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略式なろう物語〜なんかなろう小説って量産型多くないっすか? 詰まらないんですけどってなるよね。分かるわ、分かるから取り敢えず落ち着いて。因みに私はエナジードリンクの中ではモンスターが好きです〜

作者: 三鷹功

 


「貴方は死にました」


 Oh、何。 君って誰?


「女神です」


 ほう、女神か。 お前中々やるな。

 それが通用するのは厨二までだぞ。


「それで貴方のこれからの処遇なのですが」


 これ、死んで転生か転移のパターン?

 あれ、マジで異世界ルート入った?

 テンプレご都合展開来た感じ?


「聞いてますか?」


 やっべテンション上がってきた!

 なんでか知らんけど俺死んだらしいわ、グッジョブ俺b

 どうしよう、異世界か、おらワクワクすっぞ!


「話聞けよデブ」


 デブって誰のことだ? 俺は85Kgのスタイリッシュイケメンで通ってるんだが?


「デブって自分で気付かない人多いのです」


 確かにな、デブって厚かましいよな。


「……」


 どうした? お? 女神さん如何致しました?


「例えば、ハゲたおっさんがいます」


 はい。


「必死に俺はハゲてない元から薄毛なんだ! と発言しています……どう思います」


 それはハゲだな。


「そうですねデブ」


 デブじゃない。


「話が進まないので、もういいですスタイリッシュイケメン話を聞いてください」


 なんだ?


「貴方は死にました」


 それはさっき聞いた。


「悔しいのう」


 なに? なんなの? 煽ってんの?


「普通はなんで死んだかを説明する場面ですが、なろう小説的展開ではありきたりなので割愛します」


 いや読者にちょっとは配慮しろよ。


「じゃあ、仕方ないですね。 貴方はトラックに」


 あー、もういいやテンプレだな。


「乗ってて事故で死にました。 交通事故です」


 普通だった!? 救ってたりしないの!?


「えー、それで異世界行けるんですが。 なんか欲しいものありますか」


 雑だな、なんか思ってたのと違うんですが。


「何もないんですか? じゃあそのまま転生させますね、あー転移の方がいいですか?」


 いや、待て待て待て。 こんな時には必ず貰うもんがあるに決まってんだろ!


「なんですか? 早くしてください」


 ふふふ。

 お前のそのすかした面にぶちかましてやるよ。

 異世界に行ったらまず最初に神様に頼むのは決まってんだろ!

 伊達になろう小説を読みまくっている俺に死角などない。


「はいはい、分かりましたスマホ持って行っていいですよ」


 いや、違います。 ちょっと先に俺の発言遮らないで?


「なんですか? じゃあ最強にしときます。 【最強になーれ】はい、これで最強になりました」


 欲しかったけど! 確かにそれも欲しかったけど全体的に雑なの!


「なんですか、後ろ詰まってるんで早くしてください」


 もういいわ! ええい!

 お前だ!

 お前を異世界に連れて行ってやる!


「……」


 ふふ、何も言えんか。

 そうだろうな、これこそ最強の。


「いいでしょう」


 ……はい? え、いいんだ。


「では、私こと女神1598620号を提供という形でよろしいですね」


 ん? …………ん?


「女神1598621号引き継ぎよろしくお願いします」

「かしこまりました女神1598620号お元気で」


 なんかもう一人、目の前の女神と全く同じ人が異空間から出てきたんだが、待って待って。


「何でしょうかデブ」


 いやお前何体いるの? あとデブじゃない。


「何体というより毎週1万体製造しております、女神をご要望する方が多いので」


 あ、そーなの。 俺と同じ考えの人多いのね。


「はい、こちらは万全の体制で運営させていただいております」


 派遣会社かな?


「ご注文は以上でよろしいでしょうか?」


 飲食店かな?


「では異世界にご案内します」


 ストップストップ、俺にはもっとスキル1000個とか貰う予定が。


「さっき最強にしたので問題ないですね」


 問題ないんだ。

 なんかあっさりしてるなあ、違うんだよなあ。 女神を嫁にするとか。


「でしたら女神1598620号が今日から嫁です」

「よろしくお願いします嫁です」


 違うんだよなあ。


「ちなみに、貴方の前の方は【現世に帰りたい】って言ってましたので現世に帰しました」


 あ、有りなんだ。 転生関係ねーな。


「現世に帰りますか?」


 いや、遠慮しとく。 今から異世界行こうとしてる人に現世帰るのはないわ。


「地球と異世界を行き来するのを希望したお客様もいましたがそれはお断りさせております」


 何で?


「聞くんじゃーねーよ! 仕様だよ!」


 あ、はい。 口悪いなあ。


「では、行ってらっしゃい。 あ、転移の方で良いんですよね?」


 そうですね、転生して何年も頑張るの辛いんで。


「はーい、分かりました。 頑張ってくださいね」


 おっしゃあ! 俺の異世界チートが今始まる!


 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓


 【始まりの町 ハジオ】



「よっしゃ! 異世界ライフ始まったぜ!」

「おめでとうございます、では祝いにこれを」


 女神からアイテムを手渡された。

 何だこれ、なんかピコピコ光ってる場所があるな。

 見覚えあるな、これド○ゴンレーダーってやつじゃない?


「これ、あの7つ集めるとっていう」

「そうです美少女レーダーです」


 そうかやっぱりド……び、美少女レーダー?


「美少女レーダー……って何?」

「ピコピコしてますよね」


 画面を見る、うんピコピコしてるとこがあるな。


「それ美少女です」

「え、何それ! ありなのこのアイテム!?」


 何でこんなものが。


「えーとですね、我が社もご愛好されて20万年の営業を誇る老舗でございます。常日頃からお客様のニーズに応えるために精進しておりまして、このアイテムもなかった当初【おい、美少女探すのだるいんだけど】というお声をいただきまして開発・製造をさせていただきました、これで合法的に美少女と仲良くなれますね!」


 なれますね! って、何でだよ。


「それとも、戦いを望んでましたか? それならこちらの魔王レーダーをあげますが」


 いらねえ、果てしなくいらない。


「いりません、この美少女レーダー使います」

「そうですかそれでは、先ず一番近くの美少女を確保しましょう」


 テッテレー♪


 《美少女を捕獲しよう》


 ……。


「何これ?」

「クエストですね」

「いや、何でクエストが発生してんの」

「まだチュートリアル中ですので」


 チュートリアル!?


「何それ! 美少女捕まえるのがデフォなの?」

「ご不満でしたか? やっぱり魔王レーダーの」

「そっちも魔王倒すのがチュートリアルとか言わないよね?」

「デブでも頭は回りますね」

「いや、デブじゃねーし」

「あ、すいません今は本当にスタイリッシュイケメンでした」

「今はって何だよ元からだよ」


 確かに、転移前の体より、若干お腹が凹んだし、若干背が伸びたし、若干声もイケボになってるし、若干顔の造形も変わった気がするけど。 大した変化ではない。


「アップグレードしたって感じだな」

「どちらかというとトランスフォームって感じですが」

「なんか言った?」

「いえ」


 まあ、仕方ないチュートリアルくらいサクッとこなしますか。


 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓


 【ハジオの町 人通りの少ない路地裏】



「へへ、お嬢ちゃん。 俺たちと良いことしようぜ?」

「や、やめて下さい!」


 テンプレだな。

 でも、確かに可愛い子だ。 ありがたい。

 早速、颯爽に現れて第一の嫁ゲットだ!


「よし、ここで助けに入って」

「………お前何してんだよ?」

「はい?」


 助けに行こうとしたら、肩を掴まれて拒まれてしまった。

 しかも滅茶苦茶イケメンだった、死んでよし。


「なん、何ですかあなた! 急に割り込んできて!」

「おいおい、本当に新入りかよ。 あのなあ、予約してる? 君」

「予約?」

「はあ、ちょっとこっち来い」


 え、ちょっあの! 美少女が!


 人混みの少ない路地裏から引っ張り出されて、宿屋まで連行されてしまった。

 ちょっと、これもチュートリアルですか?


 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓


「君、あのまま行ってたら死んでたぞ」


 いきなり宿屋に連行されて説教を食らう俺、何で?


「死んでた? あのお言葉ですけど俺最強なんですけど?」


 そう、俺は女神から割と雑に最強にさせて貰ったのだ、勝てないわけがない。

 お節介焼きなのだろうが、何だこいつ殺してやろうか?

 美少女を捕獲できなかった罪は重い。


「最強か、お前転移者だろ?」

「……は?」


 固まった、これ結構中盤あたりで起こるイベントだと理解していました。

 自分の他にも転移者がいるパターン。 はい序盤で起こりましたクソゲーかよ。


「俺は転生者だ」


 テ・ン・プ・レ・☆


 ちょっと待って、どんな確率なの? ちょっと早すぎない?


「混乱してるとこ悪いが、さっきの説明をしておく。 説明を聞いたらお前俺に感謝することになるぞ?」


 えー、胡散臭。

 テンプレだとこれ詐欺にかけようとするパターンでしょ、知ってる知ってる。


「あの美少女は15歳 アルフ・カルロ・ルグランシル、この国アルフの第二皇女で趣味は花鑑賞、馬術、裁縫にお茶の収集が趣味。 今回の始まりの町ハジオにきた目的は学院への試験を受けるためにレベルアップをしにご訪問。スリーサイズはB87W58H92の巨乳とは言えないが美乳で形の良い乳をしている、あと……」


 何こいつ、キモいんだけど。

 すっげえイケメンな顔してすっごいキモいんですけど。

 早口でまくし立てないでほしいわ、えー転生者キモッ!


「……と言うわけだ、もうなろう小説を読んでる君ならわかるだろ?」


 全然わからない、お前がキモいと言う以外はな。


「予約制なんだよ」

「うん、ワカンナイ」


 予約制って何だよ。


「はあ、察しが悪いな。 お前本当になろう愛読者? 疑うぞ? 良いや、冒険者ギルド行けばわかるから」

「えっちょっと、また連行すんの!?」


 あの、拒否したいのにこいつパワーつよっ!

 俺最強なんですけど! 俺の本気と同じくらいパワーありそうだなこいつ。


 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓


【冒険者ギルド】


「ほら着いたぞ、先ずは登録でもしときな」


 カランカランとドアを開けると、如何にもって感じの風景が。

 周りの人間は俺のことをジロジロと見ているし、あーテンプレですねテンプレ。


 これあれだろ? 登録している最中に足とかいちゃもん引っ掛けられて逆に俺が華麗に撃退するやつ。


「へへ」


 お、有難うございますバレバレの足引っ掛け。 お前らボコボコにしてやんよ。


「おい、こいつ新入りなんだ、ちょっかいを出すのはチュートリアル終わってからで良いだろ」

「あ、マジかよまだチュートリアル終わってないの? んじゃしょうがねーな」


 え? 足引っ込めるの? 待っておかしくない? 今の会話が主に。


「因みに受付嬢に色目使うんじゃねーぞ? 俺の嫁だから」


 さっき俺に足を出してきた男がそうゆう、はいはい。 みんなのマドンナ的なやつなのね。

 分かってる分かってるって……美味しくいただきますね。


「ご登録ですか?」


 うほっ! 可愛い、受付嬢が可愛いのはテンプレ中のテンプレだ。


「ああ、そうだ。 ハンター登録を頼む」

「ハンターランクについてのご説明は必要でしょうか?」

「ん? いや良いや、だいたい予想がつくし」


 どうせGから始まって一番上がSSSランクだったりするんだろ、ご承知です。


「ではハンターランクを確認するためにこの水晶に触れていただけますか?」


 キタキタ! その水晶ぶっ壊してやんよ!


「ほいよ!」


 俺が水晶に手が触れた瞬間に膨大な光が放射した。


「な、何だこの光は!」


 と自分で言ってみる。

 そして数秒後、水晶が爆発した。


 ふふ。


 これこそチート最強の証。

 おいおい、俺のなろう物語始まっちゃうな。


「……はい、爆発まで5秒かかりましたね。 ではCランクで登録しておきます」


 ……。


 ……はい?


「あの、爆発しましたよね?」

「そうですね」

「それでCランクなの?」

「Cランクですね」

「……」

「……」


 納得いかないんですけど。

 何これ、期待してた反応と違うなあ。


「えっと、因みに何だけどSSSランクってどんな感じなの?」

「はい、SSSランクだとギルド入店と同時に倉庫にある水晶が全部爆発します」

「あ、ふーん。 そうなの」

「そうです」


 それ人間?


「まあ、良いや。 それでCランクで受けれる依頼って何?」

「私が話すよりも、ご自分で確認したほうがいいかと思います。 あちらにクエストボードがありますのでご確認してください」

「あ、わかりました」


 クエストボードに貼られている一覧を確認した。


【Dランク推奨】

 ・パルダ村のアドス夫妻の一人娘、アカシアちゃん7歳の優先婚約券

 (条件)

 ・アドス夫妻が困ってる、資金援助しよう

 ・村にモンスターが出るようだ、助けよう

 ・アカシアちゃんは将来美女とは言えないがそこそこいい女になるぞ!


 ・募集人数なし、早い者勝ち。


【Cランク推奨】

 ・ハジオ町に住む未亡人ガラの見受け優先券。

 (条件)

 ・前転移者が殺されたので空きが出来ました。

 ・歳は35歳の5児の母です。

 ・今は一人で養育費に困っている様子。

 ・結構人気の案件です、美人ですし競争率も高いです。

 ・因みに彼女はバツ125です。


 ・募集人数なし、早い者勝ち。

 ※注意、倍率は相当高いと覚悟しておいてください。 前の夫125人も全員殺されてます、怖いですね。



 ……。


 …………。


 ……あれ? 僕の目がおかしくなったかな?

 ちょっと俺の知ってるクエストと少し違うな。


 そして俺は見つけてしまった。


【SSSランク推奨】

 ・現在ハジオ町にご訪問中の第二皇女アルフ・カルロ・ルグランシルの婚約券

 (条件)

 ・異世界行ったらまず間違いなく欲しいでしょう、全てを兼ね備えた美少女です。

 ・競争率は高いなんてものではありません、地獄です。

 ・予約券の発行を行っています、混乱を防ぐための処置です。 現在の予約該当者は予約番号127833番の米継さんです。

 ・第二皇女との婚約券を獲得したい場合はまず米継さんを殺して下さい、話はそれからだ。

 ・注意事項として予約番号127834番は小室さんです、だからと言って何と言うわけではありません、ええ全く。もしかすると予約番号が早まって自分の番号になるかもしれませんね、運が良ければ。

 ・予約券はギルドの受付で発行中です、お困りの際はご相談に乗ります。



 ナニコレー?

 殺伐〜。

 異世界怖〜い。


「ご依頼はお決まりですか?」


 にっこり、俺に笑いかける受付嬢。

 はは。 ここ冒険者ギルドですよね?


「失礼を承知で聞くんだけど」

「はい?」

「君を嫁にするには?」

「……」


 にっこりと、さっき足を引っ掛けてきた男に視線を送っていた。


 うん、なるほど。 あいつ殺せばいいんだね!

 何だ簡単じゃないか!


「あ、でも困りましたね」


 そのあとに受付嬢は何人かに順番づつ目線を向けた。


 なるほど、大体わかった。 ここに居る全員殺せばいいんだね!

 大人気受付嬢、流石SSSランクのクエストですね!

 何だこれ、人狼より酷いゲーム始まってんな!


「どうだ? ここにきて意味がわかっただろ?」


 さっき、路地裏で俺を止めてきた男が俺に馴れ馴れしく話しかけてきた。


「はい、これが異世界なんですね」

「そうだ、大体理解したと思うが。 ここのギルドにいる奴はみんな転生者か転移者だ」


 それは知らなかった。

 俺仰天ニュースだわ。


「何で、こんな状況に……」

「俺も女神に聞いてみたら、どのサーバーも満員に近くて新設サーバーが追いつかないらしい」

「あ、そんなところはなろうVR物語継承してるのね」

「そうらしいな仕方ない、なろうだからな」

「なろうだしな」


 追記でみんな気にしていると思うが、女神1598620号は普通に俺の隣にいる。

 言ってなかったが、女神1598620号と同じ造形した女性がこのギルド内にも少くとも100体近くいる。

 バーゲンセール開催中真っ盛り。


 なので基本的に女神は空気と化している。

 これもなろうの弊害と呼べるだろう。




 ーーーー《緊急ニュース速報》ーーーー




 なんか始まった。


「お、何だ何だ?」

「あーいつもの奴か」


 ギルドの設置されていたTV画面がバラエティからニュース番組に変わる。

 あの綺麗なニュースキャスターもSSSランクだろう、知ってる。


 何で異世界にTVがあるのかと疑問に思う奴がいたら、それはなろう小説を熟読してない証拠だ。


 TVがある→昔転生者が作ったんだろう→QED


 なろうでは当たり前の現象なので、突っ込んでる暇あったらそこら辺のなろう小説読んでこい。


「いつもの奴って何だよ?」

「国王就任の放送だよ」

「へ?」


 それっていつものことなの?

 話していた通りに画面が切り替わる、確かに国王の就任パレードみたいだ。


『我こそが、第498102475代国王ユウタである。 皆の者我について……グフッ』


 あれ? なんかいきなり国王が血を吐き出して倒れたんだけど。

 胸から剣が突き刺さってるんだけど。


「今回の就任は3秒持ったな」

「3秒か、ここ100代の間では最長だな」

「最長か、名君だったな」

「ああ、3秒も王様やったんだ。 名君だな」


 何言ってんのこいつら、国王死んだのに平然としてるんだけど。

 テレビも普通にバラエティに戻ってるし、ナニコレ。


「まあ、また1時間後に国王就任放送するだろ。 次は何秒持つかな」

「お、賭けますか?」

「いいな、俺は4秒に賭けるぜ!」

「おいおい、そりゃ大穴だぜ。 俺は手堅くコンマ0.5秒だ」

「俺も!」

「俺も!」

「俺もだ!」


 なんか賭博が始まったんですが。

 賭博の後ろでは。


「ッチ、3秒も生きるなんてついてねーよ。 大損だぞ、ちょっと今からユウタって名前の奴を絶滅させてくるわ」

「大いに賛成」

「俺は反対だ、何故なら俺の名前はユウタだからだ」

「「「殺す!」」」


 ギルド内が戦場に変わっていた。


「まあ、国王になろうなんて奴は、本当にこの世界を手に入れようと考える馬鹿か、はたまた天才にして最強の奴しかなれねえ。 俺たちは地道に地味目の女の子を手に入れて幸せになろうぜ。 なあCランクハンター?」


 お前と友達になった記憶がないんですけど、路地裏からすごく馴れ馴れしいですね。


「それに、未亡人とか嫌だろ? 俺が知ってるいい女が居るんだが、どうだ? 協力しないか?」


 小声で俺にしか気付かないように話しかけてきた。


 ……ふっ。


 何だよ、兄弟。 そうゆうことは早めに言ってくれよ。

 俺に話しかけて来たのはそうゆう事か、俺の力が欲しいんだな。


「報酬は?」

「俺は別に欲しい女が居る、大丈夫だ沢山いるからな」

「……お前とは会った瞬間親友なんじゃないかと思ってたんだ」

「嬉しいね、俺もだ戦友」


 互いに拳をぶつけ合う。

 そろそろ本気でなろう満喫しようぜ。


 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓


【王都への道 ガイハム公道 23号線】



「おい、見えるか?」

「ああ、見える。 上玉だな」


 俺たちは遠視スキルによって3km先の状況を見ていた。

 見えるのは3列からなる商隊、これからハジオに来る途中なんだろう。


「補足しておく、2列目に居るのが王都で大商会をしているビルバ夫妻の次女メイ・ビルバ・オネスティだ。 胸はGカップの18歳、婚約者は予約番号150289号の内田だ。 そしてその内田は昨日俺が殺しておいた」


 さらっと、報告してるけど。 やばいこと言ってるの気づいて?


「じゃあ、今回はあの子を」

「いや違う」


 違うんかい。


「じゃあ誰を」

「その御付きとして居る女性が。 幼い頃よりメイ様に拾われて育てられた孤児。 ハル・アメミヤだ」

「アメミヤ?」

「そうだ気づいたか? 転生者だ。 だからビッチだ、美人だが人気がない。 何せビッチだからな、でも美人だ。 ビッチだけど」


 ビッチ何回連呼するんだよ、てか転生者=ビッチは固定観念に染まりすぎだろ。


「何でビッチなんだよ」

「知らないのか? 得てして転生者・転移者は男ならハーレム、女もハーレムを望む。 男がヤリチンで女がヤリマンにならない訳がないだろう? お前悪徳令嬢もの読んでないの? 好き嫌い激しい系?」


 知らねえよ、やっぱキモいお前。


「じゃあ、あいつはパスなんだな?」

「そうゆうわけではない、何せ美人だからな。 俺も予約券は持ってる。 顔はいいからな、セフレとしてなら充分ありだ」


 この世界、最低かよ。


「何なの、今回の目的はあの転生者レディってこと?」

「ば、馬鹿言うな。 いくら人気が無いって言ってもそれは美人の中ではの話だ。 あいつとの婚約券を入手するにはざっと数千人殺さないといけない」


 単位、単位。

 規模が違うんですが。


「じゃあ誰なんだよ」

「ああ、あの森の方向を見てみろ」

「森?」


 遠視スキルに併用して透視スキルを発動させた。

 あと面倒臭いので探査魔法もかけておいた。


 あ。


 居るな。


「盗賊が」

「そうだ」

「ちょっと……マジで?」

「マジだ」

「今回の目的って」

「ああ、女盗賊バルドだ。 歳は27歳、顔は地味で元農民に生まれ碌な幼少期を過ごしていない。 8歳の時に盗賊団に襲われ、頭目に気に入られて愛人として生活するようになる。 そして今は死んだ頭目を引き継いで女にしてこの地域の中でそれなりの大盗賊団の頭目だ。 傷物だが、山を駆け回ったその運動から身体は引き締まっており性欲も強いと聞く、俺たちくらいの中ではトップクラスの女だ。 あいつを狙う」


 あ、そう。


「俺が合図する、そしたら一緒に行って盗賊団を殲滅だ」

「あ、はい」


 作戦は実行された。


『野郎ども、今日の宝を逃すんじゃ無いよ!』

『ウヒョ〜』

『へへへっ』


『な! あ、あれは! バルド盗賊団!』

『お嬢様、私の後ろに!(どうせ助けてくれるから適当に待ちますか、さっきから探査魔法に10パーティーくらい引っかかってるし)』

『怖いわアメミヤ私どうすれば』

『大丈夫です、私が守ります!(あざといのよこのクソビッチ)』


 色々ひどい。


「助太刀いたす!」

「す、お、俺も居るぞ!」


 慌てて躍り出る。

 そして出てきたのは俺たちだけじゃなかった。


「助太刀……ってお前もかよ」

「ついに俺の暗黒剣が解きはな……あれみんな?」

「こっちは内田死んだんで次の人狙いです」

「はあ!! 俺か! 俺狙ってるのか!?」

「と言うことで皆さんでここに居る沢尻さん殺しませんか?」

「「賛成」」

「あ、俺アマミヤ欲しいんでパス」

「え、お前ビッチ欲しいの? じゃあいいよ」

「あ、俺はそこの女盗賊さん狙い」


 まさかのダブりがいた。

 カオス過ぎませんか?


「まさか、俺と同じバルドさん狙いがいたとは……」

「あんたもバルドさん狙い? 困るなあ、殺さないと」


 先に襲われてる商隊の人助けて?

 俺の目の前でバルドさん争奪戦が勃発した。


「おい! 新入り手伝え!」


 構図。


 商隊VS盗賊団。


 助けに来た転生者VS助けに来た転生者。


 沢尻殺し隊VS沢尻。


 バルド狙い隊(ここ所属)VSバルド狙い隊。



 ……お前ら、何しに来たの?

 何でここに来てトーナメント戦はじまってんの?


「あの、まず商隊救うのが先決だと思います」


 俺は勇気ある発言した。


「いや、別に要らないだろう」

「ああ、要らんな」

「何言ってんのお前?」

「馬鹿なの?」

「死にたいの死ぬ?」

「お前新入り?」

「新入りかよ、じゃあ仕方ないな」


 却下された。

 あとみんなして返事くるとか、実はお前ら仲良いだろ。



「何で?」

「「「アマミヤが居るから」」」


 即答だった。

 あーなるほどね。


「これなろうだった」

「そう、なろうだからな。 そうと分かれば俺を早く助けてくれないか?」


 つまりアマミヤも超人離れした強さ持っているってことだ、助けねーわ。



『お嬢様、ここで待っていて下さい!(何やってんだよ無能ども!)』

『で、でもアメミヤ貴方が!』

『私は死にませんよお嬢様 (マジカスしかいねー)』

『アメミヤ!』

『すぐ戻ります!(さっき私目当ての子居たわね、ちょっとタイプか見ておこう)』


 荷馬車の中ではこんな会話が行われてた。

 やっぱりビッチだった。


 何だかなー。

 しかも女沢山いるって……。

 俺は周りを見渡した。

 確かにいる、一杯。


 50越えたババアどもがな。


「おい、お前女沢山いるって言ったよね?」

「ああ? そうだいるだろ!?」

「50超えばかりの使用人がな」

「そうだ、何だ? お前のストライクゾーン狭いのか?」


 何言ってんだこいつ?


「お前、マジで言ってんの?」

「逆にマジでダメなのか? そんなんじゃ一生この世界じゃ女抱けないぞ?」


 ちょっと待てや!

 キッツイ! キッツイです異世界!


「いや、俺無理だわ。 あと頑張ってくれ」

「ちょ、おまっ! 待ってバルドが俺を待ってるんだ! 待て新入り、待てって、待てよ! カムバーーック!!」


 俺は無事あのカオス空間から離脱した。


 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓


【王都への道 ガイハム公道 25号線 その途中】


「野宿か」


 あの後一人になって俺はあることに気づいたんだ。

 異世界転移後空気みたいな扱いしていたから気づくのが遅れたが、俺は自分の選択は間違っていなかったんだと自分の判断に感謝した。


「……と言うことでですね」

「何がと言うことでしょうか?」


 居るんだよ!


 女が!


 通称女神が!


 勝ち組ヤッホーい!


「S○Xさせて貰えないか?」

「了解致しました」


 いやー、これぞ灯台元暗しってやつよ。

 居るじゃん、ここに最高級美女が。

 最初に女神選択しといて良かったわ。 神に感謝。


「ではこちらをお使い下さい」


 女神がおもむろに俺に突き出してきたのは。


 …………。


「……これT○NGAだよね?」

「はいT○NGAです」


 いや、尻突き出してくんない、そうすれば俺のマグナムが火を吹くんだけど。


「何で!? 普通にやらせろや!」

「説明しましょう」

「はい、説明して!?」

「なろうだからです」

「わからんのお!!」


 偉い人にはそれが分からんのです!


「説明プリーズ!」

「はい、まず女神とS○Xする小説ですが、なろう小説では24218件のヒットをしました」

「うん」

「そのうち、出会って即合体する小説は少ないながらありました451件です」

「はい」

「メジャーでは無いんですよ、なろうでは出会って即合体シリーズはマイナー作品です」

「お前まさか!」

「なろうなんで、あくまでなろう的展開なんで」

「そこを何とか」

「無理です、ちなみに条件ですが世界救って下さい、以上です」

「規模が大きい!」

「それくらいの事しないと大体のなろうでは女神とS○X出来ません、残念でしたね。 ちなみに世界征服ルートをご希望でしたら、初めに配布しました魔王レーダーが役に立ちますがご利用なさいますか?」


 いや、だから果てしなくいらないって。


「何でだよ! 期待してたのに! 期待してたのにーー」

「……」

「その太もも舐め回したり、おっぱい吸ったり、ズッコンバッコンしたかったのにーー!」

「……」

「……チラッ」

「……」

「……チラッチラッ」

「よくその発言してS○Xさせて貰えると思いましたね、生理的に無理です」

「女神に生理なんてないだろ!」

「確認してみますか?」

「…………ゴクリ」

「では世界を救ってきて下さい」

「チクショー!」


 生殺しかよ!

 異世界来てから何もいい事ねーじゃねーか!


「女神アドバイスを聞きますか?」


 あ”? なんか言ったか?


「女神アドバイス聞きますか?」


 何それ。


「初心者救済のアドバイスです」


 そんなのあるの?


「ええ、なろうを幾ら読んでいても人には限界がありますから。 それをサポートする機能です、利用なさいますか?」


 ああ、利用するわ。


「では、あなたの目的を教えて下さい」


 女を抱きたい。


「なろう検索エンジン開始………ヒットしました」


 ……。


「聞きますか?」


 早く言ってくれ。


「……奴隷を」

「その手があったあああああ!!!!!!」


 俺の足は光の速さで王都に向かっていった。 欲望のままに。


 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓


【王都 奴隷商デルモス 店内】


「本日はどのような子をご所望で?」

「若い女だ!」

「へぇ、若い女ですか」

「そうだ」


 俺は走った、なろう展開だとよくある展開だ。

 奴隷を買って育ててると、いつの間にか美少女に育ってて合法的に俺嫁状態に。


 これは宇宙の法則と言っていい、黄金法則だ。

 フィボナッチ数列と同等のお決まり黄金パターンだ。


 だからすぐ来た。


 来た、見た、買った。


 古来の英雄である皇帝も推奨している奴隷売買だ、若干違うけど。


「若い女は………いませんね」


 顎が外れるかと思った。


「え、何で?」

「まず奴隷に来るのがあんまり居ませんね」

「何で?」

「何でって、平和だからですよ」

「……はい?」

「作物は昔の偉人が改善してくれて人々は飢えなくなって、技術は発展し、わざわざ奴隷になろうとする人なんて……」

「何であんた奴隷商人やってるの?」

「なろうなんで」

「なろうだからか」


 ひっで! ひどすぎ! ヒデ氏ね!


「ああ、でも一人だけいますよ。 仙人みたいな人が」


 何で仙人いるんだよ。


「なんか、『なろうっぽい』らしいです」

「普通奴隷商に仙人いないけどな」

「私もそう言ったんですが『嫌だ! 奴隷になるんだ!』って聞かなくて」

「そいつ変人だな」

「変人です」


 新たなロールプレイに目覚めちゃったのかな?


「まあいいや、その仙人見るわ」

「へえ、こちらです」


 奴隷商に奴隷を買いに来たのに仙人がいた件について。


 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓


「フォフォフォ……お主かワシを買いたいと言うておるのは」

「いえ、違います」

「そうかそうか、じゃがワシは高いぞ?」

「いえ、買いません」

「フォフォ、じゃがなワシを買ったところで永遠の秘宝ワ○ピースを手に入るとは思うなよ?」

「いえ、思ってません」


 こいつ確実に転生者だろ。

 何でこの世界にひとつなぎの秘宝あるんだよ、世界観ぶち壊しだよ。


「……今なら半額じゃ」


 いきなり値引きしてきたよ。


「……オマケにワ○ピースもつけよう」


 おい、オマケでお前の秘宝手に入るのかよ。


「……ねえ、買って下さい。 入ってみたら意外と辛いんです牢屋って。 お金ないならタダでもいいです」


 最終的にタダになったよ。


「え、いらない」

「……………嘘だ!」


 何でやねん。


「ん? なになに、この人についていけ、そして世界を救うのじゃだと! おお! ついにこの世界の救世主さまが現れたのじゃな!」


 小芝居始まったよ。


「……と言うことでついて行きます」


 俺の意見は?


「あのーこれは……」

「何と! 買い取っていただけるのですね!」


 おい、奴隷商。 どさくさに紛れて俺に押し付けようとしてるな?


「いやー、本当は惜しい、売るには勿体無い! いや、ほんと勿体無いが! 仕方ない、いいでしょう!」


 何がいいでしょう?


「長い付き合いだった、奴隷商よ。 ワシはこの時をもって奴隷を卒業します!」

「おめでとう! パチパチパチ」


 おい、奴隷卒業すんな。

 今から奴隷になるんだよ。


「んじゃ、よろしく…………実はワシな転生者なんじゃ」


 知ってる。

 何で気付いてないと思ってたの?


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【王都 街中】


「取り敢えずじゃ、お主何がしたいのじゃ?」

「女を抱きたい」

「そうか……取り敢えずこれで怒りを沈めるが良い」


 何でお前もT○NGA持ってるんだよ、おかしいだろ。

 すんごい、サッカーのスルーパスみたいに華麗に渡して来たけど、二個目です。 いりません。


「と言うことは、まだチュートリアル中じゃな?」


 何で知ってるんだよ、あ……仙人だった。


「ええ」

「なら、これでクエスト達成じゃな」


 《クエスト達成しました》


 え?


「何で?」

「何でって、ほれ」


 おじちゃんが自分を指差す。

 それって……おい、おじいちゃんじゃなくておば。


「ワシじゃよ」

「女だったの!?」

「いや違うぞ」

「違うの? じゃあなに?!」

「仙人じゃ」


 理由になってねー!


「分かった分かった、お前なろう的展開をもうちょっと復習したほうがいいぞ」

「なんで?」

「こうゆうことじゃ」


 言うと同時に目の前に美少女がいた。


 あの……これって。


「そうじゃ!」

「あ、実は美少女でしたパターンのやつですか?」

「違う、美少女に変身できるだけの中身仙人じゃ」

「そっちかよ! たちわりぃな!!」


 あ、でもいいや。


「S○Xしようぜ!」

「リビドーがエクストリームしておるなお主」


 中身なんてどうでもいいんんだ、肝心なのは外見だ!


「逆じゃ逆」

「愛してるぜ仙人!」


 なんだよ最高かよ。


「じゃあホテル予約しとくね」

「おい待て、わしゃ仙人じゃて」

「そうか、ホテルで聞こう」

「見境ないなお主……童貞か?」

「ど、どどどどどど童貞ちゃうわ!!」


 何言ってんだよ、お前ビッチか?


「ちゃんとした女を抱くが良い」

「どこにいるって言うんだ!!!」

「……すごいのう、本能で叫んでおる」

「おい! 言ったな? 言ったよな? 言い出した奴には答える権利があんだよ! 言えよ! どうすれば女抱けんだよ! おい! 抱けよ! 抱かせろおおお!!」

「やばい、こいつ危険」


 ビチビチビッチビッチビチ!


「それ歌で敵をぬっ殺す女児向けアニメ」

「20代後半からが対象です!」


 で?


「答えは?」

「風俗」

「天才か!?」


 おいおいおい、仙人天才かよ。


「よしイクゾ!」

「こいつ大丈夫か?」



 異世界らしくなって来た!


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【王都 風俗ハッテン】


「いらっしゃいませ、ご利用ですか?」

「ああ、若い女一人だ」

「あ、はーい分かりました」


 そうやってお姉さんはファイリングされた一冊の本を渡して来た。


「……ナニコレ」

「予約表です〜」


 ページを開くとビッチリと名前が記入されていた。


「えっと、こんなにいるの?」

「はいー、若い子だと多いですね」

「因みに30代以上で美人は?」

「熟女好きでした? ではこちらですね」


 またドッサリと分厚い本が積み上がった。


 ……この世界プロかよ。


「あの、できたら予約なしで出来る人とかは?」

「あーすいません、先週まで居たんですけど。齢103歳で天寿を全うしちゃいました」


 あっぶね! もはやモンスターだよ。

 なんチューもん当てがおうとしてんのこの人、悪魔かよ!


「因みにお姉さんは?」

「私ですか? そうなりますと」


 分厚い本が10冊くらい並んだ。


 あ、察し。


「おーい、エレメちゃん。 君を抱くのに5年待っていたんだ、早速ベットに行きましょう!」


 会話してたら、他の客が割り込んできた。

 5年って……。


「あ、ご予約の方ですね! ではお部屋にご案内しますね!」

「ウッホ! やっとだ! やっと………ブッ」


 舞い上がってた男がいきなり口から血を吹いて倒れた。


「あ、すいません今の人吉田さんですよね? 次の予約の勝沼です! 殺したんで次俺ですよ……ボッ」

「いやあ、偶然ですね勝沼くん死んじゃいましたね、そうなると自動的に次はこの佐々木ですか………ネ”ッ」

「あれ佐々木だっけこいつ、なんか勝手に死んじゃってるんだけど。 俺幸運…………ジャ」


 酷い光景を見た。

 ナニコレ無限ループ?


「あ、あの俺いいっすわ」

「あら、そうですか? ではまたのご来店お待ちしていますね!」


 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓


「で、どうじゃった?」

「ザ○キ」

「おい! なんでワシに向かって即死魔法放った? 効かないけど」


 あれが風俗? あそこ屠殺場の間違いだろ。

 スプラッタ映画万歳信者もゲロ吐くレベルだぞ。


「もういい、この世界に来たのが間違いだったようだ」

「え、いやいやお主よ『諦めたらそこでなろう』じゃぞ」


 意味不明だよ。


 頑張ったら、そこでなろう終了だよ。


「楽してハーレム作ろうとしたのが間違いだったんだ」

「どうした? もしかして君なろうアンチ?」


 アンチか、アンチが許されるのは小学生までだ。

 ……こうなったら。


「世界の最果てまで行って到達したら、なんか小さな島があって。 実は先住民がみんなケモミミ美少女で俺に懐く展開しかない!」

「間違えておった、お前こそ真のなろラーじゃったか」


 うおおお!! 次元の壁を超えてやる!!


 目指すは最果ての美少女! あと出来れば道中人化するドラゴンでも可!


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【最果ての地 ニポン】


「はい、まあね。 こうなるの予想してたけどね」

「出た出た、最果てが俺たちの日本と思いきや昔転生者がいて自分好みに改変してただけっていうオチじゃな」

「クッソ! ここもダメか!」


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【炎獄の山デュオス 炎黒龍 バルディオス (既婚)】


「クッ! ここもなろう軍に陥落していたか!」

「手広いのぅ」


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【聖樹ユラヌ 精霊王 アガベル (既婚)】


「オラに女を分けてくれ!」

「酷い王道漫画始まったのぅ」


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【天界 熾天使ミゴモル (妊婦)】


「マタニティイイイイ!!」

「ミキティイイイイ!!」


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【何もない長閑な田舎】


「…………」

「…………」

「……なあ仙人」

「……なんじゃ?」

「女になってくれ」

「嫌じゃ」


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【どこか分からない異空間】


「ここどこ?」

「知らん」


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【王都周辺の村パルダ】


「結局戻ってきてしまった」

「流石はなろう、隅々まで征服しておったな」


 史上一番嬉しくない世界一周を終えて、俺は悟った。


「……やっぱお前でいいや」

「目を覚ませ! それは純愛に見せかけたBLルートじゃ!」



 〈助けて!〉


 ん?


「今、お前言った?」

「どうしたんじゃ? 幻聴か?」


 〈助けてください!!〉


「おい、これはもしかして…………精霊の声!」

「普通に向こうから聞こえるのう」


 ……おい、雰囲気ぶち壊すな。


「助けに行きますか」

「なろう的展開じゃな」



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「ブシュルルルルル!!」

「きゃ、きゃあ!!」


 魔物に幼い村娘が襲われてた。

 あれ、テンプレじゃね?


「なろうだな」

「なろうじゃな」


 なんかホッとするわ。


「あ! そこにいるのは冒険者様ですか! 助けてください! お礼ならなんでもします!」


 よし


「よっこらしょういち!」

「最強呪文チョベリバ!」


 歳がバレる。


「グオワアアアアアア!!」


 最強なんで、普通に倒しました。


「あ、有難うございますお強いんですね!!」


 目をキラキラして、俺にすり寄ってくる村娘。

 まだ幼いながらも後7年ほどすれば、美人とは言い難いがそこそこいい女になるだろう。


 あれ?


「……どうしたお主?」

「なんか、思い出しそうなんだけど」


【Dランク推奨】

 ・パルダ村のアドス夫妻の一人娘、アカシアちゃん7歳の優先婚約券


 あ。


 いたわ。


「これDランク依頼だった」

「ほう、得てして任務達成とはやるのう」


 いやどうなんだ? いやでも。


 ……チラッ。


「どうしました?」


 ……ありだな。


 うん、ウンウンあり。 ありだよこれ! ちょっと早いけど青田買い大いに結構!

 そう! 就職活動大手解禁日よりも先に実は有能な大学生達に唾をかけておく汚い大手企業並みにありな状況だよこれ!


「君、名前は?」

「アカシア」

「そうかそうか、お願い聞いてくれるんだよね?」

「うん!」

「そうかそうかそうか! じゃあね……」


 やっとここまで来た! 長かった、ここでやっと本当の意味でチュートリアルが終わる。

 美少女とはちょっと言えないけど、地味スキーには結構たまらない感じの女の子。 いいよいいよ!


 世界一周した甲斐があった!


 ついに、ついに言える!


 そう。


 僕の。


 僕だけの!


「僕だけのお嫁さんになってくれるかい?」






「………………は? キッモ」



 気付いたら、俺は幼女の右腕に心臓を貫かれていた。



 ………グフッ。


 なんでやねん。


「お、お主まさか!」


 なんだインチキ仙人?


「魔王!」


 ………。


 ……なんでやねん。


 なんでいるねん。


 KYかよ。


「はははっ! かかったな! 転移者よ! そうだ我輩が魔王ラキルだ!」

「くそ、そうじゃ失念しておったわ。 これもまさになろう的展開じゃった」


 そう。


 低ランクの依頼を受けると実は超危険な依頼だったパターンだ。


 いらねぇ。


 心の底からいらねぇ。


 誰だよこのパターン作ったやつ、普通に死ねよ。


「はははっ! この男を葬り去った後でお前も血祭りにしてやろうか!」

「くそっ、汚いぞ魔王め!」


 まじか、あーつえー。 仙人強いなー。

 でも魔王もつえー。 うわーバチバチやってるな。


 あっぶね、俺の顔となりにファイアーボール飛んできた。


「今のはメ○ゾーマではないメ○だ!」


 おい仙人普通に戦え。

 それに俺に飛び火しそうじゃねーか!


 ああ。


 あーこれ死ぬな。


 だめだ、あーイキソ。


 あー、イク。


 あ。



 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓


「おお、死んでしまうとは情けない」


 あー、転移前に帰ってきましたね。


「どうでした異世界」


 クソっすね。


「そうですか、でもなろうだったでしょ?」


 はい、もう見事になろうでした。 ミックスブレンドされた、本来ミックスブレンドって更に美味しくなるための方法ですが、見事にミックソブレンドされてました。 もー見事にクソでした。


「そうでしたか、ちなみにあなたが死んだので女神1598620号は回収いたしました、よろしいですね?」


 ああ、結構結構コケコッコー。


「ハッチャケてますね」


 死んだしな。


「……そうですか、貴方は今世界の狭間にいます。 欲しいものを言ってください」


 欲しいものですか、もう決まってますね。


「前回と一緒ですねスマホ持って行きますか?」


 いや、いらない。 なんで執拗にスマホ推してくるんだよ。


「なろうなので」


 なろうでしたね。


「では、違うようですね。 早くして下さい、後ろが詰まってますので」


 わかりました。


 では。


 私が今、一番欲しているものは。


 それは。

















「現世に帰りたいです」

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― 新着の感想 ―
[一言] もう出だしから笑いました。 そしてどこか文学的!(凄く褒めてます)
2019/06/24 22:23 退会済み
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