動物の謝肉祭 「瀕死の白鳥」
バレエでも、聴くクラシックでも好きな曲の1つにサン・サーンスの「動物の謝肉祭」がある
その中の「瀕死の白鳥」--わずか数分の曲
バレエ音楽には「白鳥の湖」もあるが、私は同じ白鳥でも「瀕死の白鳥」が好きだ
ロシアのプリマドンナでマエストロ(師匠)でもあった女性がいた
私が彼女のことを知ったのは25年ほど前になる
当時、彼女は70代の前半か半ばで現役で踊っていた
テレビで観た時に体が震えあがった
そんな人がいることにも驚いたが踊りが言葉では言い表せないもの
テレビでの放映は、劇場公演が全国各地で行われるからという宣伝のためだったのかもしれない
新聞で講演のことを知り迷わず問い合わせた
電話では残り4枚のチケットで、どこの席が良いかと聞かれたことを覚えている
残念だったのは、オケがなかったことだ
ダンサー、オーケストラ、観客の一体化は興奮度がすごい
それはバレエでなくともオペラでもだ
マエストロでもある彼女の出番は1つだけ
「瀕死の白鳥」
この人が目的だと思われる、アンコールが鳴りやまなかった
手の動きは白鳥の羽そのもので、舞台に出てきた時の体も腕も白鳥そのものだった
どうしたらあんな手の動き、筋肉を操るのか不思議だった
瀕死であるために段々と身を落として小さくなっていく
最後の最後まで顔の表情も体も白鳥の舞い
この人にしか踊ることが出来ないものだろう
CDを聞くとあの時の何とも言えぬ場面が頭に浮かぶ