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カーリド  作者: 扉園
11/12

Φ あとがき Φ



 この小説は、一つの夢から始まった。

 目覚めた途端、私はそれを慌てて文章に写した。夢として終わらせるには、余りにも惜しい情景やストーリーに思われたから。内容は以下の通りだった。


『物語の鍵を握る青年が雨で濡れそぼっていて、机に突っ伏していた。後頭部に複数の瞳あり。たぶん彼の能力の具現化で幻かな。短髪黒髪。主人公はとても貧相な服を着ており、貧乏だけど心が清らかという感じ。女性が現れ、このままでは青年が風邪を引いてしまうと、持っていたタオルで拭く。隣にいた友人は青年の容姿にドン引き。女性は目は沁みませんか、と聞いている。拭き終わったら、突っ伏していた青年はゆっくりと顔を持ち上げ、女性を見上げる。表情には女性に対する感銘の念があった。艶めかしさと神秘オーラが出ている。非常に寡黙で、雰囲気がゆっくりと流れている。女性と友人は何かを探していた。青年は超能力者であり、青年は女性に「私と一緒に行って、私の支えになって欲しい」と言う。青年の頭に何かの装置を取り付け、その探し物のありかを探す。紫…と言って紫のパネルに書いてある漢字を読み取る。青年が示した秘密のありかは、女性の友人の名前だった』


 夢はそこで終わりだった。なんとも中途半端で、展開が気になる。友人は偶然に真実を知ってしまったのか、はたまた友人はその事実を隠していたのか……。それを知る由はない。

 ともあれ私はこのような夢を見て、この世界観を表現してみたくなった。寂しげで、モノトーンで、静かな世界。早速ノートと鉛筆を持ち、青年をイメージして描いた。

 それがバドルである。

 次に主人公である女性を描き、内容を考えた。ジャンルはSF、舞台は近未来の地球。夢に出たシーンを出来るだけ入れ、謎と静寂を多く盛り込みたいと。

 また、私は怪しげな雑学の本をちょうど読んでいた。そこに書かれていたのが『月宇宙船説』だった。

 すなわち、月は宇宙人が作った船だという説。現実的に考えたらとんでもない内容だが、私はそれにロマンを感じた。物語に組み込もうとし、「調査隊が月を探索していたところ地下が発見され、宇宙人のミイラがそこにあった」だの「月から落ちてきた隕石の中に、宇宙人の細胞があった」だの考えた。宇宙人の細胞を人間に組み込んで生まれたのがバドル。そういう設定にしようとした。

 だが、どれもしっくり来なかった。この流れでは研究室が舞台となり、科学者が前面に現れる。私は科学的知識が皆無であり、この頃はSFの小説すら読んだことがなかった。こういう展開は私の望むところではないように思えた。また、その設定がありきたりなもののように感じたのだ。

 そこで私は視点を変えることにした。何故、宇宙人は月に宇宙船を作ることとなったのだろう。そう考えていくと、人間が主人公でなくても、宇宙人でいいじゃないかと思えた。

 私は異星を舞台にすることにした。ノートに宇宙人を描いてみたら、そちらの方がしっくり来た。それから私は路線変更し、宇宙人が月を作り、乗ってはるばる地球へ行く話にしようとした。人間に近い容姿を持つバドル。バドルが宇宙人だとしたら、何故このような様相になったのだろう。考えていくと、進化と差別の物語が浮かんだ。

 テーマが完全と不完全と決まったのは、この頃だと思うが判然としない。だが、始めから物語はハッピーエンドで終わる予定はなかった。地球での物語でも、結末は似たようなものだったと思う。バドルが一人とぼとぼと歩くラストシーンは、かなり早くから決まっていた。

 どんどん物語は膨らんでいった。こうなってしまえば物語は一人歩きを始める。もはや生き残った夢の要素は、モノトーンの世界とバドルぐらいなものとなってしまった。それでも私は気にしなかった。

 ハイマートの主要キャラとモント、クスーフ&ルーヌラはこの時にはもう生まれた。世界観を作り、設定を決めて、大筋を決めて、さぁ物語を書こうと思った。だが、そこからが長かった。全然書けない。

 科学的知識もなければ、小説のノウハウも分からない人間が複雑な長編を書こうとするのは荒業に等しい。設定のノートだけが増えていき、日時が経って忘れてしまった設定も数多くあった。必要最低限のキャラでは成り立たなくなり、ヘテルが生まれ、更にユディウやセリニ副官、戦闘要員の者達が生まれた。

 ファダーの由来が解決されないまま話を終えようと思っていたが、それではお粗末だろうと思い、どうしてこの社会体制が生じたのかという問題を考え抜き、土壇場でタグイェルとメスィが生まれた。毎日が亀の如き歩みだったが、物語はどうにかまとまり、一つになった。

 カーリド。何年もかかってようやく日の目を見た作品。よく完成したと思う。

 至らないところは多々あると思うし、読み返せば冷や汗が噴き出すが、全力は尽くした。カーリドの皆様もよく耐え、重くて陰気くさい物語に付き合ってくれたと思う。頭が下がるばかりである。バドルもお疲れ様でした。もし過去や未来、地球版の物語を作ることがあれば、またお願いします。この後に短編を載せているので、こちらもよろしくお願いします。

 最後に、カーリドを読んでくれた方々に全身全霊の感謝を捧げます!



-2015年6月完成作品-

 


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