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第5話 美咲、初めての戦闘

「製造番号0103、コードネーム“MISAKI”は製造番号0100、コードネーム“TIHARU”との戦闘を受理します」


シーン。

みんな、黙る。

千春も男の子も美咲の方を真剣な顔つきで見て、黙っていた。

美咲もその二人と同じように真剣な顔つきで黙っていた、が、



「っっっっってえぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!

何言っちゃってんの私ィィィィィ!!!!!」


数秒したら、美咲はその沈黙を破った。

どうやら美咲は無意識に言ってしまったようだ。

そんな慌てた様子の美咲を見て、男の子が笑う。

「ハハハハッ、何だそれは。

真剣になってしまった僕がバカだったよ。

所詮、お前はプログラムも送られていない、ただの“MARIAロボット”だったか。

兄さんも来ていない今、その言葉を言ったこと、後悔するがよいっ!!」

そう言った瞬間、男の子はどこからか勢いよく自分の身の丈に合ったステッキを振り下ろす。

それと同時に美咲の額に銃を向けていた千春も数歩後ろに飛び退く。

「さぁ、戦闘開始だっ、千春!!」

そう言いながら男の子がステッキを自分の頭の上でぐるりと回す。

すると千春が持っていた拳銃が短機関銃サブマシンガンに変わった。

男の子はそれを確認すると回していたステッキの先で今度は地面を数回叩き、それを美咲に向ける。


「千春、撃て!!」


「了解しました、マスター」

千春はそう言うと銃を構え、ついに打ってきた。


ダダダダダダダダダダダダダー


あたり一面に銃撃音が鳴り響き、砂埃が舞う。

「千春、もうよい。

止まれ」

男の子はそう言うと、ステッキで地面を二回叩く。

「はい、マスター」

すると千春は撃つのを止める。

そして撃っていた方向を二人でしばし見る。

やっと砂埃も収まり、視界がよく見えたときには・・・・・・


「ッチ、やはり逃げたか」


もう、そこには美咲はいなかった。








「うわぁー、どうなってんのよ〜、コンチクショ〜〜〜!!!!」

美咲は走っていた。

こんな時に陸上部で培われた運動能力が発揮されたのだ。


「おい、こんな時に無駄口を叩くな」


また、男の子の声が脳内で響き渡った。

「無駄口って、はぁ、はぁ、う、うっさいわねぇ、はぁ、はぁー」


「ちょっと待て、お前!!

もう、息切れかっ!!

お前は走るのが得意じゃないのか!!」


「あーもー、脳内で怒鳴るなっ!!!

私は短距離専門なのっ!!」

そう叫んでハッとする。

そして後ろを振り向いて誰もいないことを確認するとホッとする。

・・・・・・のもつかの間、バンッという音とともに雑木林から飛んできた弾が美咲の腕をかすめた。

「いっつー」


「おいっ、どうした!

撃たれたのかっ!!

もうすぐ俺もそっちに行くから負けるんじゃないぞっ!!」


「だから、脳内で怒鳴るなぁーーー!!

ただ、かすっただけ!!」

美咲は大声を出して今の自分の中にある感情を押し殺そうとする。

今、美咲の中にあるのは・・・・・・“怖い”という感情。

無理もない。

少し前まではただの女子中学生だったのだから。

雑木林から飛んできた弾は美咲に傷を与えただけではなく、恐怖も与えたようだ。


ガサガサ

前方から誰かが来るのがわかる。

それが誰なのかも予想がつく。

「逃げなきゃ」

美咲はそう思って反対方向に走り出そうとする。

しかし、足が動かない。

震えて動かない。

そのうち、ペタンと座り込んでしまった美咲。

「走らなくちゃ、走らなくちゃ!!」

心ではそう思っていても、身体がそれを拒絶する。

せめて立とうと思っても、身体に力が入らない。

「ちくしょう・・・・・・」

力の入らない手で握り拳をつくろうにもつくれない。

「ちくしょう、ちくしょう」

唯一思い通りになるのは、悔しさいっぱいの声だけ。


「私、死ぬのかなぁ」


ぽつりと思い浮かぶ、最低な考え。

そんなこと考えてはいけないと分かっていても、蘇ってくる自分が死ぬと思った時の感覚。

冷たく、暗く、一人ぼっちで寂しい世界。

それを想像して、震えだす肩。


「嫌だ、あんな所に戻りたくない」


そう思っても、逃げ出せない自分。

ガサガサ

どんどん近づいてくる足音、気配、声。

「千春、奴はこの近くにいるはずだ。

次に見つけたら、狙いを外さず、その狙撃銃スナイパーライフルで確実に仕留めろよ」

「はい、マスター」


「あぁ、私、確実に殺されちゃうんだ」

千春達の会話を聞き、絶望的になった美咲。

そんな美咲の背後からまた違う足音が近づいてきた。




「まだ諦めるんじゃないぞ」




そう一言言って、美咲の肩に手を置く男の子。

その男の子は美咲が目を覚ました時にいた男の子だった。



何故か美咲にはその置かれた手が一筋の希望に見えた。






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