「だからこそ、壁がある。彼らも、ここの重要さが分かっているんだ。という事は?」
「多くの手練が居るって事か」
「そうだね」
限界突破を転生させた物に使ったとして、それらは強くあっても不死身ではない。ユミルを殺したスケルトンを、簡単に殺せたように、倒せない物ではないのだ。
それに、リアダが言っていた。騎士に与えられる鎧は魔法などに強い耐性がある。ならば、きっと武器にもなんらかの機能が備わっていると考えていいだろう。
転生させた物が全員、金等級並なら話は別だが、それが有り得ないとリガルは知っていた。
「なら、港や商業がある」
すぐさまに首を振るう。
「違うよ。それこそもってのほかだ。港がある──つまりは、王都アヴァロンに行ける場所だよ?」
「そりゃ、そうか」
「だから、オレ達が攻めるとするなら──」
「中央の領地ダースって事か」
イザクは、短く頷いた。
「だね。ここさえ、攻め落とせば右翼左翼と陣を展開出来るし、視野も広い分、判断がしやすい。まあ、護りは容易じゃないだろうけど」
「すげぇな」
言い切った様子で、腰を椅子に深くかけるイザクに言うと、手首を振って答えた。
「いやいや。そんな事ないよ。これは、君の力に依存した無謀な策だしね」
「そうなのか?」
「そうだよ。海上に浮かぶ島を見てごらん」
促されるまま、ポツリポツリと浮かぶ島を目で追っていると、一つの島で動きが止まる。
「グローリー?」
「そう。グローリーから攻めるにしろ、一番近い距離がダースなんだ」
「なるほど。故に大量の戦力を一気に」
「あとは、グローリーを護る者も必須だよ。まあ、陣形の事とかはオレに任せておくれ」
イザクの言葉に頷くと、腕を伸ばしイザクの前で手を開く。
「ああ。頼りにしてる」
イザクは応えるように、手を握り返した。
「おう。で、君は今日、行くのだろ? グローリーに」と、手を離し水を飲みながらイザクは言った。
「うん。昨日話したが、俺が先ずアルルとグローリーに行き、魔族を根絶やしにする。そして、授けて貰う力を使って転生させる」
「上手く行くのかい?」
リガルは、心配そうに見つめるイザクの目を力強い決意を宿した瞳で目線を合わせて頷いた。
「そこは俺に任せてくれ。イザクが陣形を組めるように、ミューレ達が安心して過ごせるように、俺がグローリーを手に入れてみせるさ」
「分かった」と、イザクは立ち上がる。同時にリガルも立ち上がった。
「じゃあ、再び会う時は二ヶ月後だ。連絡がなかった場合は、君が死んだと見なし、グローリーには行かない。いいね?」
「ああ」と、頷き、後に二人はギルドを後にした。
ひとつ相談なのですが、これから物語は大戦系へと流れ込みます。大戦時は神視点で書こうと思うのです。読者様的にはやめてほしいでしょうか??




