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遊園地の噂

 「やっとついたー」


 クラスの誰かが言った。

 バスで二時間。そこから歩いて、一時間。長かった。


 でも、ここは遊園地ではない。宿屋だ。山の中にある宿屋をとったが、ここまで遠いとは思わなかった。でも、夜になったら、肝試しとして、夜の山を登らないといけない。遊園地はまだまだ上だ。


 「よし、七時なったら、宿屋を出発するからな~、準備しとけよ」


 神野が言った。スケジュールは彼が全て作ってくれた。


 夜の七時から山を登り、山頂付近の浦野ドリームランドをめざし、夜の八時に到着。そこで、一時間ぐらい肝試しをして、帰ってくる。十時くらいには、宿に帰れる予定だ。


 「飯、食べとくか」


 俺はそう呟き、食堂に向かった。




 ▼




 食堂には、数グループが居た。山登りに来たグループがほとんどのようだ。まぁ、そりゃそうか。こんな山奥まで来るなんて、やっぱり山登りか相当な変わり者だけだろう。


 食事はバイキング形式で意外と美味しそうな料理が並んでいた。俺は焼き鮭とご飯、それと味噌汁を取って、席に着いた。


 廃園とどんなところなんだろうなとか思いながら、ご飯を食べていたら、隣の大学生くらいのグループが話しかけてきた。


 「ねぇ、君、さっきの大人数のグループだよね。何しに来たの?」

 「肝試しに」

 「肝試し? もしかして、廃園に行くつもり?」

 「はい、そうですが……何かあるんですか?」


 そしたら、彼らは驚いたような顔をしながら言った。


 「まさか、調べずに行くつもりか!? 止めとけ、あそこは地獄って言われてる」


 今度は僕が驚く番だった。地獄? そこまで、曰く付きの場所なのか?


 「何があるんですか?」

 「いや、あるっていうか、噂があるんだよ」

 「そうそう、例えば、泣き叫ぶ声や子供の声とかの有名なやつから、光るメリーゴーランドとか、まぁ、沢山沢山」

 「……」

 「それにあそこに行った人は絶対に帰ってこなかったんだ。誰一人として。僕らはよく山登りにここに来るんだけど、帰ってきた人がいないことは保証できるよ。だって、誰一人として、この付近を通らなかった」

 「でも、驚くのはここから」


 「誰も帰ってきてないのに、なんで、こんな噂があるんだろうね」


 彼らの口は更に動く。


 「噂は噂を呼び、それは人を呼んだ」

 「俺らはよく見たんだ。君ぐらいの子たちが廃園へ向かっていくのを」

 「だけど、誰一人として、帰ってこない」

 「かといって、俺らが入るわけにもいかない」

 「だから、僕らは静かにしていた」

 「だが、忠告はしておいた」

 「ここに来て、『肝試し』なんて馬鹿らしいことをしようとしにきている子たちに」


 俺は黙るしか無かった。そんな危険な場所だったのか?


 「だけど、誰一人として、聞き入れなかった。次第に俺らも罪悪間を覚えるようになった。困るんだ。君たちのような人が増えては」

 「だから、入らないでくれ。あそこは地獄なんだ。恐らく、見たことはないが、そうに違いない」


 俺は立ち上がった。


 「わかりました。クラスのみんなに話してみます」

 「あぁ、頼むよ」


 俺はクラスのみんながいる部屋に帰った。




 ▼




 「ふーん。それで」


 神野は言った。


 「えっ、いや、危険だから帰ろうって」

 「その大学生らしき二人組。そいつらの話は信用できるのか?」

 「でも、いい人だったし、「でも、嘘をついてるかもしれない」うっ」

 「彼らはただ、噂があるとしか言ってない。それが悪い噂にしろ、ここまで来るのにみんなかなりの金を使ってる。今更、帰るなんて言われても納得しないだろ」


 確かにそうだ。ここまで来るのに、軽く数万は使ってる。


 「だから、ここまで来て、止めるとかできないんだ」

 「だけど」

 「もし――」

 「……もし?」

 「――本当に帰りたんだったら、お前だけ帰れ」


 冷酷にそう言われた。


 「……わかった」


 そこまで言われたら、俺は言うことに従うしか無かった。



 そして、時計の針は刻々と進み、七時になった

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