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暗き夜の下で

読んでいただきありがとうございます

「貴様ら!何を血迷っている!なぜ我々に刃を向ける?!」


「ええい!白魔道士を、なぜワルター公爵は追放したのだ!発光魔法ライトなしでは、敵味方の区別すらままならないではないか!」


暗夜に轟く怒号にも似た猛りは、空気を震わせ。それでも尚、収まることなく寧ろ過激さを増し続ける。

至る所で響くは、鉄と鉄が擦れなるカナキリ音や散る火花、魔法発動により舞い上がる砂煙や轟音の数々──


辺り一体は一気に戦場と化した。


「ぐはっ……!」


「この冒険者風情が!我々を嘗めるな!」


「テメェらだけ、安全圏だなんて上手い話はねぇんだよ!どうせ、報酬を渡したくねえって腹なんだろ!?クソ貴族がよぉお!?」


「ま、まて!?俺を殺しても何も……グギャァァ!!」


雨が降り、分厚い雲が月明かりを隠す暗夜だ。松明もたけぬ場所に於いて、白魔道士不在の部隊に待っていたのは、必然の混乱と戦慄だった。


──だが。それはあくまでも敵の話であり、襲撃を行っているリガル陣営には全くもって関係の無い話。


影に身を隠した昆虫種やナイトリッチ達は、その特質さを以て的確に敵を死へ至らしめていた。その指揮をとっていたのは、ガラックとアディル。彼等は右翼左翼と別れ、挟撃へと興じていた。


加えて言うならば、死を演じたハウス達は混乱に乗じて戦線離脱すら終えている。


「ほっほっほ。ここまで上手くいくと、痛快と言う言葉しか思いつかぬわ」


「さて」と、重い腰をあげたガラックは二又に分かれた長槍を肩に乗せ、ゆっくりと歩む。それでいて臆していない、強者の自信で満ちた歩調を周りに見せつけた。しかし、無駄な動作はせず。気配を消し、確実に敵の喉元へ食らいつく。


「ホレ。隙だらけじゃ」


長槍は一瞬で騎乗していた騎士の胸を貫いた。容赦のない的確な一撃は、敵が反応を見せる前に、二撃・三撃めへと転じ。鍛え洗練された刃振りは、雨の雫すらも破裂させず真っ二つ切裂く。


刹那の間に、ガラックの周りを地に全身を浸した屍が埋め尽くした。


断末魔もない、静かな死は唯一の救いだろうか。そんな事を思いつつ、ガラックは戦場を舞う。


「一斉に攻撃を仕掛ければ、いくら強者と言えど隙が生まれるはずだ!!」


そこは冒険者か。白魔道士不在とはいえ、土壇場のチームワークを見せつける。隊列を組み、敵陣への侵略を目的とした騎士達とは違い。彼等は、自由気ままな戦闘を得意としているのだろう。

だからこそ、今この状況が生まれているのだ。


そうだと、解を経てニヤリとほくそ笑む。


「まあ、及第点じゃな。ホレ、ヌシらの力を見せてみるがよい」


ガラック一人に対し、冒険者は円が出来るほどの人数だ。当然背を託した者など居るはずもない。


だからこそ、冒険者達の士気は絶好を超えているのだろう。揺るぎない勝ちを確信した彼等の殺意が、ガラック一点に集まる。


「黒魔道士は、自分が打てる最大を!俺ら前衛職は奴の攻撃を受け流しつつ、武技を食らわせる!いいな!?」


「おうよ!!白魔道士がいない分、向上バフには依存できねぇが。これだけ居りゃあ、大丈夫だ!」


「だな!」


「そうね。私だって銀等級よ。嘗めてもらっては困るわね」


黒魔道士は、杖に手を翳し。弓担当は力一杯に弦を引っ張り。前衛職はジリジリと距離を詰める。


「行くぞ!!」


一人が出した合図で、辺りは様々な明かりが灯され。前衛職の奇声のような、気合いの入った声が轟く。


「「地獄渦インフェルノトルネード!!」」


何人かの黒魔道士が、同じ魔法を重ねて使い──禍黒い火柱がガラックを包み込み。


絶波衝ぜっぱしょう!」


前衛職の一人は、火柱が消えた瞬間、音を置き去りにする程の突きをみせ──


岩砕破がんさいは


後方から、斧使いは鈍い音を立てながら斧を振り下ろす。土壇場とは思えない連携ではあった。──が、それはただ単に連携であり。=ダメージとはならない。


「グプッ」


それを、斧使いの吐血をもってガラックは皆に知らしめた。


「おぬし等は、盲目か何かなのかの?見えてなさすぎじゃ。仕方ないから教えてやるわい」


宙に浮いた斧使いを薙ぎ払い、ガラックは長槍を地に刺して腕を組み目を瞑る。


「ワシらの国を治めたる主が白魔道士だってことをの?」


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