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出逢い

「俺は一つ考えていた事があるんだ」と、リガルが夜の浜辺にて野営地を確保し、焚き火が揺らめき燃ゆる中で火を跨ぎ対面するエルフの王女──フィーラに話をもちかけたのは、高い塔を長い時間をかけ降り、アルルに此処へ連れてこられてから暫く経っての事だ。どうやら、アルルは彼女のボロボロな服装(装飾された豪勢なドレス)を見て女王だと勘づいたらしい。そんな彼女を見てリガルが、覚えたものは同情だった。

 ドレスの裾は破け、片足は靴がなく靴下は穴が開き、そこから覗かす足の指は黒く汚れ。膝は転んだのか血が滲み。腕から手にかけて幾つも痣が目立つ。


 間違いなく、女王がするはずもない酷いものだ。


 フィーラは物凄く憔悴しょうすいしており、王女が持ち合わせているであろう品格等もありはしない。どちらかと言えば、職を失い裏路地で途方に暮れている人が見せる覇気も何もないものとよく似ていた。


 リガルは膝を抱え座る彼女を瞳に写す。


「今までは自分の仲間達──があるいは、俺の意見に賛同し平和を求める“人間”が住み良くなれば良いと思っていた。けれど、それは違うんだ。違うと気が付けたんだよ」


 焚き火の音が無音を作らまいと、音を鳴らす中で視線はリガルに集まる(フィーラは、何を考えているのか白眼で焚き火を見つめていた)。


「ふむ。何に気がついたんだ?」


「フィーラも言っていたろ?」


 アルル先導の元、フィーラと出逢うと彼女は怯えた素振りひとつ見せずに事の顛末までを教えてくれた。


 人間たちにも寄り添うように頼んでいた事や、ヤナクよる襲撃。また、フィーラの理想などなど色々と。

 リガルがミネルバを見ていると、ラウンズは「ふむ」と口走ってから続け様に言った。


「世界は私達、一種族だけで幸せになってはならない。みなが手を取り合い助け合うからこそ明るい未来がある。で、あったな?」


「そうだ。俺が俺達が目指す最終目的は争いのない世界ではない。争いがあっても、他種族同士手を取り合い。そして己達で、未来を切り開ける民主の元で裏切りも騙しもない世界にする事だ」


「しかし、裏切りがない世界とは」


「分かっている。だからこそ、法を作るんだよ。貴族主本の物ではなく、みなに平等である正しき法を民達によって作らせるんだ」


「民主主義ってやつか。はははっ」


 ミネルバは、大笑いをする訳でもなく、どちらかと言えば乾いた笑いをした後に真面目な表情を浮かべた。


「やはりリガルは、あの方達の息子だな。これだけの事があっても、信念は曲げない──か。民主主義、良いじゃないか。とてもいい響だ。ならその理想の為にも」


「そうだ。俺はヤナクに宣戦布告をする。多くの犠牲は出るだろう。フィーラが言っていた感情なき者と言うのはきっと、嘗ては普通の人間だった。それを何らかの方法で、ヤナクが単なる人形に作り直した」


「正にガフの部屋そのものって訳か」


「いよいよ神の真似事か」


「だからこそ、フィーラ。君の力を──知識を貸して欲しい。この世界を変えるために」


 リガルが頭を下げると、フィーラは短く頷き弱々しくも声音を震わせた。


「私に出来ることがあるのなら、償いが出来るなら──なんでもします」

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