童貞を殺す服を着た僕のお母さんが本当に童貞を殺しまくってる…………
待って!帰らないで!!
ココまで来たなら最後まで読んでみて!?
絶対ハマるから……ね!?
「貴様……童貞だな?」
「んほぉぉぉぉ!!!!」
深夜の住宅街に木霊する男の悲鳴。チカチカと点滅を繰り返す古びた街灯に照らされた男は、下半身を剥き出しにしたままピクピクと痙攣して動けずにいた…………。
「ママ、今日のご飯は何?」
「マー君の好きな青椒肉絲よ♡」
「わーい! 僕青絲肉椒大好きー!」
「ふふ、ママも青肉椒絲が大好きなマー君が好きよ♡」
「へへ、僕の大好きな青肉椒絲を作ってくるママ大好きー♡」
「ふふふ、ありがとう♡」
朝ご飯の青青椒椒肉絲を頬張りながら、健気な子どもが母親と幸せそうに語り合っていた。
「あ、そろそろ火焔ライダーの時間だ」
―――ピッ
40型のテレビが光り、映し出された画面では真面目一徹で有名なフリーアナウンサーがニュースの原稿を読んでいる。
――ここで臨時のニュースです。昨夜未明、市内の男性教諭が何者かに襲われる事件がありました。男性の死因は『童貞卒業によるショック死』で、警察では最近頻発している同一の殺人犯と見て捜査に当たっています――
―――ピッ
――許さぬぞ怪人め!!――
――やかましい火焔ライダー!俺の給料を返せ!!――
子どもはウキウキしながらテレビに映る特撮ヒーローに目を輝かせている。
(…………)
母親は無言で立ち上がると台所に立ち、朝ご飯の片づけを始めた。その顔は何処となく険しく、まるで何か怨めしそうな面持ちであった…………。
そして夜になり、辺りは静寂に包まれる。母親が丹精込めて手掛けた青青絲絲をたらふく食べた子どもは、寝相悪く布団から転げながら眠りに就いていた。
(……おやすみ、マー君)
母親は脱衣所で服を脱ぎ、シャワーを浴びた。しこたま入れた柔軟剤でフワフワのフワッフワになったバスタオルで躰を優しく拭くと、母親は洋簞笥の一番上から出したセーターを素肌の上から着た…………
それは背中が大きく開いており、お尻が少し見えていた。当然背中にはシミ一つあらず、その背中は一児の母とは思えぬ美しい背中だった。前は胸元に大きくハートの形に開かれており、谷間が露わになっていた。また、脇も大きく開いており横からは胸が少し見えていた……と言うか見せている…………
素肌に謎のセーター一枚……まさにその姿は【童貞を殺す服】!!
この姿を見た童貞はbehave irrationallyとなり盛りのついた雄の如く彼女を求めて止まないだろう!!
潤った唇に紅の八塩を塗り、脱衣所の鏡の前でポーズを一つ。鏡に写った深紅に満足げな母親は、既にこの時『女』と化していた…………
(あなた……行ってきます……!)
既にその顔を思い出すには辛い所へと足を踏み入れた女は、先立たれた夫を愛したまま戦慄の復讐へと乗り出した……!!
深夜の住宅街。ヒールの音は遠くまで聞こえ、壁に反射して僅かに反響する。酒に酔ったスーツ姿の若い男性がフラフラと前から歩いてくる。酷く酩酊しており、その千鳥足は今にも倒れそうな程に覚束無い。
「…………はぁぁ?」
酔っ払いは驚いた。何と目の前に突如として素肌を大きく見せた艶めかしい女が立っているではないか……と。
「―――チュッ♡」
女は前屈みになりながら投げキッスを酔っ払いにくれた。ハート型に開かれた部分からはマウント富士が七合目辺りまで見えている。酔っ払いは思い切りニヤニヤとしながら、更に富士の冠雪部を覗き込もうとした。
「貴様、童貞だな……?」
その姿に魅力され、天に向かって伸びた登山ストックを見た女はたちどころに表情を豹変させた!!
「……うぃ?」
その表情にイマイチ理解が追い付かない酔っ払いは、頭の中で雪吹雪くマウント富士のロッジの中で妄想に明け暮れていた。
「―――死ねっ!!」
右足のヒールの踵が外れ、中から鋭い針が飛び出した!!
回し蹴りの要領でグルリと周り酔っ払いのクビに強烈な一撃をぶち込み針を深々と差し込んだ!!
「……ひぎぃぃぃぃ!!!!」
酔っ払いは蹴り飛ばされ道路脇の草むらに転がり込む。そしてピクピクと痙攣したまま動かなくなった……。
「あの世で卒業出来ると良いね♡」
女はヒールの踵を元に戻し、クルリと振り返ると来た道を速やかに戻っていった……その背中は街灯に照らされとても美しく夜の住宅街には不釣り合いな程であった。
「ママおはよう! 今日の朝ご飯は!?」
「おはようマー君♪ 勿論青絲肉椒よ?」
「やったぁ!」
朝になれば女は母親へと戻っていた。そしていつも通りの日常が始まる。
「あ! 昨日の火焔ライダーもう一回見ようっと!」
―――ピッ
――ここで臨時のニュースです。昨夜未明、市内の海岸で男性の変死体が発見されました。発見された男性は手にメモの様な物を握り締めており、そこには『童貞』と書かれておりました。警察の発表によりますと、古くから界隈で活動するテロ組織『童貞の皆さん』による犯行と見られ、近く服役中の同系列組織『黒塗りの向こう側へ』のリーダーに事情聴取を行うとの事です――
―――ピッ
「博士!俺より怪人の方が給料が高いのは何でですか!!」
「ワシがネコババしてるからじゃよ……」
特撮ヒーローに夢中になる子どもを余所目に、母親はキッチンへと立った。そして心の中で夫を亡き者にした卑劣な組織『童貞の皆さん』の根絶と、我が子の幸せを願い天に手を合わせた…………
読んで頂きましてありがとうございました!!
【童貞を殺す服】で検索したら1件しか無かったから、私が先駆者になろうと決めました。
これで【童貞を殺す服を着た〇〇シリーズ】がなろうで流行れば、先駆者は私になりますね(笑)
なお、流行るかどうかは未定です……