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光はまだ遠く

タイトルを変えてみました。

「あ、貴方は何者なんですか!?」


 エルフが住まう島は、今、目の前にいるであろう彼の行いにより壊滅的な打撃を受けていた。鉱山は廃坑し・都会は崩壊し・電力を生み出すダムは、崩落(フィーラが直接目にした訳ではないが、伝令により詳しく知っている)。


 ──赤き竜を模した武装をした男により、大都市・エグルランテやその他多くの街や村、そして数多くのエルフ(なかま)達が消えた(中には、どうやら下ったものも居るらしいが、詳しくは分からない)。


「フィーラさんや。彼が誰かなんて事はこの際、どうでもいい事ぞな。問題なのは、彼がこの空間に来れてしまったことにあっちゃうのさ」


 目の前に人影を感じ、フィーラは問い掛ける。


「マーリンさん、それは一体……?」


 エグルランテが崩壊へと歩みを進め始めた時、彼──マーリンが顕れた。

 マーリンは、古来の術と言っていたが。そのお陰で今まで、身を潜める事が出来ていた。


 フィーラが不安を全面的に押し出し問い掛けると、マーリンは冷静な声音を放つ。


「ここは無と有の狭間。今際いまわきわに、無理矢理、空白を作ったんだよね」


「流石は天使とのハーフと謳われたエルフ・マーリンだね。けれど、その空間が無理矢理・・・・なら、ボクは見つけ出すこともこじ開ける事も可能なんだよ」


「なるほど。君がリラーラを」


「リラーラ? それが誰かは分からないけれど。お友達かなにかだったのかな?」


「哀れなリラーラだね。彼の記憶にも痛みにも残っていないだなんて。だが、これこそが君の選んだ道だ。たった一人の女性の為に選んだ道だ。ならば、友として妾はこやつの前に立とう」


「ふむ? よく分からないけれど、ボクはね? フィーラ、君に降伏をして欲しいんだ」


「降伏? それに、リラーラがどうしたのですか?」


 彼が目の前に顕れてから、混乱するような事ばかりが発覚していく。心臓は強く肋を叩き。不整脈がおこり、息をするのはとても苦しく。指先は小刻みに震え出した。


 真実を知るのは怖い。目が見えずとも、漂う空気は色々な事を教えてくれる。そして、この空気の湿り気を帯び、どんよりとした空気が物語っているそれは間違いなく──最悪な結末。


 だけれど、一国の王として任を託した以上は、目を背ける訳にはいかない。


「マーリンさん!?」


「ふむ。フィーラさんや、リラーラは君に内緒で──」


 フィーラが知ったのは、想像していた以上の──つまりは想定外の事実だった。人とエルフ、獣人との和平を求めている訳ではなく。エルフが頂点に立つ目論見を企てていたなんて。


 マーリンは最後、庇うようにそっと告げた。


「彼は、君の世界を望んでいたんだよ。自分が消える未来を見せられてもなお、恐れることなく」


「そんな嘘で溢れた世界──私は……」


 その場で崩れ落ち、顔を両手で塞ぐ。


「話は終わったかな? で、フィーラさん、降ってくれないかな?」


「降れば……民は救われるのですか?」


「君がエルフの民を一箇所に集めてくれさえすれば命までは(・・・)奪わないですよ」


「おやおや。それは、鼻につく言い方ぞな? 竜騎士よ」


「鼻につく? ボクは事実を述べたまでだよ。君達から今ある魂を抜き取り、何もない状態に戻す」


「なんだいそりゃあ。まるで、ガフの部屋の終焉みたいぞな」


「そうだね。雀はとうに、なりやんでいるよ。欲深き動物は無欲で忠順になる時がきたんだ」


「それじゃあまるで、人形じゃないですか!尊厳も何もあったもんじゃない!!」


「こんな醜いボクらに尊厳なんかそもそも必要がないんですよ。フィーラさん、冷静に考えてください。ボクと共に何もない真っ白な世界を目指しませんか?」


「私には……」


 フィーラは立ち上がり、瞼を持ち上げ色の無い瞳で竜騎士を写す。


 そして、胸に手を当て強く願い思い返した。確かに欲深いのは認めざるを得ない。いい例で、結果リラーラも命を落とした。自分と言うエルフを世に知らしめたいと言う独り善がりな欲望の元で。


 ──けれど。


「でも、そこに確かに優しさはあったんです。欲があるからこそ、私達は他人に優しくできる! 思いやれる! 思い入れる事が出来るんです! 貴方の理想からは尊さも何も感じない」


「そう、ですか。統率している貴女が欲を必要としているなら仕方がない。貴女の終わりを始まりとし、エルフは一人残らず浄化しましょう」



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