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「大丈夫、です?」


 アルルの憂いた表情を見て、リガルは作り笑顔を浮かべつつ頭を撫でた。


 最近は“もしかしたら”なんて事を良く考える。


「たられば、なんて考えても仕方ないよな。ありがとう、アルル。俺は大丈夫だ」


「???」


 小首を傾げるアルルから手を離し、リガルは気合いを入れ直して歩き始める。


 ぬめりけのある粘着質な土の音や、野生動物の鳴き声、吹き付け、木々を撫でる風の音。音を通して壮大な自然を感じつつ、リガル達は談笑を交えながら占い師が示した場所へ(村へつき、今は亡き占い師の家にある地下から見つかった書物である。厳重に保管されていたソレには“幻竜契約”という題材でつらづらと記されていた。今向かっている場所は、占い師が唯一書いていた場所)と、地図と睨み合いをしながら向かった。


 時間にしてどれぐらいだろうか。テッペンをさしていた陽が傾きを見せ始めたぐらいには歩き続け──


「ここ、だよな?」と、立ちはだかる断崖絶壁を見てリガルは言葉を漏らす。


 存在感を異端なく見せつけるそれは、記されていた通りの物だ。


神が与えたもうた(セフィロトの)試練(木の根)か。よく言ったものだな」


 ミネルバは、目を細めながら顔を仰ぐ。高く高く聳えた塔、頂上を見ようとしているのだろう。故に、リガルも続いて見たげた。


 この塔に何処か既読感があるのは、来た初日に遠くからこれを見たからだろう。


「この先に、何があるんだろうか」


「分からない。ただ行くだけの価値はある。違うか?」


「確かに。獣人達が聖域として崇めた場所であり、立ち寄ることすら禁じていた場所」


 リガルはそう言うと、魔力を込めた手のひらを断崖絶壁に向け──


「デライト」


 塔を穿たんと光速で、閃光は放たれた。しかし──


「やはり、掻き消されるのか」


 断崖絶壁を貫く手前、デライトは粒子となり消えた。


「書いてあった通りでありますね」


「凄い、です」


「頂上を目指すには浮遊魔法ヴィチロークも使えない。素直に歩いて向かおう」


 指をさした先には入り口があり、どうやらそこから中へと入れるようだ。


「ふむ。なれば、先頭はお任せを」


「ならば私は後方を歩こう」


「何を。それでは、お前達に危険が及ぶかもしれない」


「ならば──逆にリガル、お前を先頭に歩かせても結果は変わらず“危険”だ」


「うむ。それに勘違いなさってはなりませぬよ?我が主よ」


「勘違い?」


「我々は共に旅する“仲間”ではありません。あくまでも従者とその主。ならば、主を守るのは我々の役目です」


「なら俺には」


 果たして、友と呼べるものは──


「いや。なら、ミネルバにラウンズ、くれぐれも無茶をしないでくれ。この先、何があるか分からない。アルルも、絶対に俺の傍を離れるんじゃないぞ」


「はい、です!でも、アルもりがにぃの役にたつです!!」

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